GLOCAL Vol.10
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10人文学部棟院生室のここ4年間における知られざる活動は着々と進んでいたのであるが、お茶スペースに関して、不可避の障壁が存在した。火災予防の観点から、空焚きの恐れがある電気ポットの院生室への設置は認められていなかった。とはいえ、院生室には過去の院生が無断で持ち込んだと思われる電気ポットが秘匿されており、お茶スペースが本格稼働すると共に、秘密裏に使用されていた。もっとも、秘密というものはいつか詳らかになるもので、ある日のこと、ついに大学当局に電気ポットの使用が発覚し、使用停止の憂き目を見ることとなった。事件は電気ポットの使用停止が言い渡された後、筆者が学会参加のために院生室を留守にしていた最中に起きた。筆者が院生室に戻ると、コーヒーメーカーが電気ポットに成り代わってお茶スペースに鎮座していたのである。たしかに、電気ポットは禁本記事の趣旨 中部大学人文学部棟26号館1階に、国際人間学研究科の院生室は存在する。国際人間学研究科に所属する院生は複数の院生室に別れて割り振られているが、人文学部棟の院生室には、国際関係学専攻以外の専攻に所属する全ての院生の机が集結している。 通常、院生室に院生以外の人間が訪れる事は少なく、院生室内の様子やまた院生たちの活動などを窺い知ることは、人文学部に所属する学生や教職員であっても難しいのではないかと思われる。そこで、2013年から今日までの約4年間に人文学部棟院生室で院生たちが行ってきた活動のうち、筆者が主として関与した2事例を紹介する。「お茶スペース」とコーヒーメーカー事件 2013年春、国際人間学研究科博士前期課程に筆者が入学した当時、院生室に常駐しているような院生は皆無だった。端的に言ってこのような状況に当惑したものの、これはチャンスだと思い直すことにした。すなわち、誰も居ないということは好き勝手やっても文句を言う人間が院生室内には誰も居ないということなのだから、筆者自身が研究しやすいような空間に作り替えてやろうと企んだ。 まずは、院生室に捨て置かれた物品の整理から始めた。整理を進めていくと、部屋の隅に机と椅子が埋もれていたことに気づいた。そこで院生室の一角に机を向かい合わせに並べて、休憩・交流のための「お茶スペース」とした。この頃になると、当時博士前期課程に在籍していた他の院生諸氏も院生室に集うようになり、面白がって本棚の整理を始めたり、お茶スペースを利用して軽い懇親会のようなものを開催したりするようになっていた。お茶スペースには「院生室ノート」が設置され、お茶スペースと共に、情報交換や伝達、悩み相談などに大いに活用されるようになった。また、他の院生が使用していない時間帯には、その机の広さを利用して、自身の机ではできないような作業にも活用されるようになった(写真1)。 かくして院生室有志による院生室改造計画国際人間学研究科 歴史学・地理学専攻博士後期課程2年林 泰正(HAYASHI Yasumasa)2012年、中部大学人文学部歴史地理学科を卒業。2013年、中部大学大学院国際人間学研究科歴史学・地理学専攻博士前期課程に入学。2015年、同専攻博士後期課程に入学。専門は歴史地理学・交通地理学。林泰正 (2014). 昭和初期に廃止された鉄道跡地の解体 -岐阜県可児市広見地区・東濃鉄道を事例として-. 人文地理, 66 (7), 20-29.写真1:現在のお茶スペースとお茶スペースを活用する院生

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