GLOCAL Vol.21
7/12

2022 Vol.215部高等学術研究所所属)にご協力頂き、春日井市全域を対象に深層学習による画像認識技術とGISを用いた屋根上太陽光パネルの識別を行い(図1)、その地理的分布を明らかにした。 この技術により、市内の太陽光パネルの地理的な分布が約90%の精度で効率的に識別することが可能になった。図2は春日井市内において屋根上太陽光パネルが導入されている一戸建ての割合の分布を示している。新築の住居が比較的多い神領駅周辺で屋根上太陽光パネルの導入割合が高いことが分かる。今後はその他にどのような特徴を持つ地域に屋根上太陽光パネル導入世帯が多いのか等、太陽光パネル導入につながった要因を明らかにする分析を計画している。こうしたGISと画像認識という技術の新たな組み合わせが、カーボンニュートラルの実現を考える上で今後役立っていくと考えられる。関連GISデータの近年の動向 GISが発展する以前は、太陽光エネルギーが都市内のどこに、どの程度降り注いでいるのかを効率的に計測することは困難であった。これは都市などの広範囲に存在する建物の形状・高さをデジタル化したデータが限られていたためである。こうしたデータがGISの発展とともに整備されたことで、都市を対象にした効率的な日照解析が行えるようになり、上述した屋根上太陽光パネルの位置情報と組み合わせれば、各世帯における屋根上太陽光パネルによる発電量の推算も可能となる。・デジタル・グリッド-卒FITで加速する日本型エネルギーシステム再構築-. 日刊工業新聞社.2)国土交通省 (2020). PLATEAU [プラトー].https://www.mlit.go.jp/plateau (2022年8月10日閲覧) 以前は都市における建物の形状・高さデータは非常に高価なものであったが、国土交通省が近年、3D都市モデルの整備・活用プロジェクト「PLATEAU」を推進し2)、日本の56の都市を対象に建物の形状・高さデータの無償提供を開始した。この例のように、今後もオープンデータ化などを通じて様々なGISデータへのアクセスがしやすくなっていくとみられ、GIS研究の発展と普及に貢献するものと考えられる。おわりに 深層学習による画像認識技術の優れている点は、自動化され認識の速度が速い上、十分な教師データの蓄積を行えば人間の目による確認よりも正確に対象物を判別できる可能性を持つ点である。特に太陽光パネルはいずれも見た目が似ているため、画像認識の実行可能性が高い。 さらに、本研究では春日井市を対象に画像認識を行ったが、こうした識別された屋根上太陽光パネルの写真データの蓄積が、別地域の太陽光パネルの識別にも役立つ可能性がある。日本の国土は南北に長く、地域ごとの日照時間などの気象条件、自然災害の被害の遭いやすさ、標高等、太陽光発電に関わる条件が地域によって異なる。将来的に春日井市とは条件の異なる他地域を対象に、同様の太陽光パネル導入の実態と要因の分析を行うことにも大きな意義があると考えられる。参考文献1) 井熊均 ・瀧口信一郎・木通秀樹(2020). ソーラー図2. 春日井市内の屋根上太陽光パネルを導入している一戸建て割合の分布

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る