GLOCAL Vol.10
13/16

2017 Vol.102017 Vol.1011クリエイティブな院生室に中部大学の建学の精神は「不言実行、あてになる人材の育成」である。近年、インターネットの普及やAI技術などに代表されるように、技術や生産様式の革新が続いている。そのような時代において、構造的な問題に対して愚痴を言い合うだけで終わるのではなく、正々堂々と指摘し、交渉し、改善あるいは革新へ向けて(実際に改善・革新に繋がるか否かは別として)行動する人材の存在は、ますます必要になっていると考える。 とくに院生には、学部生とは異なり、新規性のある研究を行い、またその研究を積極的に学会など学外へ発信していく力がより求められている。そのような中で院生室は、院生が主体的にかつ創造的な研究を行う場として欠かせない場所である。また、院生や院生室内での諸活動について、院生にはある程度の自由裁量が実質的に認められている。このような院生室は、学内において院生がその自主性を一番発揮できる場所でもある。以上のような意味において、院生室は院生にとってクリエイティブな精神を実践的に学ぶ場として重要な空間であるといえる。 もちろん、院生室における院生の勝手な振る舞いによって、(とくにコーヒーメーカー事件に代表されるように)意図せず教職員を当惑させ御迷惑をお掛けしてしまうことも少なくない。そのような点については、所詮は院生のする事として、誠に恐縮ながら、お付き合い賜らんことを願う次第である。止されているものの、コーヒーメーカーは禁止されていない。かくして、院生室のコーヒーメーカーは、コーヒーを淹れるという本業の傍ら、時に緑茶を淹れるためのお湯を沸かし、時にカップ麺に注ぐお湯を沸かし、時にレトルト食品を温めるなど、大車輪の活躍をみせることとなる。 そもそも電気ポットが禁止されているのは前述の通り火災を防止するためであり、ましてやコーヒーメーカーのこのような目的外使用は、当然のことながら客観的に見て好ましからざる状況ではあるのに異論の余地はない。とはいえ、何かしらのお湯を沸かすための手段が無ければ、早朝や夕方以降に温かいお湯を調達することが困難であり、付随して多くの困難や問題が発生することが懸念された。交渉の末、空焚きの心配が無い電気ケトルの使用が許可される運びとなった。現在では、院生のカンパによりインスタントコーヒーや緑茶などが常備され、お茶スペースはますます人文学部棟院生室に無くてはならない存在となっている。院生自主勉強会 他の大学では、学生や院生が企画し運営する勉強会などが多数存在する。中部大学では、すくなくとも筆者の学部生時代における個人的な体験によれば、中部大学や教員によって雇われるような形で学内のイベントに携わることはあっても、自ら企画し運営する機会や学風には存外恵まれていないように思われた。とくに国際人間学研究科において、自主的な勉強会の開催が極めて低調なのに対し、強い危機意識を持った。 また、他の学科や学部に所属する学生、他の専攻や研究科に所属する院生と交流を深める契機も必ずしも多くないように思われた。人文学部棟院生室においては、前述のお茶コーナーによって専攻を越えた交流がある程度培われてきたが、互いの研究内容に対するより本格的な議論は、当初想像していたよりは進んでいなかった。とくに他専攻の院生が一体何をやっているのかについて知る機会は、極めて限られていた。結果として、同じ院生室で研究し、お茶スペースでよく世間話をするものの、お互いに相手が具体的にどのような研究をしているのかは知らないという、ある種奇妙な状況となっていた。 以上のような問題意識を持っていることを他の院生有志に相談した結果、2016年度春学期から「院生自主勉強会」を企画する運びとなった(写真2)。 企画にあたり、主目的は交流であること、そしてあくまで院生が自主的に行うものであることと定めた。報告のクオリティは必ずしも求めず、むしろ、学会などでは報告できないような研究上の悩みや失敗談でも構わないこととした。今のところ、学会報告や学内での報告を前にした発表練習的な使用のほか、自身の研究について、他分野あるいは他の研究手法を用いている院生の視点からの意見を乞うような報告が多数を占めている。また、院生が主体となって行うという形を維持するべく、会場の予約から告知などに至るまで、報告者が自ら行うルールとしている(写真3)。写真3:セッティングを行う院生(報告者)たち写真2:自主勉強会の様子(2016年10月例会)

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る