GLOCAL Vol.7
3/16

2015 Vol.72015 Vol.72015 Vol.71国際人間学研究科 国際関係学専攻 教授舛山誠一(MASUYAMA Seiichi)カリフォルニア大学バークレー校 MBA。専門は国際経営学。日本企業の中国を中心としたアジア地域における経営に関心を持っている。国際経営の視点で見る中堅・中小企業のアジアビジネスにおける成功要素アジアの立地環境経済面に関しては以下のような点が挙げられる。①賃金の急速な上昇によって、全般的に生産拠点としての優位性の低下する一方で、所得の向上・中産階級の台頭によって、消費市場としての魅力が高まっている。②各国・地域の経済発展段階や人口動態が多様で継続的に変化しているから、それらの立地優位性は、各国・地域で異なり変化している。労働供給面の優位性や市場の成長性は、中国からASEAN、インドに、ASEANの中ではタイのような先発国からインドネシア、フィ中堅・中小企業のアジアビジネスの分析の枠組み我が国の中堅・中小企業が近年進出意欲をとみに強めているアジア地域での事業の成功要素を探すには、中堅・中小企業的な特殊性に重点を置くよりも、大企業・中小企業を問わない「国際経営」の視点に重点を置くべきだと考える。というのは、冨山が主張するように、グローバル化が進展すると、大企業・中小企業の違いよりも、製造業などグローバルな競争にさらされるグローバル企業と地域市場のサービス企業などローカル市場で寡占的に利幅は薄いが安定的な収益を挙げられるローカル企業との区別がより重要になると考えられるからである。海外進出する企業は概ねグローバル企業と見なされる。とは言え、中堅・中小企業には大企業とは異なる強みと弱みがあり、この視点を加味する必要もある。中堅・中小企業の強みには、①迅速な意思決定、②経営の柔軟性、③小規模市場での存立可能性などが挙げられる。一方で弱みとしては、①経営資源の不足(人材、資本など)、②特に大企業への依存・従属的な企業におけるマーケティング能力の不足・自立性の不足、③国際経験の不足などが挙げられよう。国際経営の枠組みとしては、①進出企業が技術などの経営資源の面で現地市場における優位性を持っていることと、②進出先の国・地域が市場としての魅力、生産コストなどの立地面で日本や競合国・地域に対して優位性を持っていることが必要だということがある。また、国際経営において、③現地の環境に適応する必要があると同時に、③完全に現地化するのではなく、本社・拠点間の統合・標準化を行うことが必要である。適応すべき立地環境の主要な要素として、現地の政治、経済、文化に加えて、①との関連から、現地における企業間競争が重要である。④国際経営戦略は、全体的な戦略と、国際生産、国際マーケティング、国際研究開発、国際人的資源管理などの機能別戦略に分けられる。

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る