GLOCAL2026 Vol27
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Table l 扱った状況一覧状況l.一人でいる2.幼い子どもたちの周りにいる3.懇親会に出席している4家(いつも寝泊まりしている場所)にいる5.批判されたり非難されたりしている6.不当な扱いを受けている7.一文無しの(お金がない)8.欲望をすぐに満たす機会がある9.誰かに手助けを頼まれている10.褒められたりお世辞を言われたl l.機嫌が悪いl2.誰かと意見が異なる13.機嫌が良い14.(ある状況で)責任者または管理者である15.自分の思い適りにいかない16.デート中,または恋愛のパートナー候補と一緒にいる17.肉体的に疲れている18.即決即断することを求められている19.慌てたり急いだりしている20.買い物をしている21.体調が悪い(身体的な不調を感じている)22.誰かがあなたを支配しようと試みたり威張り散らしたりしている23.ストレスを感じている(ストレス下にある)24.勉強をしている25.誰かに良い印象を持ってもらいたい26.見知らぬ人(知らない人)と一緒にいる27.家族と一緒にいる28.友だちと一緒にいる29.働いている(例えば.仕享で)は「見知らぬ人といる」状況で,協調性では「被支配」状況で勤勉性では「家にいる」状況で,神経症傾向では「一文無し」状況で開放性では「被支配」状況でそれぞれその特性の個人差が生じやすいことが示されました。例えば,積極的に刺激を求め,人付き合いを好むという外向的な傾向の個人差は,知らない人と一緒にいる状況で最も表出しやすいということです。言い換えると,外向的な人々と内向的な人々との(外向性という側面での)違いが最も顕著に表れやすい状況は知らない人と一緒にいる状況だということですね。個人差が表出されやすい状況はパーソナリティ特性によって違いがあるようですが,誰かから支配されそうな状況は比較的共涌して個人差が表れやすい状況のようです(神経症傾向の個人差が2番目に生じやすい状況でもありました)。この結果は非常に示唆に富む知見であると感じています。つまり,「誰かから支配されそうになっている」という状況に置かれると,人によって多種多様な反応を起ごす可能性が高いということを示唆しています。このことは,権力を行使し,(好んでしようとしたかどうかは別として)他者を支配しようとした人にとって,その相手がどのように感じ,どのように反応するかは予見しにくいことを意味します。例えば「自分にはできない」「自分には難しい」と陳情する人に対して権力を行使し,無理に仕事を強要することは自分が想像する以上にその相手に深刻な精神的負荷を負わせている可能性もあるということですね。状況からの影響の受けやすさをパーソナリティ特性ことに比較した分析では,外向性及び協調性,勤勉性,神経症傾向の4特性では状況から受ける影響の大きさに明確な違いは見られなかったのに対して,開放性は状況からの影響を受けにくいことが見出されました。この結果はConley& Saucier(20 l 8)と類似しており,様々なものに興味を持ち,空想をめぐらすといった傾向の個人差には,状況に左右されにくいという日米で共通した特徴があるのかもしれません。状況を特定しない,全体的なBigFiveパーソナリティ特性と特に関連が強い状況を特性ごとに検討した分析では,パーソナリティ特性によって特に関連の強い状況は異なるものの,共通して強く閲連する状況も見出されました。具体的には,「貝知らぬ人と一緒にいる」「家族と一緒にいる」「家にいる」「一人でいる」という4つの状況は,パーソナリティ特性の種類によらす,全体的なパーソナリティ特性と相対的に強く関連していました。このことは,上記4つの状況は人々のパーソナリティ特性の個人差をより“診断'する状況であると言えるでしょう。今後の展望人々の行動がパーソナリティと状況の双方から決定されるという考え方は,心理学領域では古くから指摘されてきました。例えばLewin(l 95 l猪股訳7956)はB=F(P,E) という公式でこれを端的に表し,行動(B)は人(P)と環境(E)の関数であると定式化しています。他方で,パーソナリティと状況の相互作用について実証的に行われた研究はそれほど多くありません。この背景には,人か状況かという人一状況論争の活性化のほか,研究手法や分析手法が未発達であったという事情もあると思われます。近年では欧米を中心にパーソナリティと状況の相互作用に関する研究が活発に行われるようになってきていますが,日本では未だ研究が少ないのが現状です。しかし,状況によって表出しやすいパーソナリティ特性が異なるという相互作用関係は日常場面でもよく見られることであり,研究する意義のあるテーマだと思います。そのため,今後も引き続き検討を続けていきたいと考えています。パーソナリティ特性と状況との相互作用について明らかにすることは,心理尺度の作成場面においても有埜な示唆を与えてくれます。今回の分析では全体的なBigFiveパーソナリティ特性の得点と特に関連の強い4つの状況が見出されたわけですがこれら4つの状況はパーソナリティ特性をより“診断”する状況であるという解釈のほかに,状況設定を行わない項目から構成される心理尺度に回答する際に回答者が単に“思い浮かべやすい"状況であると解釈することも可能だと思います。人々の個人差を適切に反映できるような心理尺度を考案する上で,状況設定をどのように行うかは重要な検討事項になりますので,回答時の状況設定をどのように行うことが個人差測定に有効かを考える上で有用な知見ともなるでしょう。このように,パーソナリティ特性と状況の相互作用研究は基礎研究の1つとしても重要なテーマであると言えるのではないでしょうか。引用文献Conley, M. N.. & Saucie「.G.(2019). An initial broad-level mapping of personality-situation contingencies in selfー「eportdata. Personality and Individual Differences. 136. l 66-l 72. Fleeson. W. (200 l). Towa「da st「uctu「e-and P「ocess-integratedview of personality: Traits as density distributions of states. Journal of Personality and Social Psychology, BO, l 07 l -7027 Fleeson. W. (2004). Moving personality beyond the person-situation debate: The challenge and the oppo「tunityof within-person va「iability.Cu汀entDirections in Psychological Science. 73, 83-87/ John. 0. P. (202 l). Histo「y,measu「ement.and conceptual elaboration of the big-five trait taxonomy: The paradigm matures. In 0. P. John & R. W. Robins (Eds.). Handbook of personality: Theory and「esea「ch(pp. 35-82). Guilfo「dP「essLewin. K. (l 95 l). Field theory in social science Selected theoretical papers (Edited by Do「winCa「tw「ight.).Ha「pe「&B「othe「s.(レヴィン,K.猪股佐登留(訳)(1956).社会科学における場の理論誠信書房)Mischel. W. (l 968). Personality and assessment. Wiley,(ミッシェル.w.詫磨武俊(監訳)(1992). パーソナリティの理論—状況主義的アプローチ—誠信書房)Chubu Unive「sityGraduate School of Global日umonicsI 5
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