EDUCATUS Vol.3
6/16

6故など生活の中で経験するネガティブなライフイベントの2つの要因がアルコール依存に関連することを示唆しています。 ネガティブなライフイベントに直面すると、そうした現実から目を背けたくなり、現実からの逃避を試みる人は多いことでしょう。スマートフォン依存との関連性が強いインターネット依存やゲーム依存に関しても、現実から逃避したいという逃避傾向の強さと依存との間に関連があるという研究報告が多数有ります。 これらの研究を参考にして、スマートフォン依存の問題が顕在化しやすい高校生を対象に調査を行い、現実逃避を促すネガティブなライフイベント体験や私的自己意識の高さが、スマートフォン依存に関連するのかどうかを確かめようと考えました。しかし、ネガティブな体験や出来事を、高校生を対象に質問紙で直接調査した結果、深刻な体験を生徒に想起させてしまい、心理的ダメージを与えてしまう危険性があります。そこで、こうしたネガティブな体験や出来事を直接尋ねるのではなく、友人関係や家族関係を中心とした対人関係、学習活動や課外活動などが良好かどうかを高校生が各自の主観により評価する「日常生活に対する主観的評価」を用いた調査で代替することにしました。学習活動や友人関係、家庭内の人間関係、部活動などの授業外活動が良好だと感じている高校生に比べて、良好ではないと感じている高校生は、現実から逃避したいという思いが相対的に強く、スマートフォンに対する依存傾向が強まる可能性が高いと考えたのです。 高校生約800人を対象にした調査の結果、「日常生活に対する主観的評価」が良好ではない生徒の中で、私的自己意識が高い生徒だけがスマートフォンに対してより強い依存傾向を示したのです。その後に行った約3,000人の高校生を対象にした大規模な調査の結果からは、不安傾向の強さなど性格要因もスマートフォン依存に関連することが示されました。学習活動や友人関係など学校適応に関する要因、公的自己意識や不安傾向など個人の特性に関する要因がスマートフォン依存に影響すると考えられます。スマートフォン依存が生じるプロセス スマートフォン依存に限らず、様々な対象に対する依存が特に問題視される場面、それは現実生活に支障をきたす場面です。スマートフォンの利用時間が極めて長時間でも、客観的にみて現実生活にまったく支障をきたしていなければ、スマートフォンに依存しているとはいえません。スマートフォン依存の特徴として、スマートフォンを手放せない、自分自身の力で利用時間を制御できない、スマートフォンを長時間使い続けることによる問題は分かっているが、スマートフォンを使い続けてしまうなどが挙げられます。こうした特徴は日常生活に関連したものであり、スマートフォン依存の問題を考える場合、生活関連要因を加える必要もあります。 さらに、スマートフォン依存に陥ってしまった後、そうした依存状態から抜け出せなくなるメカニズムが存在するはずです。先行研究などを参考にして、スマートフォン依存が進行し、抜け出せなくなってしまうプロセスを含めてモデル化しました。 このモデルでは、スマートフォン依存に至る過程で、学校適応要因や性格などの個人特性要因、生活環境要因に着目しました。例えば、中学校入学を機にしてスマートフォンを手にした生徒が、連日、SNSで友だちとやり取りしたり、様々なアプリを使ってみたりして夜遅くまでスマートフォン操作を続けた結果、睡眠不足や学習時間不足といった問題が生じ、登校意欲や学力の低下を招いてしまったとします。学校生活に対する適応状況のこうした悪化だけでなく、当人の不安傾向も影響して情緒が不安定となり、現実生活から逃避したいという思いが強まり、現実生活から逃避するためにスマートフォンにますますのめり込んでしまう。依存状態に陥るとスマートフォンの長時間利用がより慢性化し、現実生活における問題が拡大することなどから、現実生活に対する逃避傾向はさらに強まり、逃避傾向のこうした増大がスマートフォン利用時間のさらなる増加につながるという悪循環に陥ってしまいます。スマートフォン依存の“多様性” スマートフォンには多様な機能が備わっています。そのため、スマートフォンに依存するといっても依存しているアプリケーションの特性によって依存者の特徴が異なる可能性があります。つまり、中学生や高校生がスマートフォンで利用するアプリケーションの特性により、依存しやすい生徒の特徴が異なる可能性があるのです。