GLOCAL Vol.13
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2018 Vol.132018 Vol.132018 Vol.132018 Vol.133よくわかる。そのような院生の勉学意欲は、通常のマンツーマンに近い演習によって満たされるだけでなく、院生による研究報告会、通称「院生の力」によって大いに高められる。他専攻の院生や教員をまえに、自らの言葉で研究内容を紹介し質疑を受けることは、自信増加につながること必定である。社会人院生が同じ研究室の中で机を並べているのも本研究科の特徴のひとつであり、人生の先輩から専門以外のことがらを学ぶことも多い。逆の効果もあり、社会人院生は、ともすれば忘れがちな若い感性を年下の同僚院生から受ける。院生の勉学に関して特筆すべきは、院生自らが企画した研究会(通称「イン活」)が毎月のように開催されていることである。開催場所は全学の教育施設である不言実行館の開放的なフロアーやスタディルームであり、他研究科、他学部の学生も自由に参加できる。院生の間で自発的活動が生まれてきたことは、大きな収穫である。活性化のカギは明日への向上心 以上で述べてきたように、本研究科における研究・教育「活性化」のためのプログラムの輪郭はおぼろげながら描けたように思われる。しかし根本的課題はなお残されたままである。基本となるカギは、人間として、また研究者・学徒として、いまより一歩だけ前に進みたいという向上心である。向上心を共有する教員、院生が自らアイデアを持ち寄り、「何かおもしろいこと」をひとつひとつ積み重ねていくことが、この研究科にふさわしい活性化への道ではないだろうか。えに印象が深いだけでなく、自分が所属する専攻やそのベースにある学問全体の成り立ちを考え直すきっかけになることもある。食わず嫌いは、長い目で見れば、やはり損なことが多い。成果をGLOCALに集めて発信 「アカデミック広報」と名付けた雑誌GLOCALの名称は、いうまでもなくGLOBAL とLOCALを合わせてつくった造語である(図2)。すでにどこかで使われているのを承知で採用したのは、国際関係学部と人文学部の上にある研究科という性格を意識したからである。世界同一市場はすでに存在しており、そこから逃れることはできない。図2:GLOCAL Vol.1〜4の表紙しかし世界が無数の局地によって成り立っていることも事実であり、LOCALなくしてはGLOBALもない。GLOBALに踊らされたり振り回されたりすることなく、LOCALの奥底に潜む普遍性に注目する。見出された普遍的価値が世界に伝えられ理解されれば、LOCALはGLOBALへと昇華する。かっこよくいえばそのようなシナリオであるが、実際にはLOCALの何に注目するか、ここが問題である。そこで注目したのが、大学周辺の旧街道・古戦場や地元自治体・地区の文化・伝統などである。これらをシンポジウムのテーマに掲げ、研究者、郷土史家、まちづくり関係者をパネラーに招いてシンポジウムを開催した(図3)。毎回、多くの参加者があり、自らのルーツにつながる歴史に関心を寄せる市井の人々がいかに多いか、驚かされた。シンポジウムを企画して活気づける いくら「アカデミック広報」というメディアを器として用意しても、中身がなければ読んでもらえない。当初は150部くらい印刷し、外部にも郵送した。しかし同じ内容を研究科のホームページにも掲載するようにしたため、送付辞退の連絡も何件か頂いた。このため郵送部数は若干減らしたが、院生確保につながるかもしれない可能性を考えるとゼロにするわけにはいかない。一方、ウェブ掲載のGLOCALは閲覧数が年々増加し、雑誌として引用されることもめずらしくなくなった。こうなると発行を継続するしかない。掲載内容を豊かにするため、研究会やシンポジウムにも工夫を凝らす必要が生じてきた。幸い、所属教員の中から国際的なテロや近代国家の成立過程などに関するシンポジウムを提案して実行する事例が現れるようになった。企画・実践者が明日の研究科をリードしていく若手教員であることは、頼もしい限りである。お仕着せのシンポジウムではなく、院生、学生、職員も参加しやすい気楽な雰囲気での開催は新鮮である。教員自らがシンポジウムにふさわしいデザインのポスターを手づくりし、大学のウェブに掲載するというスタイルも定着した。研究好きな院生による自主勉強会 大方の予想に反し国際人間学研究科では、修了後の就職を主な動機に進学してくる学生は多くない。これは理系研究科との違いでもあり、純粋に学問研究をしたいという気持ちが院生の間で強いことは、傍から見ていても図3:シンポジウムのポスター

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