EDUCATUS Vol.3
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1.保育現場の混乱 2020年度、新型コロナウイルスの流行で日常が大きく変化する中、学生たちの実習にも影響が出ました。予定されていた実習が中止になったり、県外の学生は愛知から行くというだけで断られたり、いままでには考えられないようなことが次々と起こりました。その中で学生たちは「WITHコロナの保育」に向き合うこととなりました。 「マスク・手洗い・消毒・検温」など、大人の対策は徹底できても子どもたちのいる保育現場ではどうしても「3密」を避けることができません。それは、乳幼児の育ちが「あそび」で支えられている面が強く、保育現場で子どもが人として育つには、人とのコミュニケーションが不可欠となるからです。また、保育所は福祉施設であり、働く親やひとり親家庭などの子どもの居場所であり、保育の提供をやめることはできないという現状からコロナ禍の中でも開園を続ける保育所の苦悩を学生たちは実感することとなりました。保育現場もこの今まで経験したコロナ禍の保育・教育実習~現場でなくっちゃ!~講 義 探 検 ~特色のある授業紹介~教育実習センター特任講師 多治見 里美 TAJIMI Satomiこともないような現状の中で子どもたちの命をどう守るのかということに奔走して、とても実習に来る学生のことまでは考えられないという事態になってしまいました。 私も長い間、保育者として保育現場で働いてきましたが、こんなことが起きるなんて想像もしませんでした。前例のない事態にどうすればいいのか、保育現場の苦悩はいかばかりかと察します。2.問題点 学生たちの実習は園児たちが誰とどのように遊んだかなどを記録することで、子どもたちの性格を把握し、振る舞いから体調や心の状態を読み取る能力の土台を養うねらいがあります。厚労省の「新型コロナ感染省の発生にともなう指定保育士養成施設等の対応について」には、実情を踏まえ実習に代えて演習又は学内実習等を実施することにより、必要な知識及び技能を習得することとして差し支えないこと、とありますが、これでは直に子どもと接した実習の学びに変わるものではないと痛感しました。3.本学の対応 幼児教育学科では実習時期をずらし、先方の意向に合わせつつ実習を依頼することにしました。そのため実習の指導内容にも、いつもとは違う指導が必要となりました。 この指導の中で学生は「子どもの命」に関わる保育実習に参加するということをしっかり認識できるきっかけを得たと思います。学生には同学年の中でも実習期間が異なったりという問題も起きましたが、幼児教育学科の教員、そして何よりも教職支援センター職員の何とか実習に行かせたいという強い思いがあり、先生方には授業の調整など快く対応していただき、全員が実習を体験することができました。 そしてこの体験を通して学生たちは、子どもにも保護者にも、そして社会にも必要とされている仕事であるということが実感できたと思います。緊張感のある中で子どもたちの命を預かる仕事であることを自覚し、今後も楽しく保育の道を進んでいって欲しいと願っています。 12前職:2010.4~2016.3月 子育て子育ち総合支援館館長2014.4~2019.3月 春日井市立保育園園長

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