GLOCAL 2025 Vol.25(Special edition)
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院生の研究紹介院生の研究紹介院生の研究紹介院生の研究紹介52その他の意味機能を持つ終助詞「ね」の使用は少なかったこと、また質問の際に使用される終助詞「か」との誤用が見られたことが明らかになった。この2名は中級・中上級レベルであるが終助詞「ね」「よ」の習熟度は低かった。そしてこの学習者2名は2名とも母国である中国で日本語を学んでおり、日本語母語話者と会話する機会が少なく、終助詞「ね」「よ」が実際に使用される場面を想像することは難しい。この学習環境が言語習得与える影響も今後の研究に取り入れたい。おわりに 本稿では終助詞が文に与える影響、学習者から見た終助詞の学習に関する先行研究ついて紹介した。これまでの先行研究では、中国人日本語学習者を対象にした終助詞「ね」「よ」の研究が多く見られ、韓国人日本語学習者を対象にした終助詞「ね」「よ」の研究は管見の限り十分ではない。そこで自身の修士論文では、中国人日本語学習者と韓国人日本語学習者を対象に終助詞「ね」「よ」を学習環境と母語の影響の観点から、両者の習得状況について明らかにしたい。引用文献木曽美那子(2013)「中国人日本語学習者の会話における終助詞に対する母語話者評価」『國分論叢』46、30―47、神戸大学文学部国語国文学会西郷英樹(2016)「終助詞「ね」「よ」「よね」の発話連鎖効力に関する一考察―大規模談話完成テスト調査報告―」『関西外国語大学留学生別科日本語教育論集』26号、95―120、関西外国語大学留学生別科楊虹(2010)「中国人日本語学習者の終助詞の使用に関する一考察」『お茶の水女子大学人文科学研究』6、199―208、お茶の水女子大学はじめに 日本語学習者が日本語を学習する際、学習が難しいとされている学習項目に、オノマトペやカタカナ語、終助詞の習得などがあげられる。日本語学習者が日本語を学習する最終目的は人によって異なるが、日本語母語話者と同じレベルまで習得したい場合、これらの学習項目は避けて通れない内容である。本稿ではその中でも終助詞について紹介し、最後にこのテーマに関する修士論文の概要を説明する。終助詞について 終助詞とは、『日本語大辞典』によると、「文末に用いられ、文を終える働きをする助詞」(掲載ページ記載)とされているが、終助詞の定義についての共通認識がなく研究者によって見解が異なるとされている(木曽:掲載ページ記載、西郷も同)そして西郷(2016)によると終助詞「ね」は相手とのあいだに良い雰囲気を作りたい、または提案の前の土台(前提、共通認識)を作りたいなどなど、何らかの目的があって、「あなたからの同意が欲しい」と伝えたい場合は「ネ」を用いる。とされ、同じく西郷(2016)で、終助詞「よ」は同意よりも話を一歩前進させたいという話し手の意図を伝えたい場合な「ヨ」を用いると述べている。 終助詞には、文を終わらせる働きだけでなく、文や会話に様々な意味を添える働きも持っている。終助詞「ね」「よ」の使用例 「今日は良い天気だ。」という文に相手に同意を求めたい場合は「ね」を用い、「今日は良い天気だね。」と投げかける。相手は「そうだね。」や「良い天気だね。」という返答をし、同意を得ることができる。しかしそこで会話が終わってしまうことが多く、その後の展開に繋げることは難しい。 一方、終助詞「ね」ではなく終助詞「よ」を前述した文に使用すると、「今日は良い天気だよ。」となる。「良い天気だから何?」という返答になるが、何かやりたいことがあるのだろうかと相手に思わせることができる。「だから買い物に行こう。」「だから洗濯をしよう。」など、会話を広げることができる。 また終助詞「よね」では確認要求の意味を更に強くさせる働きを持つ。 このように終助詞が異なるだけで文の意味が全く異なる。日本語学習者から見る終助詞 私たち日本語母語話者はこのような文の微妙な違いを会話や文章において瞬時に判断し、会話を成立させることができる。しかし非日本語母語話者にとって、この微妙な違いを判断し、最適な返答をすることは難しい。 それは学習者の母語に同じ意味を持つ表現があるかということに関係する。例えば同意を求める意味で使用される終助詞「ね」は中国語には存在するが、韓国語には管見の限り存在しない。母語に同じ意味を持つ表現が存在しないと、どのような意味なのか、どのような状況で使用されるのか、などを想像することは難しい。それにより使用を避け、学習が止まってしまうこともある。 楊(2010)では、中国人日本語学習者2名に対し終助詞「ね」「よ」の習得状況について調査を行った。その結果、共感を示す相槌「そうですね」の使用が多く見られるが、日本語学習者から見る終助詞国際人間学研究科 言語文化専攻 博士前期課程1年青木 利華(AOKI Kazuha)2001年愛知県大府市生まれ。2024年に中部大学大学院に進学。卒業論文では、書き言葉と話し言葉における終助詞「に・へ」の使用について研究した。修士論文では、日本語学習者における終助詞「ね・よ」をテーマにし、その習得状況について執筆中。

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