GLOCAL_Vol16
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2020 Vol.162020 Vol.162020 Vol.162020 Vol.167二字漢語をめぐる問題点学習者の作文コーパスを使って、中国人日本語学習者は「二字漢語」の構文を作文で使う際に、誤用を起こす場面を分析し、習得上の問題点を品詞性と格助詞から検証する。それは中国語の影響とどのようにかかわっているのかについて調査し考察する。また、中国人日本語学習者を対象に、穴埋め式のテストの形でアンケート調査を実施し、格助詞の意味役割ごとに誤用傾向について検討する。この二つの方法によって、それらの誤用がもたらす影響及びそれに対する改善策についても模索する。中国人母語話者に対する具体的な教授法を提案したい。引用文献生田守・久保田美子(1997)「上級学習者における格助詞『を』『に』『で』習得上の問題点―助詞テストによる横断的研究から―」『日本語国際センター紀要』第7号、pp.17-34杉本妙子(1997)「格助詞「を」をめぐる誤用―分類と分析」『コミュニケーションに学科論集 茨城大学人文学部紀要』第1号、pp.31-50付立民(2011)「日本語学習者の「サ変動詞」の習得に関する研究―中日同形のサ変動詞を中心に―」大連理工大学 外国語言語学及び応用言語学研究科 修士論文李恵(2012)「中国人日本語学習者による日本語作文における二字漢語サ変動詞の誤用について」『日本語研究』第32号、pp.117-129はじめに 筆者は、大学で日本語を専攻していた。中国語母語話者として日本語を学んだ際、母語の中にすでに存在している漢字の知識が学習の妨げになることに気づいた。 特に、日中同形の「二字漢語」を最も間違えやすかった。例えば、「*今の生活は疲れているが、とても充実だ(充実している)。」である。日本語では、「充実」は動詞として使われるが、中国語では形容詞として使われる。筆者はそのような「二字漢語」における誤用に興味を持ったため、日中同形の「二字漢語」を研究することにした。二字漢語における誤用 中国人日本語学習者は日本語で作文を書く際に、母語の影響を受けて、二字漢語を使用する傾向がある。しかし、「二字漢語」の構文を用いる際に、「二字漢語」の品詞性による誤用がよく見られる。 また、品詞性の誤用のほかに、「二字漢語+する」(以下は「二字漢語動詞」とする)の前の格助詞を間違えやすいことも指摘されている。これまでの「二字漢語動詞」に関する先行研究をみると、中国人日本語学習者に「ヲ」格の過剰一般化が起こっていることがわかる(杉本、1997)。先行研究 先行研究として、李(2012)、付(2011)、杉本(1997)、生田・久保田(1997)を調べた結果、日中同形の二字漢語の品詞性についての研究は少ないことがわかった。そして、「二字漢語動詞」における格助詞の誤用の分析に関する研究はより少ない。李(2012)は日中同形の「二字漢語」の品詞および助詞に関する誤用の原因を分析しているが、主に意味用法の誤用という観点から検討し、格助詞については詳しい研究がない。 付(2011)は「二字漢語」を自動詞、他動詞、形容詞、副詞として使った誤用の四つの種類を検討し、助詞「に」と「で」の取り違いについて述べているが、「に」と「を」の取り違いについて十分に調べられていない。李と付において「二字漢語」の品詞については簡略に触れられているのみで、格助詞については研究は不十分である。 杉本と生田・久保田(1997)は中上級の複雑な格助詞の意味機能の理解のみ考察したが、テストの問題として出る二字漢語動詞が検討されていない。そこで、二字漢語の品詞と二字漢語動詞における格助詞を関連付けて、その誤用の原因を分析したい。研究目的・方法 本研究は上述した先行研究を踏まえ、まず、国際人間学研究科 言語文化専攻 博士前期課程1年張 璐(Lu Zhang)1995年生まれ。2017年中国の厦門理工学院を卒業。専門は日本語教育学。現在、中国語を母語とする日本語学習者を対象に、日中同形の二字漢語をめぐる問題点について研究している。左の写真は中国江蘇省泰興市にて撮影s

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