GLOCAL2026 Vol27
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一Profile 国際人間学研究科言語文化専攻博士前期課程1年田中章博(TANAKAAki hi「o)2002年静岡県磐田市に生まれる。'21年に中部大学人文学部日本語日本文化学科に入学し、本田教授のもとで「竹取物語』について研究する。並行して日本語教員養成講座も履修、'24年にタイのサイアム大学で教育実習を行い、日本語教育について深い関心を示す。'25年3月、中学校・高等学校教諭一種免許状(国語)を取得して学部を卒業する。同年、より詳しく日本語教育について研究するべく大学院に進学し、現在は武藤教授のもとで日本語学習者のカタカナ語の習得について研究をする傍ら、名古屋国際日本語学校で非常勤講師を勤めている。日本語学習者におけるカタカナ語の習得調査研究動機日本語学校で講師をしていると、日本語学習者の多くがカタカナ語を苦手としている現状があることが分かった。日本語学習者が使うテキスドでカタカナが使用される場面は外来語や国名に限られ、登場頻度が非常に少ない。試しに担当クラスでカタカナを苦手だと感じるか聞いてみると、およそ9割の学生が苦手だと言った。そんな日本語学習者にとって難しいとされるカタカナ語を習得するのに、学習者の母語が障壁となっているのか調査してみようと考えた。先行研究カタカナ語の習得研究の代表的な先行研究として、岡本(l996)と陣内(2007)が挙げられる。岡本(l996)は、カタカナ語学習の困難さとして、海外学習者は発音や日本語化された表記規則を学ぶ機会が少なく、母語の影詈を受けた発音が化石化し、表記にも影詈する傾向があるとし、中国人初級日本語学習者を対象に初級段階で2回のカタカナ語の書き取りテストを実施して、定着に要する時間を調査した。結果、ひらがな表記語彙に比べて外来語のカタカナ語彙は確実に定着するのに時間を要することを裏付けた。また、アジア圏の学習者の多くは、カタカナ語に接する際に日本語ではなく教育上馴染みのある英語音を元にした学習ストラテジーを達択することが多いことも明らかになった。一方で陣内(2007)は、全国の日本語教育機関の学習者479名(うち中国語母語話者が約50%)にカタカナ語学習の困難さに関するアンケートを実施し、結果として中国語母梧話者が最も困難を感じ、英語母梧話者が最も抵抗が少ないという傾向が確認され、カタカナ語の習得に困難を感じる程度が母語によって異なることを裏付けた。しかし、こんな研究もある。戸川(2018)は母語に漢字を用いる学習者は日本語を学習する際に漢字への依存度が高いが、カタカナ語の習得は漢字の知識を援用できない点で容易ではないとし、台湾人の日本語学習者56名に中国語単語を英語と日本語(カタカナ語)に訳す課穎を実施し実態を調査した。結果、英語ができる学習者ほどカタカナ語ができま英語ができない学習者ほどカタカナ語ができるということが判明した。戸川はこの結果に、台湾では優秀な日本語学習者ほど英語に苦手意識を持ち、その代替として日本語を学習している動機が強いという教育的事情が影響している可能性があると考察している。研究課題これら先行研究の多くは、漢字圏や英語圏での調査が非常に多く、非漢字圏かつ非英語圏におけるカタカナ語習得に関する調査が少ないことが課題として挙げられる。そこで、非漢字圏かつ非英語圏であるタイ人日本語学習者において、第二言語としての英語の語彙知識がカタカナ語の習得に影響を及ぼしているか調査しようと考えた。現段階で、3つの仮説を提示する。1つ目は、カタカナ語の多くが英語に由来することから、非漢字圏かつ非英語圏のタイ人学習者においては、英語の語彙知識が多いほどカタカナ語の正答率が高くなる可能性だ。2つ目は、戸川(2018)の漠字圏学習者と違い、英語ができる人ほどカタカナ語の習得が早い可能性だ。これは岡本(l996)を支持する仮説である。3つ目は、英語の語彙知識を持つ学習者であっても、英語と日本語の音韻的・表記的乖離により、カタカナ語の正確な表記の習得には一定の困難を伴う可能性だ。今後の展望この3つの仮説を検証するべく、教育実習でお世話になったサイアム大学に協力を求め、戸川(2018)が実施した語彙テストを基に調査を行い、結果を分析し、タイ人日本語学習者におけるカタカナ語の習得に英語の語彙知識がどれほどの影響を及ぽしているか考察していきたい。引用文献岡本佐智子(l996)「外来語の習得ストラテジー一中国で学ぶ中国人学習者に見る外国語の中閻言語ー」「東京外国語大学留学生日本語教育センター輪集」23号、pp97-l09 陣内正敬(2007)「日本語学習者のカタカナ語意識とカタカナ語教育」「言語と文化」ll巻、pp47-60 戸川美恵子(2018)「日本語学習者のカタカナ語築の習得に関する考察~台湾人日本語学習者への調査を通して~」「別府大学日本語教育研究」8号、ppl 3-20 6
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