GLOCAL 2025 Vol26
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6ど物産系消費は比較的低調であった。図1 ハルビン市観光者推薦意向の頻度分析筆者によるSPSS分析結果まとめ ハルビン市の旅行者は主に4年制大学以上の高学歴で中所得層が多く、文化体験に強い関心を持つ。SNSなどのUGCが主要情報源となり、従来のメディアを大きく上回っている。観光客は文化的雰囲気や景観、サービスに高い満足を示し、再訪意欲や推薦意向も非常に高い。 氷雪レクリエーションやヨーロッパ風建築、民族文化への関心が強く、観光動機は自然環境と都市文化の融合に基づく。ハルビンの魅力は雪氷資源に加え、独自の都市景観と歴史文化に支えられている。 観光消費は体験型に偏りがちで、お土産開発やマーケティングの改善が求められる。冬季の寒さに対応した交通インフラやサービスの充実も課題である。引用文献ハルビン市政府文化広報観光局(2023)「第14次5カ年計画文化観光発展計画」ハルビン市人民政府HP。ハルビン市人民政府(2023)「ハルビン氷雪文化首都(氷雪経済)の発展計画(2022~2030年)に関する通知」ハルビン市人民政府HP。はじめに ハルビン市は世界三大氷雪祭りの開催地の一つで、豊富な氷雪観光資源を有しているが、かつては観光サービスの意識が低く、ぼったくりなどの問題が頻発し、都市イメージは悪化していた。しかし近年、ハルビン市政府は観光資源の再整備や、市民・民間の協力体制の構築を進め、旅行環境を大幅に改善したことで、観光者数と観光収入の急速な回復と成長に成功した。現在では年間1億人以上の観光客を受け入れ、その約80%が12月から2月の氷雪観光ピーク期に集中しているにもかかわらず、オーバーツーリズムは発生していない。市民の親切さや高い観光満足度がSNSを通じて広まり、都市ブランドの向上にもつながっている。 こうした背景を踏まえ、本研究ではハルビン氷雪観光における観光客の行動特性とサービスの質に関する情報を明らかにすることを目的とし、アンケート調査を実施した。調査は2025年1月20日から25日にかけてオンラインおよびオフラインで配布・回収を行い、有効回答数は108件であった。調査対象はハルビンの氷雪観光を体験した観光客であり、旅行動機、観光サービスの満足度(文化的雰囲気・交通・インフラ・飲食・サービスなど)、支払意思・旅行予算、推薦意思・再訪意思、情報源の5つの側面から質問項目を構成した。アンケート調査結果の データ分析方法 アンケート調査で得られたデータはSPSS統計ソフトを用いて分析した。単一選択項目については記述的頻度分析を行い、観光客の基本的な傾向を把握した。複数選択項目に関しては多重応答分析を用い、複合的な選択傾向や関連性を明らかにした。また、観光サービスに対する満足度項目についてはリッカート尺度を採用し、信頼性および妥当性を検証したうえで評価を行った。これにより、観光行動やサービス評価に関するデータの精度と分析結果の信頼性を確保した。ハルビン氷雪観光 アンケート調査データ概要 本アンケート調査の概要は以下の通りである。旅行者は4年制大学以上の高学歴層が66%を占め、職業は学生、会社員、フリーランスが中心で、月収は3000~8000元の中所得層が多数を占める。訪問回数は初回47%、リピーター53%で、滞在期間は日帰り33%、2~5日64%、6日以上3%と短期旅行が主流である。旅行形態はセルフツアーが最も多く(41.7%)、団体旅行(33.3%)や自家用車旅行(20.3%)が続く。人気の観光資源は氷雪彫刻(87%)、欧風建築(69%)、夜間イベント(77%)で、グルメ体験やスキー、文化体験にも高い関心が示された。文化的雰囲気(73%)、インフラ(71%)、サービス(73%)への満足度は高く、97%の旅行者が予想を超える体験を得たと回答している。情報源は友人の紹介(82%)とSNS(72%)が中心で、伝統的メディアの影響は限定的であった。また「雪と氷のレクリエーション」「スペシャリティ・ケータリング」「文化体験」への関心が高い一方、特産品なハルビン市における氷雪観光者の 行動パターンと傾向についての解析国際人間学研究科 国際関係学専攻 博士前期課程2年グホイチャン(GU Huiqiang)中国黒竜江省ドルボド・モンゴル族自治県出身。2021年7月、内モンゴル大学モンゴ歴史学系観光管理専攻を卒業。2024年4月に中部大学大学院国際人間学研究科国際関係学専攻に入学。現在はハルビンにおける氷雪観光を主な研究テーマとし、都市再生や地域振興における観光の役割について研究を進めている。

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