中部大学教育研究23
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ち、ライフキャリアを想定した新プログラムの「自己開拓」は、開放性を高める教育効果を有していることが示唆される。なお、2022年度の「自己開拓」受講群は統制群と比べ、授業前の時点で外向性・開放性・神経症傾向が高く、協調性・勤勉性が低い特徴がみられた。「自己開拓」の受講者の多くは、授業内で行われるグループワークによってコミュニケーションについて学ぶことを期待している(杉本他,2022)。グループワーク形式の授業を好むであろう外向性や開放性が高い学生が受講しているだけでなく、コミュニケーション能力に自信がなく協調性が低いと感じている学生が、自分の力を伸ばそうと受講している可能性が示唆される。さらに、「自己開拓」の受講生は、授業で自己理解を深めることを期待している学生が非常に多い(杉本他,2022)。多くの大学生が先行きの見えない自身のキャリアに不安を抱えることが明らかにされているが(全国大学生活協同組合連合会,2023)、本授業の受講者は、心配しやすい特徴を有しているからこそ、また、自分に対して厳しく評価をする特徴を有しているからこそ、自分のキャリアから目を背けず、低年次からキャリアに関する授業を積極的に受講していると考えられる。また、従来の「自己開拓」の受講者においては、神経症傾向が比較的高い学生が「自己開拓」を受講することが明らかにされており(佐藤・小塩・ハラデレック・林・間宮,2013;佐藤・小塩・ハラデレック・林・間宮,2014)、2022年度は同様の特徴が確認された。3.2.2.2自尊感情の変化分析の結果、群と時期の交互作用が有意傾向であった。そこで、単純主効果の検定を行ったところ、自尊感情は(Fig.5)、受講群において授業前より後で得点が有意に高く(p<.05)、授業後において受講群が統制群より得点が高かった(p<.05)。このことから、「自己開拓」の受講者は、自尊感情を高め、受講しなかった者よりも高い自尊感情を育むことが示された。これは、従来の「自己開拓」や新プログラムで示されてきた効果と同様であり(杉本他,2022)、2022年度の受講者においても自尊感情を高める効果が示された。3.2.2.3進路選択に対する自己効力の変化分析の結果、群と時期の交互作用が有意であった。そこで、単純主効果の検定を行ったところ、進路選択に対する自己効力は(Fig.6)、受講群においてのみ授業前より後で得点が有意に高く(p<.001)、授業後において受講群が統制群より有意に得点が高かった(p<.05)。このことから、「自己開拓」の受講者は、進路選択に対する自己効力を高め、受講しなかった者よりも高い自己効力を育むことが示された。これは、従来の「自己開拓」や新プログラムで示されてきた効果と同様であり(杉本他,2022)、2022年度の受講者においても自己効力を高める効果が示された。3.2.2.4時間的展望の変化分析の結果、群と時期の交互作用が有意であった。そこで、単純主効果の検定を行ったが、有意な単純主効果は認められなかった。つまり、「自己開拓」の受講によって時間的展望に変化は認められなかった(Fig.7)。そこで、時間的展望の変化をより詳細に明らかにするため、時間的展望の下位尺度ごとに検討したところ、現在の充実感と目標指向性で群と時期の交互作用が有意であった。単純主効果検定を行ったところ、現在の充実感は(Fig.8)、統制群において授業前より後で得点が低い傾向にある一方で(p<.10)、受講群において授業前より後で得点が有意に高く(p<.01)、授業後において統制群より授業前で得点が有意に高かった(p<.05)。目標指向性は(Fig.9)、受講群において授ライフキャリア教育科目「自己開拓」における教育効果の検証―7―3.003.103.203.303.40Fig.5自尊感情の変化2.402.502.602.702.80Fig.6進路選択に対する自己効力の変化

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