EDUCATUS Vol.3
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10 私の専門は「特別支援教育」です。2021年4月に中部大学に赴任しました。その前は、北海道の大学で障害のある学生の支援をしていました。今回は、私の経験から障害のある学生の支援に必要だと「思う」ことをコンパクトにまとめてみました。 一般的に、大学での学修は、小学校・中学校、高等学校(以下、「高校」という。)までの授業とは大きく異なっています。 大半の学生が学んできた高校ではホームルーム担任がおり、朝と下校前には必ずその日や次の日の重要な連絡事項を伝えてくれます。また、時間割が最初から決められており、自分で履修の計画を立てることや授業場所の大きな移動もなく、クラスの仲間との行動がほとんどです。 一方、大学に入学すると、履修の計画を自ら立て、授業によっては、毎回レポートの提出を求められたり、協議の時間も多くなったりするなど、高校までの間に学んだ知識、技能などを活用しながら、学生が主体となり自ら学びをつくっていくことが求められます。 しかし、特に発達障害のある学生は、その特性から、今までのやり方をうまく応用して大学での学び方に適応することができずに挫折してしまい、大学生活全般になじめなかったり、二次的な障害が出てしまったりすることもあるといわれています。 独立行政法人日本学生機構から2019年3月に出された「平成30年度(2018年度)大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書」 によると、障害学生の数は年々上昇の傾向にあり、中でも「病弱・虚弱」、「精神障害」、「発達障害」が増加の傾向にあると報告されています。「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)施行以降、多くの大学で障害のある学生を支援する部署が設置され、大学として障~現代教育学部now~キャンパス通信現代教育学科准教授 立田 祐子 TATSUTA Yuko害のある学生を支援する動きになってきています。 高校までは、学校生活などで困ったことがあれば、ホームルーム担当の先生や特別支援教育コーディネーター、養護教諭などを中心に対応をしてくれていたと思います。しかし、大学では、「してほしい配慮や支援」について自らが申し出ない限りは配慮や支援がスタートしない場合がほとんどです。大学生活は学生にとって自由度が高いというメリットがありますが、その反面、主体性や自律度の高い生活や学修が求められます。高校までとは違い、より高次なレベルの自己決定が求められてきます。今後、大学に入学する学生が、自らの「困りごと」や「支援や配慮の内容」等について自らの言葉で説明することができるように、小・中、高校の中で、障害のあるなしにかかわらず、児童生徒が自己理解(自分の障害や得意なこと苦手なことを含めた)を図ることができる指導の充実に期待をしたいと思います。 また、大学では、学生がつまずくと思われる内容や、学生が困ったときに「どこに」相談に行けばよいかなど、大学でのシステムについて高校にも知ってもらう「しくみ」を作り上げていくことが必要です。その際には、一部の部署だけが考えるのではなく大学全体で障害のある学生を「どのように支援していくか」を考えていくことが重要です。 最後に、大学で障害学生支援を行う部署の担当者は、小・中、高校でのカリキュラムや特別支援教育が果たしている(いく)役割について日々学び、学生への切れ目のない支援を現実的にしていくことが求められると思います。そのためには、小・中、高校、大学が組織を超えて、それぞれの知見を共有し融合を図っていくことが、これからの「社会を創っていく」であろう学生を支援していく上で重要なことであると考えています。障害のある学生が大学で安心して学ぶために

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