中部大学教育研究2022
12/89
(3)大学教員に対する印象講義に対して、話が面白かった、もっと聞きたいという生徒が多かったことは、大学教員が中学生に対しても魅力ある授業が実施できた指標となる。中大連携活動の講師には、研究以外に社会貢献活動に取り組んでいる大学教員が多く、中高大連携による教育の重要性にも理解の深い研究者の協力を得られている。一方、中学教諭が「中学生教育のプロ」として責任を持って生徒指導をする立場であるので、大学教員の役割は中学教諭のサポートとも考えられる。そのため、大学教員と中学教諭とのコミュニケーションを重視して、中大連携活動の担当テーマについて、企画・準備から生徒指導を含めた実施や学内外との調整に至るまで、中学教諭の全面的な参画を得られている。中大連携活動や大学教員への印象について、生徒から肯定的な回答が得られた陰には、多忙とされる中学校業務に加えて、意欲的に連携活動に協力してくださった中学教諭の役割が大きいことは見逃せない。5STEAM教育5.1Society5.0に向けた人材育成(1)STEAM教育新しい時代(Society5.0)の社会像として、定型型業務や数値的に表現可能な業務がAI技術により代替が可能となり、産業の変化や、働き方の変化が起こるとされる2)。この社会での「人間の強み」として、現実世界を理解し意味づける感性・倫理観、板挟みや想定外と向き合い調整する力、責任を持って遂行する力が挙げられる。中等教育については、リーディングプロジェクトの「文理両方を学ぶ高大接続改革」の中で、高校における文理分断の改善、社会のニーズ及び国際トレンド等を背景に、今後多くの学生が必要とするSTEAMやデザイン思考などの教育が十分に提供できるよう、大学による教育プログラムの見直しを促進するとしている。中大連携活動は、この流れを先取りするプログラム開発と位置付けられる。STEAM教育は、STEM(Science,Technology,EngineeringandMathematics)にA(Art/Arts)が加えられたものである。Aの定義について、総合科学技術・イノベーション会議は、「STEMに加え、問いを立て、デザインする力を軸にした、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理観等を含めた広い範囲として“A”を定義」とし、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に活かしていくための教科等横断的な学習の推進が必要としている3)。一方、現在日本で行われているSTEAM教育の報告を見ると、初等教育においてはものづくりの活動と結びつけた取り組みが中心となり、中等教育においては、理科や数学の学びと結びつけた取り組みが中心となる等偏りがみられるようである9)。(2)新学習指導要領の「総合的な学習の時間」新しい学習指導要領(2017年改訂)では、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)を重視し、特に、総合的な学習の時間は、探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目標にしている。探究的な学びは、全ての教科で取り組むこととされており、総合的な学習の時間ではその集大成となる教科間連携が期待される。多様な課題が生じている今日においては、これまでの文系・理系といった枠にとらわれずに、各教科等の学びを基盤としつつ、様々な情報を活用しながらそれを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結びつけていく資質・能力の育成が求められるとしている。今後、「総合的な学習の大学との連携による中学校でのSTEAM教育の開発―7―図9啓明祭(文化祭)での発表
元のページ
../index.html#12