中部大学教育研究2022
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探求の時間」で課題研究を行ったものだが、年間を6ユニット(1学期に2ユニット、2学期に3ユニット、3学期に1ユニット)で構成した。中大連携活動では、事前学習1回、集中講義3回、発表準備4回、発表会1日、振り返り1回で構成した。科学プレゼンテーション用の書籍13)も教材としての使用が定着している。本研究では、カリキュラム開発と普及展開の視点からも、ユニット化の開発に有用な分析と考察ができたと考えている。「総合的な学習の時間」(3単位)のカリキュラム開発では、1年目に多様な体験を積むことで興味関心を高め、まとめと発表の経験を積み、年度末までに2年生の課題研究テーマを考えて、研究計画を発表した。テーマと内容の指導に苦労していたので、大学・研究機関等の研究者との連携は有用と考えられる14)。5.3大学教育への影響(1)大学でのアクティブラーニング促進大学の役割に、教育・研究・社会貢献があるが、中大連携活動は、社会貢献としてのボランティア活動ではなく、大学教育にも有用な活動と捉えることができる。大学では、「何を教えたかでなく、何をできるようにさせたか」を重視している。中大連携活動では、中学生に教えるだけでなく、体験を通して知識を定着させ、生徒が主体的に啓明祭での出展内容を創作し、来場者との積極的な対話ができるようにした。生徒の状態や変化を中学教諭と共有し、何をできるようにさせたか、が啓明祭の発表で如実に現れる。このプロセスで得られた知見は、大学教育に活用できるものと考えられる。(2)大学でのアクティブラーニング促進研究者は、自らの研究内容を社会にわかりやすく説明することが求められるようになった。競争的資金の申請でも研究アウトリーチの実績を記載するようになった。一般に研究者が一般向けと考えて説明しているのに、内容が難しいと評価される場合がある。一般向けの科学雑誌では、一般向けは高卒・中卒のレベルでなく、中学生向けにわかるように制作しているという。中大連携活動で、中学生向けの講義を実施し、その工夫した内容が生徒アンケートで「理解できた」と評価されていることは、講師を務めた大学教員の研究アウトリーチ能力の高さを示すものであり、その活動はアウトリーチの促進のためにも有用な調査対象にできる。5.4ウイズコロナ・ポストコロナの展開2020年度の新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言下では、中大連携活動にも大きな制約ができた。対面授業をzoomミーティングにしたり、大学生・大学院生のTAを不参加にしたり、体験的な活動計画を大幅に変更したり、啓明祭の来場者となる小学生親子の参加を見送り、在校生同士の発表とするなどの対応が見られた。このことは、全国の高校への訪問講義についても同様の制約があり、多くの高大連携・出前講義が中止になった。一方、Zoomミーティングなどのリモート会議が日常的に利用されるようになり、遠隔での講義や、きめ細かい事前打合せができるようになった。講義後に生徒からの相談を受けることや、発表会での講評にも出張なしでリモート参加できるようになる等、リモート会議の普及は大学教員の負担を大幅に軽減している。一方、実験指導や対面での活動も重要であるので、今後は、リモート講義・実験を効果的に併用したプログラム開発が進展するものと考えている。6結論Society5.0に向けた人材育成で重視されるSTEAM教育開発の観点から、中学で実施された大学教員のシリーズ授業に注目し、生徒アンケートの調査結果をもとに効果を考察した。中大連携活動にはSTEAM教育で重視する特徴が見られ、生徒アンケートの調査結果からも、社会とのつながりや学ぶ価値、意欲や熱意の向上などに効果が見られた。一方、文系・理系の進路選択への効果は小さかったが、このことは文理分断からの脱却の視点からは望ましいともいえる。中大連携活動は、大学教員によるシリーズ講義、体験的な内容とアクティブラーニング、啓明祭での出展内容の創作と発表などの特徴がある。この活動の特徴をもとに、STEAM教育開発の観点から「総合的な学習の時間」での課題研究の指導方法の開発について、大学との連携による中学校でのSTEAM教育の開発―9―表4ユニットを用いた年間カリキュラム(高1)の例※ユニットは4-6回の授業で構成する。ユニットごとに、ワークシートを用いたまとめを行う。

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