GLOCAL 2025 Vol.25(Special edition)
62/67
研究科の活動報告研究科の活動報告修了生からのメッセージ修了生からのメッセージ修了生からのメッセージ修了生からのメッセージNotesPlusNotesPlus60た地理学のほか、歴史学やそれ以外の学問分野の文献も幅広く読むようにしていました。また、歴史学・地理学専攻の先生方には本や論文だけでは得られない話をたくさん伺ったことを思い出します。自分自身の研究に対する考え方などはこの博士前期課程の頃の経験が基礎となっている気がします。 博士前期課程を修了した後は、茨城県つくば市にある国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)に研究員として就職しました。防災科研では、災害対策や災害対応における情報の利活用を研究し、災害による被害の低減を目指しています。自治体や地域等で活用可能な情報システムの開発も行っています。その成果である災害時の災害情報を一元的に集約したウェブサイト「防災クロスビュー(bosaiXview)(https://xview.bosai.go.jp/)」や地域の防災活動を支援するサイト「地域防災Web(https://chiiki-bosai.jp/)」などは私も開発に携わったものです。 近年も、地震や台風、豪雨などによる甚大な自然災害が発生しています。研究を通じて、自然災害による被害の軽減に向けて貢献していきたいと考えています。 私の場合、学士論文のフィールドに恵まれ、修士2年の春に査読誌掲載にたどり着くことができました。しかし修士論文はついに投稿にすら至らず、博士後期課程に進学したのちにはじめた研究を何年も査読担当者とやり取りすることになりました。私が投稿した雑誌の査読担当者は、とても丁寧に査読してくださり、指摘がA4で十枚近くに及ぶことも珍しくありませんでした。そういった指摘に、林上先生をはじめとする中部大学大学院の様々な先生からご指導をいただきつつ、ひとつひとつ答えていったものです。 今は、東海地方の色々な大学や高専で、非常勤講師として色々な授業を担当しています。レポートや論文の添削・評価をしていると、院生時代をふと思い出すことがあります。あの時の先生方のご指導、学術論文に投稿して何度も返ってきた査読コメント……。私もそういった丁寧で親身な仕事ができるように、当時の自分自身がかくあって欲しいと願い、憧れた講師・研究者になれるように、今日も下を向いたまま、あがいています。 中部大学には人文学部歴史地理学科3年次に編入学し、学部卒業後に大学院国際人間学研究科(歴史学・地理学専攻)の博士前期課程に進学しました。在学中は地理学を専攻し、都市経済地理学がご専門の林上先生(現・名誉教授)のゼミに所属しました。 私が大学院に在学していた頃は、まだ2011年3月に発生した東日本大震災の影響が社会に広がっており、災害や防災への関心が高かった時期でした。私自身もその影響を受け、自治体の防災対策や地理情報システム(GIS)を活用した自然災害リスク分析などの研究を行いたいと考えていました。修士論文ではGISを用いた津波避難の分析を行いました。最初は入門書から勉強を始め、研究に関連する文献から分析手法やGISソフトウェアの使い方を勉強していましたが、なかなか自分が行う研究へどのように繋げられるかが分からず苦労し、修士論文の研究を進める中でよく行き詰ったことを覚えています。 在学中には学会や研究会などにも参加しました。学会で様々な研究発表を聞いていると、研究分野や関連する領域の基礎知識が不足していることを痛感しました。そこで専攻してい 昭和の名曲に「上を向いて歩こう」というものがありますが、院生時代の私は、いつも下を向いて、写真にあるような杭を探していました。土地の境界を示す杭です。 数百トンもの金属の塊が燃料や貨客と共に空を飛び交い、様々な情報が国境すらも越えて瞬時にやり取りされるようになった今日ですらも、人類は、土地と無縁ではいられません。多くの場合、何かを行おうと思ったら、それを行えるような場所が必要です。院生室の中で完結するような事柄であれば、調整が必要な関係者も、その調整に必要な労力もごく限定されています(よければ、2017年刊行のGLOCAL第10号に掲載された私の記事を読んでみてください)。しかし、事業の規模が大きくなればなるほど、きっと、より多くの主体同士の複雑な調整に多大な労力が求められるようになることでしょう。 私は、近現代の木曽川周辺を研究対象地域として、鉄道や舟運、あるいは観光施設のために必要だった土地、そして亜炭採掘のための鉱区の所有者がどのように移り変わっていったかを調べていました。佐野 浩彬林 泰正歴史学・地理学専攻博士前期課程2014年度修了 研究職歴史学・地理学専攻博士後期課程2020年度修了 非常勤講師
元のページ
../index.html#62