患者さんに寄り添うハンドセラピィを
名古屋市中川区にある名古屋掖済会病院は、第3次救急医療施設として高度な医療を提供する総合病院。そのリハビリテーション科で本学卒業生の加藤雅大さんは作業療法士として勤務している。作業療法士とは、「箸を持つ」「服を着る」などの生活に必要な動作の回復を行うリハビリテーション(通称:リハビリ)の専門職で、加藤さんは手の外科手術を行った患者さんを対象に「ハンドセラピィ」と呼ばれるリハビリを指導している。
「外科手術後は治りをよくするために患部を固定するのですが、長期間固定していると周りの腱が癒着して動きにくくなってしまいます。それを予防・改善できるよう、固定していてもできる患部に影響の少ないリハビリを考案して、訓練と指導を行っていきます。また、リハビリを行う上で関節の安静が必要となった患者さんには、スプリント(装具)と呼ばれる固定具を作製して提供しています」
会話を重視して

怪我の程度によっては、完全に元の状態に戻らないこともあるという。そんな時には、極力QOL(Quality of life:生活の質)が下がらないよう、患者さんの日常生活を把握し、医師と相談しながら患者さんに合った訓練内容を選択していく。
「リハビリ中は患者さんとの会話を大切にしています。突然の怪我で、皆さん最初は戸惑い、気落ちしています。そのため、まずはリハビリ期間や内容などの最低限のことから話をし、少しずつ趣味や好きなものについて話し、普段どのように手を使用しているかを聞き、どう回復させていくかを考えます」
- 加藤 雅大さん
- 名古屋掖済会病院作業療法士
- 2014(平成26)年度作業療法学科卒業
手の機能解剖に興味
作業療法士を目指すきっかけは、高校時代に遡る。友人がサッカーのプレー中に大怪我を負い、歩くことも難しいような状態からリハビリを重ねてサッカーができるまで回復したことに感動。リハビリの道を志すように。当初は理学療法士と迷っていたが、体だけではなく精神との関わりも深い作業療法士に魅力を感じ、本学の作業療法学科に進学した。在学中、岡野昭夫教授(作業療法学科)の授業で、手の機能解剖学(各筋肉や骨・関節の特徴・働きと、身体のどこに連動しているか)を熟知して訓練内容を選択する「ハンドセラピィ」の面白さに魅了された。
「あまり勉強熱心な学生ではありませんでしたが、ハンドセラピィの道に進みたいという明確な目標ができてからは勉強を頑張り、一日中友人と国家試験の問題を出し合っていました。作業療法士を目指す学生は、国家試験の勉強を3年生の実習中から取り組むことをお勧めします。実習中はレポートなどもあり、なかなか余裕がないかもしれませんが、少しでも時間を見つけて勉強しておくと頭に残りやすいと思います」
学べる機会を大切に

学会にも積極的に参加するなど研究熱心な加藤さんだが、「論文や研究の内容を理解するために英語や統計解析をもっと学んでおけばよかったと後悔することがあります。また、高齢の患者さんと会話することが多いので、話を理解できるように、もっといろいろなことを体験しておけばよかったとも思います。勉強できる機会、経験できる機会を大切にしてください」と、自身の経験から学生にメッセージを送る。
- ウプト222号(2022年7月31日発行)より転載