中部大学教育研究25
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ての姿勢の成長へつながったと考える。さらに学生は認知症独居高齢者の暮らしにおいて、楽しみが継続できているかという視点にも着目していた。先行研究では、人生における楽しみのレベルが高いほど認知症のリスクが低下する(田島ら,2023)、また趣味の数が多いと認知症発症リスクを下げる要因となることが報告されている(辻ら,2020)。このことから、日常の暮らし方の中で認知症独居高齢者がどのようなことに楽しみや生きがいを感じているかを把握することは、認知症ケアにおける重要なアセスメント要素となる。特に、独居という外部刺激が少ない環境においては、何を楽しみにして日々を過ごしているのかを理解することは、その人らしさの尊重につながる看護実践の基盤となる。加えて、久保田ら(2017)は、認知症独居高齢者が「自分らしくありたい」という強い意志をもって独居生活を継続していることを報告している。本研究においても、学生は療養者の暮らしの中からその人らしさを捉え、それを支える支援の在り方を模索する姿勢を見せていた。こうした経験を通して、学生は「その人らしさを尊重する」ことの重要性に気づき、看護師としての倫理的態度や支援のあり方について理解を深めていたと考えられる。6.2認知症独居高齢者が今の生活を継続できるための訪問看護師の支援認知症独居高齢者が今の生活を継続できるための訪問看護師の支援については、学生は、看護師の行動を通して適切な認知症症状を把握し、暮らし方や生活に合わせた支援を考えることで、認知症独居高齢者の残存機能を最大限活用しながら、心身の健康と安全を守る基本的な支援の方向性を学んでいた。学生にとって「認知症で独居」という生活は、具体的にイメージしづらいものであったが、実際の訪問を通じて、授業で得た知識とリアルな生活を統合できる学びの機会となっていた。認知症独居高齢者の生活環境や言動を自分の目で確かめることで、事前にもっていたイメージと現実のギャップを埋め、より的確な状態把握につながっていたと考えられる。また、訪問看護師の支援を通して、これまでその人がどのように生活してきたかという背景や価値観を理解しようとする姿勢を身につけていた。療養者の言葉や行動の背後にある思いや生活史に目を向けることで、表面的な症状の理解にとらわれるのではなく、その人らしさを尊重した関わりの重要性を学ぶことができていた。6.3認知症独居高齢者が今の生活を継続できるためのチームでの支援認知症独居高齢者が今の生活を継続できるためのチームでの支援では、実際に、在宅の場において、多職種連携の実際に触れることで、認知症独居高齢者に対するチーム支援の重要性を理解していた。学生は、訪問看護ステーション内で行われている他職種間との情報共有の実際や、同行訪問時に療養者宅で使われている他職種間の連絡ノートなどのツールを通して、認知症独居高齢者の生活を看護師が単独で支援しているのではなく、複数の専門職が協働して支えているという支援体制の実態を学んでいた。また、このカテゴリーで学生は、認知症独居高齢者の生活には、身体的・精神的課題だけでなく、社会的孤立や生活の脆弱性といった複合的な要因が存在しており、それらに対応するためには多職種の協働による支援が不可欠であることを学んでいた。本実習はコロナ禍に実施されたこともあり、多くの高齢者が近隣住民との交流を制限されていた。学生はそのような状況下で、地域とのつながりを持ち続けることの困難さと重要性を認識していた。高杉ら(2020)は、社会参加やソーシャルサポートの有無が認知症の発症リスクと関連していることを報告している。このことからも、地域とのつながりを維持することは、認知症予防および生活の質の維持において極めて重要な視点であるといえる。一方で、多職種支援に関する学生の学びのコード数は少なかった。これは、実習期間が2週間と限られていたこと、コロナ禍の影響により、家族や他職種との直接的な交流の機会が制限されていたことが影響していると考えられる。また、実習施設によって、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所との連携状況が異なり、多職種連携の場面に立ち会える機会に差が生じていたと考えられる。7結論本研究では、在宅看護論臨地実習において認知症独居高齢者を受持った学生の学びとして【認知症独居高齢者の今の暮らし方】、【認知症独居高齢者が今の生活を継続できるための訪問看護師の支援】、【認知症独居高齢者が今の生活を継続できるためのチームでの支援】の3カテゴリーを明らかにした。学生は、認知症独居高齢者の生活に直接触れる中で、「その人らしさ」や「今の生活の継続性」の重要性を理解していた。また、認知症高齢者に対する否定的なイメージは実習を通して肯定的に変化していた。また、訪問看護師の支援を間近で観察することで、認知症独居高齢者の残存機能を活かした支援や、認知症ケアにおける基本的な在宅看護論臨地実習での学生の学び―5―

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