GLOCAL_Vol17
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2020 Vol.172020 Vol.177図3. メタデータ構造のカテゴリテゴリに分けた。 「素材」は撮影され、全く編集がされていない動画である。撮影者の情報のみが記録されている。大学の学生組織であるため、学年(熟練度)などが検索の際のAPとなっている。 「イベント」は学内の公式行事についてのメタデータである。番組制作者が過去のイベントなどの撮影状況を調べる場合などに使うAPが含まれている。大学を中心とした当該組織内の統制語彙が使われている。 「被写体/物」は、映像に映る人物や物体、風景や季節などである。番組制作者および編集者が番組制作時に付与するものであるため、編集によって撮影者の思惑とは異なる対象がメタデータになることがある。特定の人物や物に対して過去の実例を調べて特集に繋げるためのAPとなる。 「番組」には映像VTRがいつ使われたのか、番組制作者は誰なのかなどの情報が含まれる。番組制作者が過去の番組の情報を調べる場合に使う。仮想的な「番組」名に個別の番組が日付単位で含まれている。NHKアーカイブスなどの番組名の検索と日付への細分化の形式を参考にした。おわりに 今後の展開として、動画版IIIFと呼べるようなシステムの構築を目指し、統一規格の作成やLODを視野に入れた規格の作成を行っていきたい。参考文献宮本聖二(2018)「放送デジタルアーカイブの現状と課題」『デジタルアーカイブ学会誌』 2(4), 312-317.「International Image Interoperability Framework」IIIF-C.(accessed 2020.9.10)「あつまれどうぶつの森」Nintendo.(accessed 2020.9.10)の情報は、他の組織では必要とされず、汎用的なルールとは合わないことがある。そのため、ガイドラインの設定は、その組織内で行う必要がある。先行事例 動画のアーカイブは、様々な組織が行っている。しかし、調査した限り、既存の動画配信サイトでは、編集が済んだ動画の形でしか公開していない。例えば、民放はTVerなどのサービスを介して、見逃し配信などのサービスを行っているが、これらは基本的に番組としての配信であり、素材単位の配信にはなっていない。規模の大きいテレビ局でもアーカイブは未整備であったり、社外に委託していたりしている。 また、画像の国際的な規格であるInternational Image Interoperability Framework (以下IIIF)においては、動画の活用に触れられているが、実践的な規格はまだ認められてはいない。IIIFの使用例としては、Nintendoのゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」が挙げられる。世界各地の美術館の所有する画像データがIIIFの形式で公開されていれば、ゲーム内でドット絵として飾ることができる。この機能を使い、多くの人が思いのままに有名絵画を楽しむことができるようになった。いままでは各組織が様々な形式で画像データを持っており、閲覧ビューアーもその形式に沿うように異なるものを使用しなければなかったが、国際基準となるIIIF形式であれば世界中の多くの人に利用できる。本研究では、IIIFのように、動画に関しても、あらゆる人に利活用できるような規格を作成していきたい。既存動画アーカイブの問題と 解決手法 動画のアーカイブは、前述のように番組単位で行われることがほとんどであり、実際に編集された映像しか残っていない。NHK内部の制作用アーカイブも、実際に番組制作に使われた数秒以外は廃棄されてきた。また、スタッフの秀作や使用されなかったデータは他業種のコンテンツ制作系でも廃棄されていることが多いそうだ。しかし、このような動画を地域資源として考える場合、番組だけでなく捨てられた部分にも多くの地域情報が残っている。実際に、NHKの番組制作手法を参考に作られた中部大学放送研究会では、1分のカットのために短いもので約3分、長いもので約1時間の動画が撮影され、必要なデータ以外は半年程度で廃棄されている。 なお、実際に本研究会で制作された30分の番組は約560個のカットが組み合わされている。そのため、完成した映像からカット単位で素材を切り出すことは実時間以上の作業コストがかかることがわかる。なお、本研究会では完成した動画はカセットテープに記録されているほか、最近の動画はMP4形式で保存されている。 そこで、本研究では映像の編集段階での動的なメタデータ付与を行う。また、各段階に応じたアクセスポイントを設定し、利用者の目的に応じたアーカイブ利用を行うことを支援する。 図3のようにメタデータは大きく4つのカ図2. メタデータの構造

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