中部大学教育研究2022
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時間」において教科等横断的な学習や探究的な学習の充実が図られ、これがSTEAM教育の推進にもつながることが期待される。特に、この特徴を踏まえた課題研究の実施は重要である。(3)STEAM教育の実施機会このように、探究的な学びが全ての教科で推進されることは、全ての教科をSTEAM教育の実施機会として捉えることができる。一方、全教科の集大成に位置付けられる「総合的な学習の時間」は、STEAM教育の実施機会としてマッチすると考えられる。具体的には、生徒が「課題研究」を実施するための環境と指導法を開発することが重要となるであろう。次節では、STEAM教育の実施機会として、「総合的な学習の時間」での「課題研究」の実施について検討する。5.2カリキュラム化の可能性(1)課題研究の指導現場課題研究のカリキュラム化について筆者の一人は、高等学校の「総合的な探求の時間」や、文部科学省「スーパーサイエンスハイスクール」での授業開発に携わった経験がある10)。それらの経験の中で、課題研究では、研究テーマを考えさせる指導に悩んでいる教員が少なくないことが明らかになった。その原因として、生徒ごとに多様なテーマを持たせると、個々の指導に手が回らず、グループ活動をさせると意欲的な生徒同士の対立にも対応できなくてはならないというものがあげられる。これを解決するための対策として、教科間連携や地域との共同があり、協力者との調整を負担にしなければ有効な方法となる。今回の中大連携活動が、大学との連携により実施されていることは、地域との協働に取り組む学校の参考となると考えられる11)。今回の中大連携活動では、テーマを担当する大学教員・中学教員の間に「コーディネータ」を置いた。コーディネータは、企画の大枠を調整し、テーマと担当者が具体化したところで、中大連携の「顔見せ」のミーティングを行い、テーマごとの中大間の連絡を共有して、テーマごとに、大学教員と中学教諭の準備調整に問題がないか確認し、きめ細かく相談に乗った。高校等においてこのようなプログラムを普及展開する場合にも、コーディネータの存在は重要になると考えられる。(2)シリーズ活動のユニット化高大連携で大学教員を講師に招く場合、学校への訪問は1回のみの単発講義が多いようである。持続的に活動を行うことは、探究活動と創造活動の往還を繰り返し探究活動の深化と創造活動の拡大につながる12)。しかし、単発講義では時間的制約が多く、講師が生徒と探究的な対話をするなど、課題研究のアドバイスまでは困難である。このため課題研究に関わる連携では、生徒が深く考えられる状況をつくり、探究的な対話を導くために「シリーズ授業」として実施することで効果が見られる。中大連携活動においても、シリーズ授業としての実施効果が見られており、これを普及展開する手法として「ユニット化」を検討している。高大連携での実施例であるが、大学教員が1度しか訪問できない場合にも、4回の授業を用いて「ユニット」として実施した事例がある(表3)。「事前学習」は、訪問講義の前にテーマ関連事項をディスカッションさせるなど、生徒の問題意識を高めて大学教員を迎える役割を果たす。「事後学習」は訪問講義の後に、講義の振り返りや、発展的なディスカッションをさせる班別の活動が考えられる。班ごとにまとめと発表をさせることで、1回の訪問講義を4回程度の授業による「ユニット」として形成できる。上述は、訪問講義のユニット化の例であるが、教科関連系で教諭が外部講師と同様の役割を果たしたり、地域との協働として講師を見つけたりする発展が見られている。(3)年間カリキュラム化学校の探究的学習・課題研究に際するSTEAM教育の適応において、大学の研究者の持つ研究のノウハウを中学・高校の探求的な学習・課題研究の指導法に活用し、カリキュラム化の手法を開発することは将来必要となる学校教育の改善に貢献するので重要である。表4に示すように、課題研究のカリキュラム化では、4回程度のシリーズ授業を「ユニット」として規格化し、ユニットの組み合わせで通年の活動を組み立てる手法が考えらえる。中大連携活動はシリーズ授業のモデルケースとして、ユニット化への発展も考えられる。4回程度の授業として「ユニット」を規格化しておくことで、ユニットの組み合わせによる年間カリキュラム化も可能となる。高校での実施例では、「総合的な中部大学教育研究No.22(2022)―8―表3シリーズ授業(4回)を「ユニット化」する例

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