EDUCATUS Vol.3
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2.歴代学部長の学部運営方針 初代 豊田ひさき学部長(2008.4~2013.3)は、スーパーティーチャーの育成をスローガンにして、任期中をロケットの第1弾として学部を軌道に乗せることを常に念頭に置かれて尽力されるとともに、理科に強い現代教育学部を実現するために、中学校教諭(理科)の教職課程を整備された。 第2代 学部長(2013.4~2018.3)は、私が務めさせていただいた。私は、軌道に乗った学部をより強化するために、保育者・教員養成を主軸に置いた学部運営を行い、取得免許種の拡大を目指して中学校教諭(国語)と(数学)の教職課程を整備した。 第3代 辻本雅史学部長(2018.4~2019.3)は、副学長を兼務しておられ、文系改組担当であったことから、現代教育学部の改組にも取り組まれた。生涯教育を担う人材育成、ESD教育などを構想されておられた。 第4代 佐野 充学部長(2019.4~2021.3)は、学部教員の研究力の向上を推進され、学内やステークホルダーへアピールすることに尽力された。 今年度(2021.4)から第5代学部長に就任された三島浩路教授は、学部開設時からの教員であり、本学部の歴史を熟知されている。学園は新たな方針で文系改組を継続しており、本学部にも改組を求めている。現在の学部体制は、開設時に幼児教育学科と当時の児童教育学科の独立した設置が尾を引き、複雑な教員免許状取得構造と多数教員の配置が余儀なくされている。新学部長には、分かりやすい学部構造の再編が課題となってくると考えられる。その動きの中で死守して欲しいことは、現状の免許種を減らすことなく改組を手掛けて頂きたいことである。また、中学校英語免許など、免許市場を拡大して志願者増を目指してほしい。あわせて幼児教育学科の志願者増のために小学校教諭免許が取得できる仕組みをぜひ構想していただきたい。三島新学部長の学部改革・学部運営に大いに期待したい。 3.これからの現代教育学部に求められること  デジタル社会に対応する 保育者・教員養成 文部科学省は、Society 5.0時代に生きる子どもたちにとってPC端末は鉛筆やノートと並ぶマストアイテムであるとして、1人1台のタブレット端末や高速大容量通信ネットワーク環境の整備など、全国一律のICT教育環境の実現に向けて加速的な取り組みを行ってきた。それを背景としてGIGAスクール構想のもとで、「子どもたち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育むICT教育」を推進している。この文部科学省の動きをさらに後押しするように、2021年9月1日にデジタル庁が創設され、デジタル社会の推進や国民生活のデジタル化などを主導する政策がスタートした。教育界にも大きく影響を及ぼすことになる。 このような国や社会の足早な動きに対して、現代教育学科は、将来を見据えた新たな教育を「今」構築し、推進していかなくてはならないと考える。1人1台の端末を活用した教育を始めている現小学校6年生は6年後には大学に進学してくる。中学、高校でもICTを活用した多様な教育を受けてくる中では、大学教育は現状を脱皮し、さらに質の高い、将来のAI時代をも見据えた教育を用意して、新たな教育を発進していかなくてはならない。また、在学生には、進化していく小中学校に赴任した時に十分に対応できる教育力を修得させなくてはならないことは言うまでもない。 一方、幼児教育学科においてもデジタル化の波は避けては通ることはできない。すでにデジタル機器が導入された保育、子育て支援社会が始まっている。登降園時のICカードやタッチパネル打刻の導入、アプリ上で欠席管理、午睡中の事故防止体動センサーの導入、個別アレルギー対応自動献立、スマート体温計による検温など日進月歩である。保育職は、多忙な業務であり、乳幼児の命を守るために一瞬たりとも気を抜くことができず、ミスは許されない。しかし、保育上の不幸な事故は毎年のように発生している。人手だけでなく、デジタル機器がサポートしてくれることは保育者の安心感につながり、多忙な業務の軽減にもつながるものである。しかし、一方で操作上の人的ミスや誤報など、必ずしも万能ではなく、信頼しきれるものではない。したがって、これからの保育者は、今以上に高い専門性の修得と実質的な高い力量形成が不可欠となる。さらに加えてIoT/IT技術導入にも高い理解力と効果的な活用ができる知識とセンスを身につけていることが求められることになるであろう。機械に依存することはないが、機械と共存できる人材育成が急務となってきている。 幼児にデジタル端末を与えてはいけない、デジタル端末で子育て、子守をさせてはいけないと、感覚論を言っているだけでは、これからの子育て世代の問題解消にはつながらない。保育者養成校としてカリキュラムや講義内容の見直しを早急に図り、常に新しい動きを吸収して対応できる、課題解決型保育者養成に力を入れなくてはならないと考える。時代の流れ、波に乗り遅れることなく、保育者養成を行うことが課題となる。 しかし、我々が忘れてはならないことは、「人間は人間社会の中でしか人間に育たない」ということである。人とのつながり、コミュニケーション、協同・協調など、人格形成、人間形成に密に関係し次世代を担う「人の心」をもった豊かな子どもたちを育てることのできる保育者・教員養成を目指していきたいものである。