中部大学教育研究24
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を通して誠実性を高める効果がみられることが示された。これまで、統制群と比較した場合、自己開拓(8回構成)の授業を通してパーソナリティの変化がみられることはあまりないことを勘案すると(小塩他,2011;小塩他,2012)、自己開拓(15回構成)の授業内容はよりパーソナリティの多様な側面の変化に寄与する可能性がある。また、アイデンティティ形成の時期にある青年期に、「自己開拓」を受講することはパーソナリティに少なからず影響を及ぼすと考えられるが、短期集中型の自己開拓(8回構成)よりも長期分散型の自己開拓(15回構成)はキャリア教育を受ける期間が長い。そうした受講期間の長さがパーソナリティの変化に寄与する結果になったとも考えられる。3.2.2.2自尊感情の変化分析の結果、群と時期の主効果が有意であり、統制群より自己開拓(15回構成)受講群のほうが、また、授業前より授業後の方が、自尊感情得点が高かった(ps<.01)。なお、効果量dDについては、自己開拓(15回構成)受講群ではdD=.27を示し、授業前から授業後にかけて自尊感情の得点が高まる効果が確認された。自己開拓(8回構成)受講群ではdD=.66を示し、授業前から授業後にかけて自尊感情の得点が高まる中程度の効果が確認された。これらのことから、2023年度においては有意な交互作用はみられず、自己開拓(15回構成)の受講の有無にかかわらず、授業を通して自尊感情を高めることが明らかとなった。ただし、効果量を勘案すると統制群では効果がみられないのに対し、自己開拓(15回構成)では一定の効果がみられた。2021年度および2022年度と同様の効果が得られていることを勘案すると(杉本他,2022;2023)、自己開拓(15回構成)は自尊感情を高める教育効果を有しているといえよう。他方、自己開拓(8回構成)においても効果量からは授業を通して自尊感情を高める中程度の効果が確認された。これまでも、本プログラムは一貫して自尊感情を高めることが明らかにされており(小塩他,2011;小塩他,2012;佐藤他,2013;2014)、本研究でも同様の結果が得られたと考えられる。またその効果は、自己開拓(15回構成)よりも高い効果を有していると考えられる。自己開拓(8回構成)は、2コマ続きという授業形態から、自己開拓(15回構成)と比べて、自分自身が取り組んだワークに対する振り返りやグループメンバーとの分かち合いの時間をより多く設けている。その結果、自己開拓(8回構成)の受講者は、自分の考えを客観的に検討したり、グループメンバーからのフィードバックによる承認をより多く経験したりすることになる。そうした経験は、自分自身の価値を高め、自己承認の機会となる。その結果、自己開拓(8回構成)は自尊感情を高める効果を自己開拓(15回構成)よりも高く有していたと考えられる。3.2.2.3進路選択に対する自己効力の変化分析の結果、群と時期の交互作用が有意であった。そこで、単純主効果の検定を行ったところ、進路選択に対する自己効力は、授業前に群間で有意差は見られなかったが、自己開拓(15回構成)受講群および自己開拓(8回構成)受講群において授業前より後で得点が有意に高く(15回構成:p<.001;8回構成:p<.01)、授業後において自己開拓(15回構成)受講群が統制群より有意に得点が高かった(p<.001)。効果量dDについては、自己開拓(15回構成)受講群ではdD=.66を、自己開拓(8回構成)受講群ではdD=.78を示し、自己開拓(15回構成)受講群、自己開拓(8回構成)受講群ともに、授業前から授業後にかけて進路選択に対する自己効力の得点が高まる中程度の効果が確認された。これらのことから、2021年度および2022年度と同様(杉本他,2022;2023)、2023年度も自己開拓(15回構成)の受講によって、有意に進路選択に対する自己効力を向上させることが示された。また、自己開拓(8回構成)においても、これまでと同様(小塩他,2011;小塩他,2012;佐藤他,2013;2014)、有意に進路選択に対する自己効力を向上させることが明らかとなった。また、効果量についても自己開拓(15回構成)、自己開拓(8回構成)ともに受講を通して進路選択に対する自己効力を高める中程度以上の効果がみられた。これらのことから、15回構成であってもライフキャリア教育科目「自己開拓」は従来の「自己開拓」と同等に進路選択に対する自己効力を高める効果を有していると考えられる。3.2.2.4時間的展望の変化分析の結果、群の主効果が有意であったが、多重比較の結果、群間の差は認められなかった。つまり、自己開拓の受講によって全体的な時間的展望に有意な変化は認められなかった。そこで、時間的展望の変化をより詳細に明らかにするため、時間的展望の下位尺度ごとに検討したところ、群と時期の交互作用が目標指向性において有意であり、希望において有意傾向であった。単純主効果検定を行ったところ、目標指向性は授業前で群間に有意差はなかったが、自己開拓(15回構成)受講群および自己開拓(8回構成)受講群において授業前より後で得点が有意に高く(ps<.001)、授業後において統制群より自己開拓(15回構成)受講群および自己開拓(8回構成)ライフキャリア教育科目「自己開拓」の教育効果―7―

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