GLOCAL2026 Vol27
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一Profile 国際人間学研究科心理学専攻講師松木祐馬(MATSUKIYuma) 早稲田大学大学院文学研究科人文科学専攻心理学コース博士後期課程単位取得満期退学。博士(文学)。早稲田大学文学学術院心理学コース助手を経て2023年4月に中部大学に着任。専門分野はパーソナリティ心理学。主にBigFiveパーソナリティ特性とアウトカムとの関連,パーソナリティ特性と状況との相互作用について研究している。その他に,個人差を測定する尺度作成研究にも携わっている。著書(共著)に「心理尺度構成の方法:基礎から実践まで』(誠信書房)などがある。パーソナリティ特性と状況の相互作用—個人差をより診断する状況を探って―人々の行動は状況からも影響される「明るい性格の人」と聞くといつも明る<振る舞う人たちだと想像しがちになりますが,人々の行動は匿かれた状況からも多分に影響を受けます。例えば,明るい性格の人であったとしても葬式の場では物静かに振る舞うことが大半です。自身の行動が状況に左右されることは中々意識されづらいのですが,人々がどのように行動するかはその人のパーソナリティ(性格)だけでなく状況からの影響も受けて決まります。人々の行動がパーソナリティと状況の双万から影響を受けるという考え方は,心理学でも古くから指摘されてきましたが,とりわけ状況の重要性を指摘したのがMischelです。Mischel(l 968詫摩監訳l992)は,状況を超えた行動の一貫性を示す実証研究が少ないことを指摘し,パーソナリティのみでは人間の行動の予測や説明には不十分であると主張しました。このMischelの主張はパーソナリティ研究の意義に一石を投じ,パーソナリティと呼ばれるものの実在性をも問う人一状況論争を引き起こしました。パーソナリティは平均的な行動傾向を説明する人一状況論争が活発になされる中,Fleeson(2007)はパーソナリティが説明できる観点として,平均的な行動傾向に着目しました。Fleeson (200 l)は日常生活で経験される認知・感屑行動などをリアルタイムで複数回測定する経験サンフリング法を用いて,2~3週間に渡り1日5回測定時の1時間前にBigFiveパーソナリティ特性と関連する行動をどの程度取っていたかを尋ねる調査を実施しました。なお,BigFiveパーソナリティ特性とは,外向性(積極的に刺激を求め,人付き合いを好む傾向),協調性(優しく,他者の気持ちを思いやる傾向)勤勉性(まじめで誠実な傾向),神経症傾向(感情が不安定になりやすい傾向),開放性(様々なものに興味を持ち,空想をめぐらす傾向)の5次元でパーソナリティを包括的に捉える枠組みです(John,2027)。分析の結果ある一時点の行動傾向と他の一時点の行動傾向との関逓はそれ程大きくないものの,測定データ全体を半分に折半し,集積した行動傾向の間には強い関連があることが見出されました。こうした結果を踏まえ,Fleeson (2004)は,一時の行動の説明には状況が有効であるのに対して,平均的な行動傾向の説明にはパーソナリティが有効であると述べています。パーソナリティ特性の個人差をより診断する状況を探るパーソナリティ及び状況と人々の行動との関連を検討する様々な研究が行われ両者が行動に影響を及ぼすことが明らかにされてきています。しかし,パーソナリティ特性の個人差がより生じやすい,すなわち,人々の個人差をより診断する(diagnostic)状況はどのような状況なのでしょうか。またその個人差の発現が状況によって左右される程度はパーソナリティ特性の種類で同程度なのでしょうか。これらの問題に取り組んだ先駆的な研究として,Conley& Saucier(20 l 9)の研究があります。この研究では,「一人でいるとき」「家族と一緒にいるとき」など29個の状況を取り上げ,その状況において人々がどの程度BigFiveパーソナリティ特性を表出しているかを尋ねる質問紙調査を実施しました。その結果神経症傾向や外向性の発現は相対的に状況の影響を受けやすいこと,開放性の発現は相対的に状況からの影響を受けにくいことが示されています。他にも,全体的なBigFiveパーソナリティ特性ととりわけ関連しやすい具体的な状況は何かについても示唆に富む結果を報告しています。この研究は人々の行動を説明するに際して,「パーソナリティか状況か」という枠組みではなく,「パーソナリティと状況の相互作用」を積極的に取り上げたとても興味深い研究であると思います。私はConley& Saucier(20 l 9)の結果や研究手法をとても興味深く思い,同じくこの研究に関心を持っていた研究者に声をかけ,同様の手続きを用いた調査研究を共同で実施しました。本稿の後半ではその調査結果について簡単にこ紹介します。パーソナリティ特性と状況の相互作用の検討取り上げた29個の状況をTablelに示しました。ます,パーソナリティ特性ことに個人差が生じやすい状況を検討したところ,外向性で4
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