GLOCAL vol.15
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2019 Vol.152019 Vol.1513中国留学―北京語言大学での1年間―け、また高速鉄道を利用して天津など北京近郊の都市への小旅行に出かけることもできた。 昨今、日本の報道でも度々取り上げられているように現在の中国の発展ぶりは凄まじく、一例を挙げると日本でも普及しつつあるキャッシュレス決済が中国では小さな露店にまで浸透しており、IT・ハイテク技術大国としての地位を盤石にしつつあるように感じた。 しかし、同じく報道でよく触れられている通り、情報統制の深刻化は、Google関連のほぼ全てのサービスがブロッキングされていることや、NHK等の外国放送が度々予告なく中断されることなどから一留学生の立場でも感じられるほどであり、習政権による権威主義体制の強化をまざまざと見せつけられた。おわりに 生まれてからの25年間を日本で暮らしてきた筆者にとって、外国で暮らし、異なる国籍・文化の人々と共に生活することは初めての経験であったが、このことは筆者の価値観に多くの刺激を与え、留学に踏み切った甲斐があったと強く感じさせた。また、今回の留学はこれまでテレビやインターネットなどの媒体を介した情報のみで中国を理解してきた筆者の認識を、実際にこの目と耳で見聞きし、肌で触れることによって、よりリアルな中国へと変化させた。このように、以前よりも中国をニュートラルな視点で理解できるようになったことは留学の最大の成果であった。はじめに 筆者は、2018年2月28日から2019年1月15日までの約1年間、中国北京に存在する北京語言大学での中国語習得を目的とした語学留学を行った。今回の語学留学は、学部および大学院と中国に関連する歴史研究を行い、中国語で記された史料を用いつつも、それまで体系的な中国語教育を受けていなかった筆者が、自身が研究の対象とした中国への理解を深めることを目的として決定したものであった。筆者の留学した北京語言大学は、北京市海淀区に存在する語学系国立大学であり、中国教育部直属の国家重点大学の1つとして指定されている大学である。中国国内で唯一、外国人に対する中国語と中国文化の教育を主目的としている大学であり、150以上の国と地域からの留学生を受け入れた実績があるなど、中国国内でも特に留学生の受け入れ体制の充実した大学の1つである。北京語言大学での中国語学習 中国大陸本土での語学留学の形式は、留学生への語学教育を実施している一般の大学へと留学するものが主流であって、筆者もこの形式で北京語言大学に留学した。北京語言大学では、複数の期間の留学コースを開講しているが、筆者は1年間のコースを選択した。 筆者は前述した通り、渡航以前は中国語の習熟度がほぼゼロであったために、初級クラスの1つに振り分けられ、およそ10数か国出身の約20名のクラスメイトと共に中国語を学んだ。クラスメイトは、アジア出身者が最も多く、次いでアフリカが、他にも欧米や南米、中央アジアからの留学生もおり、また年齢も主には20代であったが、最年少は19歳、最年長は37歳と幅が広かった。 筆者の在籍したクラスは、中国語の学習経験の少ない、もしくは全くない留学生が振り分けられるクラスであったため、中国語の基礎中の基礎を学ぶことから始まった。当初は、筆者もクラスメイトたちも簡単な挨拶を覚えるのにも苦労する有様であったが、1学期目の終わりの頃には、簡単な会話程度であれば、問題なく会話できるようになっていた。また2学期目の授業は、複数人での即興の会話劇を毎時間行うなど、より実践的な内容となっていった。そして、1年間の留学期間が終了する頃には日常会話であれば何不自由なく行えるようになっていた。中国での生活 北京での滞在先は北京語言大学の敷地内にある留学生専用の学生寮であったが、他にも生活に必要な設備や施設の一切が敷地内に揃っていたため、生活面での不自由さを感じることはほとんどなかった。授業が平日の午前中に固まっていたため、自由に使える時間は多く、毎週のように北京市内の観光に出か国際人間学研究科 歴史学・地理学専攻 2017年度博士前期課程修了横地佑紀(YOKOCHI Yuki)1994年愛知県生まれ。中部大学大学院国際人間学研究科(歴史学・地理学専攻)博士前期課程修了。専攻は日本・中国近代外交史。修士研究では、義和団事件と列強の中国政策に関する研究を行った。大学院修了後は、自身の研究テーマとして扱った中国への理解を深めることを目的として、中国への1年間の語学留学を行った。留学先は、中国の首都北京市内に存在する北京語言大学で、外国人向けに中国語教育を施すことを専門とした大学である。F abroadrom

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