EDUCATUS Vol.3
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 韓国の合計特殊出生率は、世界で最も低く、2020年には0.84まで低下し、深刻な少子化問題を抱えています。韓国政府は、少子化に歯止めをかけるために、乳幼児の保育・教育政策に力を注いでおり、その担い手である保育者養成にもますます期待が高まっています。そこで、本稿では、保育者養成教育の模範事例として「森の生態教育(Eco-early childhood Education)」を実施している三育大学校の取り組みを紹介します。 まず、韓国の保育者養成について簡単に説明します。韓国の保育・幼児教育制度は、日本に似ていますが、相違点もたくさんあります。保育施設には、オリニジップ(日本の保育所に当たる保育施設、子どもの家という意味)と幼稚園があり、そこで働く保育者を保育教師(日本の保育士に当たる)と幼稚園教師(日本の幼稚園教諭に当たる)といいます。保育者の資格システムは、日本と同じく二元化され、保育教師は、1級・2級・3級、幼稚園教師は、正教師1級・正教師2級・準教師の資格体系となっていますが、保育教師が等級制であることが日本と大きく違います。代表的な養成機関は、大学の幼児教育学科で、3年制と4年制があり、2年制はありません。また、取得可能な資格は、3年制も4年制も「保育教師2級」と「幼稚園正教師2級」で同じであり、取得学位が「専門学士」か「学士」かに違いがあります。 幼児教育学科の教育課程は、「専攻韓国の三育大学校※の「森の生態教育」について海外の大学紹介幼児教育学科准教授 蘇 珍伊 SO Jinyi科目」「教職科目(教職理論・教科素養・教育実習)」と構成されていますが、三育大学校では、これらの基本教育の他、保育者の専門性と力量開発のための「特性化プログラム」に取り組んでいます。三育大学校は、ソウル市内にある私立大学であり、キャンパス内に生態保存地として指定された10万坪の森林を構えており、この立地条件を生かして、2011年から「森の教師養成プログラム」という特化事業を運営しています。また、三育大学校の敷地内には、「森と自然の中で、かしこくやさしくたくましく育つ子ども」を教育目標とする附属幼稚園があり、幼児・遊び中心の教育課程を森で実現しています。このような教育環境のもとで「森の生態教育」が行われています。「森の生態教育」は、最近、幼児教育の新しいトレンドである森の幼稚園の理論と実際を学ぶ科目です。この授業では、人と自然を愛し尊重する子ども、健康で幸せな子どもを育てる使命感と能力を備えた森の教師を養成することを狙いとしており、学びのポイントを以下に紹介します。・森の幼稚園の歴史と哲学について理解する。・東・西洋、韓国の生命尊重思想を土台とした森の生態教育の体系を理解する。・春夏秋冬の変化と毎月森で観察できる生物及び微生物を理解し、森での遊びを指導できる能力を養う。・実際、森の幼稚園を参観し、幼児の日課と遊びを観察し、森での健康と安全指導について学ぶ。 なお、「森の生態教育」は、在学生だけではなく、現職保育者を対象とする教育プログラムも実施されており、このような取り組みは、「森の生態教育」の優れた事例として高く評価されています。 保育者養成教育に「森の生態教育」を取り入れた三育大学校の取り組みが、日本においても大いに参考になれば幸いです。※韓国では4年制総合大学を「大学校」、2年制・3年生短期大学を「大学」と言います。本稿は、韓国の三育大学校のホームページ(www.syu.ac.kr)を参考に作成しました。 13

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