GLOCAL 2025 Vol.25(Special edition)
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2025Vol.252025 Vol.252025Vol.2521産業遺産など、地域の産業とニーズ、特性に合わせたコンテンツが多く提供されています。 石川県は、公私の文化財の保護・振興を専門とする専門性の高い組織が運営しており、伝統文化や芸術に特化した専門家が関与しています。また、自然景観や生態系に関する資料も豊富です。観光都市として、地域住民よりも旅行者にフォーカスしたコンテンツも目立っています。 東京都は首都としての規模と多様性から、多くの組織が連携し、高度な技術と資金力で運営。 愛知県は県立図書館を中心に、地域の教育・文化機関と協力し、地域密着型のサービスを提供。 石川県は文化振興事業団など専門組織が主導し、伝統文化の保護・発信に特化。 このように、各県のデジタルアーカイブサービスは、地域の特性やニーズに合わせて運営されており、運営組織や収集コンテンツの種類にもそれぞれの特色が現れています。 なお、これらは、2024/9までに各自治体の公式サイトからリンクされた組織が運営するWebサイト(各100サイト)を、手作業で確認したデータに基づいており、全数を調査したものではありません。今後のデジタルアーカイブサービス デジタルアーカイブに対する一般人と研究者の見方の違いは、利用者と提供者という立場の差から生じています。一般の人々のニーズや認識は急激に変化しないため、研究者や開発者がそのギャップを埋めるために歩み寄ることが重要です。 研究者や開発者は、一般の利用者の視点を理解し、使いやすく価値のあるデジタルアーカイブを提供する責任があります。そのためには、技術的な工夫だけでなく、コミュニケーション、教育、マーケティングなど多角的な取り組みが必要です。デジタルアーカイブの持つ可能性を最大限に引き出し、社会全体での活用が促進されるよう、頑張らなくてはなりません。引用文献[1]EDO-TOKYO-MUSEUM. 『デジタルアーカイブス』https://www.edohakuarchives.jp/, (Accessed 2024/10/11)[2]愛知県文化芸術課文化財室.『文化財ナビ愛知』https://jmapps.ne.jp/aichi_bunkazai/.(Accessed 2024/10/11)[3]金沢市.『金沢ミュージアム+』https://kanazawa-mplus.jp/.(Accessed 2024/10/11)ブを作ろうとします。専門家ではないと、イメージだけでサービスを作ってしまいます。結果として、「デジタルアーカイブ的なもの」という、正体のわからないものが誕生するのです。 実際に東京都、愛知県、石川県のデジタルアーカイブ的なインターネットサービスを概観して、どのような「イメージ」に基づいているのか考えてみましょう。 東京都のデジタルアーカイブサービスは、運営組織としては東京都立図書館、東京都写真美術館や江戸東京博物館など、都内の幅広い公共の文化施設が多く提供しています。収集しているコンテンツの種類は、歴史的資料:江戸時代から現代までの東京に関する文献や絵図。写真・映像:都市の発展や社会の変遷を記録した写真や映像資料。文化財・芸術作品:美術品や工芸品のデジタル画像。地図・都市計画資料:東京の地理的・都市計画的な資料。が多く、首都としての特性から、膨大な資料を用いて、都市の発展、社会の変遷、都市計画など、都市特有の資料をコンテンツとしているものが目立ちます。また、高度で最新のデジタル技術を活用し、高解像度の画像や3Dデータを提供しています。さらに、国際都市であるため、英語など多言語での情報提供も行なっています。図1 江戸東京博物館デジタルアーカイブス 愛知県のデジタルアーカイブサービスは、運営組織として愛知県図書館、愛知県美術館や歴史博物館など、公共の施設が多くデジタルコンテンツを提供しています。種類は、郷土資料:愛知県の歴史や文化に関する文献、古文書。三英傑も多い。写真・映像:地域の祭りや伝統行事、風景などの写真・映像資料。産業資料:自動車産業など、県の主要産業に関する資料。文化財: 国宝や重要文化財に指定された建築物や美術品のデジタル画像。が目立ちます。東京と近い構成ですが、地元の三英傑にちなんだ歴史や文化、民俗学的な資料、自動車産業をはじめとする工業製品や技術資料が多く提供されています。図2 文化財ナビ愛知 石川県のデジタルアーカイブサービスは、運営組織として石川県立図書館や、各市の文化振興事業団が多く提供しています。収集しているコンテンツの種類は、伝統工芸:加賀友禅や九谷焼などの伝統工芸品の画像・資料。民俗資料:地域の祭り、伝統行事、民話などの記録。歴史的建造物:武家屋敷や茶屋街などのデジタルデータ。自然風景:白山や能登半島などの自然景観の写真。が多いようです、文化遺産の保護:伝統文化や工芸に特化した資料が豊富です。観光資源としての活用と、石川ならではの文化・風土を前面に出した地域アイデンティティの強調を目的としたコンテンツが目立ちます。図3 金沢ミュージアム+ これは、運営組織による違いでもわかります。 東京都は、多様な組織が連携し、都立図書館だけでなく、多数の博物館、美術館、大学など多くの組織が連携しています。豊富な資金と技術を背景に、質の高いデジタルコンテンツを提供しています。 愛知県は、主に県立図書館が中心となり、地域の博物館や教育機関と協力しています。また、

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