32.歴代学部長の学部運営方針 初代 豊田ひさき学部長(2008.4~2013.3)は、スーパーティーチャーの育成をスローガンにして、任期中をロケットの第1弾として学部を軌道に乗せることを常に念頭に置かれて尽力されるとともに、理科に強い現代教育学部を実現するために、中学校教諭(理科)の教職課程を整備された。 第2代 学部長(2013.4~2018.3)は、私が務めさせていただいた。私は、軌道に乗った学部をより強化するために、保育者・教員養成を主軸に置いた学部運営を行い、取得免許種の拡大を目指して中学校教諭(国語)と(数学)の教職課程を整備した。 第3代 辻本雅史学部長(2018.4~2019.3)は、副学長を兼務しておられ、文系改組担当であったことから、現代教育学部の改組にも取り組まれた。生涯教育を担う人材育成、ESD教育などを構想されておられた。 第4代 佐野 充学部長(2019.4~2021.3)は、学部教員の研究力の向上を推進され、学内やステークホルダーへアピールすることに尽力された。 今年度(2021.4)から第5代学部長に就任された三島浩路教授は、学部開設時からの教員であり、本学部の歴史を熟知されている。学園は新たな方針で文系改組を継続しており、本学部にも改組を求めている。現在の学部体制は、開設時に幼児教育学科と当時の児童教育学科の独立した設置が尾を引き、複雑な教員免許状取得構造と多数教員の配置が余儀なくされている。新学部長には、分かりやすい学部構造の再編が課題となってくると考えられる。その動きの中で死守して欲しいことは、現状の免許種を減らすことなく改組を手掛けて頂きたいことである。また、中学校英語免許など、免許市場を拡大して志願者増を目指してほしい。あわせて幼児教育学科の志願者増のために小学校教諭免許が取得できる仕組みをぜひ構想していただきたい。三島新学部長の学部改革・学部運営に大いに期待したい。 3.これからの現代教育学部に求められること  デジタル社会に対応する 保育者・教員養成 文部科学省は、Society 5.0時代に生きる子どもたちにとってPC端末は鉛筆やノートと並ぶマストアイテムであるとして、1人1台のタブレット端末や高速大容量通信ネットワーク環境の整備など、全国一律のICT教育環境の実現に向けて加速的な取り組みを行ってきた。それを背景としてGIGAスクール構想のもとで、「子どもたち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育むICT教育」を推進している。この文部科学省の動きをさらに後押しするように、2021年9月1日にデジタル庁が創設され、デジタル社会の推進や国民生活のデジタル化などを主導する政策がスタートした。教育界にも大きく影響を及ぼすことになる。 このような国や社会の足早な動きに対して、現代教育学科は、将来を見据えた新たな教育を「今」構築し、推進していかなくてはならないと考える。1人1台の端末を活用した教育を始めている現小学校6年生は6年後には大学に進学してくる。中学、高校でもICTを活用した多様な教育を受けてくる中では、大学教育は現状を脱皮し、さらに質の高い、将来のAI時代をも見据えた教育を用意して、新たな教育を発進していかなくてはならない。また、在学生には、進化していく小中学校に赴任した時に十分に対応できる教育力を修得させなくてはならないことは言うまでもない。 一方、幼児教育学科においてもデジタル化の波は避けては通ることはできない。すでにデジタル機器が導入された保育、子育て支援社会が始まっている。登降園時のICカードやタッチパネル打刻の導入、アプリ上で欠席管理、午睡中の事故防止体動センサーの導入、個別アレルギー対応自動献立、スマート体温計による検温など日進月歩である。保育職は、多忙な業務であり、乳幼児の命を守るために一瞬たりとも気を抜くことができず、ミスは許されない。しかし、保育上の不幸な事故は毎年のように発生している。人手だけでなく、デジタル機器がサポートしてくれることは保育者の安心感につながり、多忙な業務の軽減にもつながるものである。しかし、一方で操作上の人的ミスや誤報など、必ずしも万能ではなく、信頼しきれるものではない。したがって、これからの保育者は、今以上に高い専門性の修得と実質的な高い力量形成が不可欠となる。さらに加えてIoT/IT技術導入にも高い理解力と効果的な活用ができる知識とセンスを身につけていることが求められることになるであろう。機械に依存することはないが、機械と共存できる人材育成が急務となってきている。 幼児にデジタル端末を与えてはいけない、デジタル端末で子育て、子守をさせてはいけないと、感覚論を言っているだけでは、これからの子育て世代の問題解消にはつながらない。保育者養成校としてカリキュラムや講義内容の見直しを早急に図り、常に新しい動きを吸収して対応できる、課題解決型保育者養成に力を入れなくてはならないと考える。時代の流れ、波に乗り遅れることなく、保育者養成を行うことが課題となる。 しかし、我々が忘れてはならないことは、「人間は人間社会の中でしか人間に育たない」ということである。人とのつながり、コミュニケーション、協同・協調など、人格形成、人間形成に密に関係し次世代を担う「人の心」をもった豊かな子どもたちを育てることのできる保育者・教員養成を目指していきたいものである。

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