たとえば、ゲームに依存しやすい生徒とSNSに依存しやすい生徒には、違いがあるのではないでしょうか。活の中で経験するネガティブなライフイベンの要因がアルコール依存に関連することを示ます。ィブなライフイベントに直面すると、そうした目を背けたくなり、現実からの逃避を試みる人とでしょう。スマートフォン依存との関連性がターネット依存やゲーム依存に関しても、現実したいという逃避傾向の強さと依存との間にるという研究報告が多数有ります。の研究を参考にして、スマートフォン依存の問化しやすい高校生を対象に調査を行い、現実逃ネガティブなライフイベント体験や私的自己さが、スマートフォン依存に関連するのかどうめようと考えました。しかし、ネガティブな体事を、高校生を対象に質問紙で直接調査した結な体験を生徒に想起させてしまい、心理的ダ与えてしまう危険性があります。そこで、こうティブな体験や出来事を直接尋ねるのではな関係や家族関係を中心とした対人関係、学習活活動などが良好かどうかを高校生が各自の主評価する「日常生活に対する主観的評価」を用で代替することにしました。学習活動や友人関内の人間関係、部活動などの授業外活動が良好ている高校生に比べて、良好ではないと感じて生は、現実から逃避したいという思いが相対的スマートフォンに対する依存傾向が強まる可能と考えたのです。約800人を対象にした調査の結果、「日常生活主観的評価」が良好ではない生徒の中で、私的が高い生徒だけがスマートフォンに対してよ存傾向を示したのです。その後に行った約の高校生を対象にした大規模な調査の結果か安傾向の強さなど性格要因もスマートフォン依することが示されました。学習活動や友人関係適応に関する要因、公的自己意識や不安傾向な特性に関する要因がスマートフォン依存に影考えられます。スマートフォン依存が生じるプロセス スマートフォン依存に限らず、様々な対象に対する依存が特に問題視される場面、それは現実生活に支障をきたす場面です。スマートフォンの利用時間が極めて長時間でも、客観的にみて現実生活にまったく支障をきたしていなければ、スマートフォンに依存しているとはいえません。スマートフォン依存の特徴として、スマートフォンを手放せない、自分自身の力で利用時間を制御できない、スマートフォンを長時間使い続けることによる問題は分かっているが、スマートフォンを使い続けてしまうなどが挙げられます。こうした特徴は日常生活に関連したものであり、スマートフォン依存の問題を考える場合、生活関連要因を加える必要もあります。 さらに、スマートフォン依存に陥ってしまった後、そうした依存状態から抜け出せなくなるメカニズムが存在するはずです。先行研究などを参考にして、スマートフォン依存が進行し、抜け出せなくなってしまうプロセスを含めてモデル化しました。 このモデルでは、スマートフォン依存に至る過程で、学校適応要因や性格などの個人特性要因、生活環境要因に着目しました。例えば、中学校入学を機にしてスマートフォンを手にした生徒が、連日、SNSで友だちとやり取りしたり、様々なアプリを使ってみたりして夜遅くまでスマートフォン操作を続けた結果、睡眠不足や学習時間不足といった問題が生じ、登校意欲や学力の低下を招いてしまったとします。学校生活に対する適応状況のこうした悪化だけでなく、当人の不安傾向も影響して情緒が不安定となり、現実生活から逃避したいという思いが強まり、現実生活から逃避するためにスマートフォンにますますのめり込んでしまう。依存状態に陥るとスマートフォンの長時間利用がより慢性化し、現実生活における問題が拡大することなどから、現実生活に対する逃避傾向はさらに強まり、逃避傾向のこうした増大がスマートフォン利用時間のさらなる増加につながるという悪循環に陥ってしまいます。スマートフォン依存の“多様性” スマートフォンには多様な機能が備わっています。そのため、スマートフォンに依存するといっても依存しているアプリケーションの特性によって依存者の特徴が異なる可能性があります。つまり、中学生や高校生がスマートフォンで利用するアプリケーションの特性により、依存しやすい生徒の特徴が異なる可能性があるのです。たとえば、ゲームに依存しやすい生徒とSNSに依存しやすい生徒には、違いがあるのではないでしょうか。

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る