GLOCAL vol.15
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8人と蝶とのかかわり―自然史博物館の検討を中心に― に評価し、保護することである。28日には国立植物園を訪れ、温室や併設するバタフライガーデンにて視察を行った。最終日にアーカイブスにてDr. Pamela Hensonにお会いする機会を得た。彼女は博士論文Evolution and taxonomyで、J.H.Comstockの昆虫学を探求した人である。その時に、Comstockや妻Anna Comstockについて話してくれた。Anna Comstockという人物は、芸術家、教育者、自然保護主義者、自然学習運動のリーダーであり、植物学と昆虫学に関する多くの記事を執筆した。意見交換のあと、関連資料の調査を行った。おわりに NMNHが掲げる使命にある通り、博物館は、自然界と私たち人間の地位を理解し、促進する場所である。また、博物館のコレクションは地球の歴史を伝え、環境と人間の相互作用の記録である。持続可能な世界を作っていくうえで、コレクションが出発点となり、未来をどのように作っていくことができるかについての教科書なのである。 現在まで蝶について研究してきたが、明確な方向性が見えてこなかった。しかし、今回4つのフィールドワークを終えて、少しずつだが形になってきていると感じる。特に、スミソニアンのアーカイブス調査にて興味深い資料が多く見つかりうれしい限りである。今後も,フィールドワークや文献調査を通して、自然界と人との関わりを明らかにしていきたい。はじめに 本研究は、自然史博物館に展示された蝶の研究を通し、自然界と人との関わりを探求する。研究方法 自然史や、蝶に関する先行研究のレビューを行うほか、博物館では展示方法など、どのような取り組みを行っているのかフィールドワークを行う。研究経過:フィールドワークを中心に 蝶に関連する資料を研究する一方、フィールドワークも行った。①科学史学会(2019/5/25) 溝口元氏による「日本の蝶研究史における図譜と新種記載」や名和昆虫博物館館長、名和哲夫氏の「名和昆虫博物館100年史」記念講演を聞いた。講演が始まる前、名和哲夫氏にお話を伺うことができた。1.名和昆虫博物館は公的な博物館とは違う。2.同館では大人や虫が嫌いな人でも来たくなる場所を目指している。3.そのために、どうやったら興味を持つか、どのような展示をすればよいのか日々研究している。 現地を訪れてみると2階にはクイズコーナーもあり、楽しみながら学べる工夫がされていた。昆虫が嫌いな人でも、笑顔になるような展示がいくつもされていた。科学史学会の会場では名和昆虫博物館から特別に標本をいくつかもってきており、特設コーナーが出来ていた。② 中部大学蝶類研究資料館 (2019/7/26視察) 日本有数の蝶の研究家・コレクターとして著名な藤岡知夫氏が半生をかけて収集した日本産蝶類の生物相を示す標本を収蔵する資料館である。7月28日にサイエンスカフェを開催。8月24日には昆虫DNA研究会公開シンポジウムも開催された。③ 名古屋市科学館 特別展「絶滅動物研究所」(2019/8/10、9/15視察) 名古屋市科学館による夏季限定の特別展である。人間によって絶滅した動物について知ることができ、絶滅の危機に瀕している動物をどのように保護しているのかについても動物園の活動を例に解説している。地域と絶滅というブースにはギフチョウが展示されていた。④ スミソニアン協会での調査(2019/8/25-29) 8月24日から29日の5日間アメリカのスミソニアン協会にて調査を行った。ナチュラルヒストリーの展示責任者と意見交換を行い、展示を決めていく上で何が重要なのかなど、様々な話を伺った。27日には国立自然史博物館(NMNH)を視察し、同館内のバタフライ・パビリオンを訪れた。バタフライ・パビリオンの使命は、好奇心を刺激し自然界について発見することにより、博物館の使命を実現することである。また、設立の理由として、生物多様性と進化的および生態学的プロセスを理解し、存在する生命を十分国際人間学研究科 国際関係学専攻 博士前期課程1年大岩 楊(OIWA YANAGI)1996年愛知県生まれ。中部大学大学院国際人間学研究科国際関係学専攻博士前期課程在学中。専門は博物館学。現在、蝶に着目し、自然史博物館を中心に研究している。左の写真はスミソニアン協会アーカイブスにて撮影s

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