GLOCAL Vol.3
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2013 2013 Vol.3Vol.32013 Vol.32013 2013 Vol.3Vol.32013 Vol.39た」と答えた人の比率は、Figure 3のようになった。 この結果は、質問に付加された架空の情報が目撃者の記憶を形成し、それが誤った目撃者証言につながりうることを示しているのである。人間の記憶を歪める要因 目撃者証言は人の記憶に基づく証言である。人間の記憶はそれほど確かなものではない。そして、様々な要因によって歪められる。ここでは、そのうちのいくつかの要因を紹介する。■注意の限界 人間は、特定の必要な情報にのみ注意を向けることができる。これを選択的注意という。例えば、我々は騒々しいコンサートで音楽よりかなり小さい友達の声を聞き分けることができるが、録音されたテープでは音楽しか聞こえないなどという場合も多い。実際、人間のように選択的に必要な音声だけを処理できる集音マイクを作ることができれば、飛ぶように売れるに違いない。それほど高度な情報処理を、人間は行っているのである。 その一方、我々が注意できる範囲は極めて限られている。これは注意資源の限界と呼ばれる。選択的注意は、限られた注意資源で大切な情報を効率的に処理するための、高度なのもろさや不確実性を多少なりとも伝えることができれば幸いである。ことば使いに歪められた証言 Loftus & Palmer(1974)は次のような実験を行った。彼らは実験参加者に交通事故のビデオを見せた。そして、何人かの参加者には「2台の車がぶつかった時のスピードは何マイル位だったか」と尋ね、別の参加者には「接触した」、「突き当たった」、「衝突した」、「激突した」と、先の文言の1語だけを置き換えて質問した。各々のことばで質問された参加者の報告した車の速度の平均が、Figure 2である。「接触した」ということばで質問された参加者の報告したスピードに比べて、「激突した」ということばで質問された参加者の報告したスピードが、いかに速かったかがわかる。 またこの実験では、1週間後に同じ参加者に、「あなたはガラスの破片を見ましたか?」という質問がされた。その結果、「ぶつかった」と言われた参加者のうち「いいえ」と答えた者は43名で「はい」と答えたのは7名だったが、「激突した」と言われた参加者では、「いいえ」が34名で「はい」と答えたのが16名と、「はい」と答える割合が高かったのである。 これらの結果は、「質問で用いたことば使い」が目撃者証言に影響しうることを端的に示している。質問に歪められた証言 Loftus(1975)は、質問に付加された情報が誤った目撃証言を生んでしまうことを、次のような実験で明らかにした。彼女は学生に交通事故のビデオを見せた後、グループAの人たちには「白いスポーツカーが田舎道を走っていた時のスピードはどのくらいだったか」と尋ね、グループBの人たちには、「白いスポーツカーが田舎道を走って、農家の納屋の前を通り過ぎた時どのくらいスピードを出していたか」と尋ねた。そして1週間後、彼らに「納屋を見たか」と尋ねたところ、「見Figure 2. Loftus & Palmer(1974)の実験結果Figure 3. Loftus(1975)の実験結果

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