中部大学教育研究25
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1はじめに看護基礎教育において、臨地実習は学生が看護の対象と直接関わり、看護職者としての能力を獲得する重要な学修形態である。学生は看護職者としての学修途上にあるため、学生の行為が対象にとって看護になるように導く教員や臨床看護師の存在は重要である。看護基礎教育における「在宅看護論」は、1996年の第3次指定規則改正で新しく位置付けられた科目である。その後、2022年4月1日に第5次カリキュラム改正が行われ、「在宅看護論」は「地域・在宅看護論」と名称を変え、従来の6単位から8単位へと内容も充実することで、人々が暮らしている日常を知り、地域での生活と健康を支える看護師の役割拡大の意図が込められた。いま、時代のニーズを背景に、「暮らしを支える看護師」を育てることが求められ、在宅看護学教育は、ますます重要になってきた。本学における在宅看護論臨地実習の方法は、訪問看護師と共に療養者宅に同行訪問をし、観察を中心に、一部、援助の実施を訪問看護師の監督のもとで実施している。実習期間は2週間であり、実習期間中に療養者宅に同行訪問ができるのは、2023年度の実績では、平均11.4回であり、そのうち受持ち療養者(看護計画を立案、実施、評価まで行う)を訪問できたのは平均3.4回であった。学生は訪問看護に同行する限られた機会で、療養者の暮らしや必要な支援について学び、次に訪問する療養者宅までの移動中の車内で、同行看護師から訪問中に感じた疑問等を解決するための指導を受けている。初学者の学生にとって、慣れない療養者宅での体験を在宅看護の視点で学びに結びつけるのは、同行した訪問看護師の指導によるところが大きい。在宅看護論臨地実習に関する先行研究を概観すると、学生を対象とした研究は、実習後の学生の学びを抽出したもの(大谷ら,2016;三宅ら,2018;大谷ら,2020;竹口ら,2021;達川ら,2021)、訪問看護師を対象とした研究では、実習指導の現状(松下ら,2013;柏木ら,2015)や困難(東海林,2019;青柳,2022),実習指導者のやりがい(松下ら,2022)についての研究があった。しかし、在宅看護論臨地実習における訪問看護同行中の学生の思いについての研究は見当たらなかった。在宅看護論臨地実習では、訪問回数や滞在時間に制限があり決して十分とは言えない訪問看護同行の機会を通して、主な実習の場が療養者宅であること、指導を受ける方法は、訪問看護の体験を共有した同行看護師から限られた時間内で指導を受けること、訪問後に―9―*1生命健康科学部保健看護学科准教授*2生命健康科学部保健看護学科教授*3看護実習センター助教*4看護実習センター助手在宅看護論臨地実習において看護大学生が訪問看護同行中に抱く思い小塩泰代*1・堀井直子*2・大谷かがり*3・下村彩璃菜*4要旨本研究では、在宅看護論臨地実習の同行訪問中に学生が抱く思いを明らかにすることを目的とし、実習を修了し評価公開後1か月以内で、研究参加に同意が得られた学生に対し、フォーカス・グループ・インタビュー(FGI)を実施した。その結果学生は【対象者の情報が不足したまま訪問することへの困惑】【質問や指導を受けるタイミングへの躊躇】【看護師による対象者の解釈に対するズレへの当惑】【看護師が行うケアへの違和感に対する藤】【既習の方法と異なる自宅で行う看護実践の難しさ】【主体的に看護実践へ参加することへの躊躇】【看護ケアの実施制限による学修の不全感】【訪問先でのマナーに関する戸惑い】という8つの困難な思いと、【移動中の車内での情報提供や質問対応に感謝】【学修目標を達成できるような訪問看護師の配慮への感謝】【間近で体験した訪問看護師の看護実践能力への驚き】【学生の看護実践を看護師が認め見守ってくれていることへの安心感】【複数事例や看護師毎の多様な看護実践を学べた充実感】の5つの肯定的な思いが明らかになった。学生の困難な思いは、積極的に質問をして助言を得ることや、看護師に配慮してもらっていることを実感したことで肯定的な感情に変わっていた。キーワード在宅看護論臨地実習、同行訪問、看護学生、思い
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