中部大学教育研究24
17/115
受講群の得点が有意に高かった(15回構成:p<.001;8回構成:p<.05)。希望については、授業前で群間に有意差はなかったが、自己開拓(8回構成)受講群で授業前から授業後にかけて得点が高まる傾向にあり、授業後において統制群より自己開拓(15回構成)受講群および自己開拓(8回構成)受講群の得点が有意に高かった(ps<.01)。なお、効果量dDについては、自己開拓(15回構成)受講群では目標指向性においてdD=.32を示し、授業前から授業後にかけて目標指向性の得点が高まる効果が確認された。自己開拓(8回構成)受講群では目標指向性、希望のみならず、過去受容、さらには全体的な時間的展望においてdD=.25-78を示し、授業前から授業後にかけて時間的展望の得点が高まる小から中程度の効果が確認された。これらのことから、2023年度の自己開拓(15回構成)の受講によって、時間的展望における目標指向性を有意に高めることが明らかとなった。この教育効果は、2021年度および2022年度で同様に確認されており(杉本他,2022;2023)、自己開拓(15回構成)の有する頑健な教育効果であると考えられる。ただし、従来の自己開拓(8回構成)では、時間的展望の目標指向性のみならず、希望も、授業を通して有意に高めていること、さらに、効果量の検討から、現在の充実感以外の側面で、時間的展望を高める効果がみられることが示された。従来の「自己開拓」は一貫して、より広い時間的展望の獲得を促すことが示されてきた(小塩他,2011;小塩他,2012;佐藤他,2013;2014)。2023年度に実施された自己開拓(8回構成)においても同様の効果がみられたことから、自己開拓(8回構成)は時間的展望の獲得を促すと考えられ、その効果は、自己開拓(15回構成)よりも高い効果を有していると考えられる。自己開拓(15回構成)が、教育内容としてライフキャリアの多様性や個人差を中心的に取り上げられているのに対し、自己開拓(8回構成)では、ほぼ毎回の授業で時間軸を中心に据えた教育内容が取り上げられ、過去や未来に対する自己理解を深める授業構成となっている。その結果、自己開拓(8回構成)の受講者において、時間的展望が全体的に拡がる結果が得られ、自己開拓(8回構成)は時間的展望を高める効果を自己開拓(15回構成)よりも高く有する結果となったと考えられる。3.2.2.5キャリア・アダプタビリティの変化分析の結果、キャリア・アダプタビリティの4下位尺度すべてで群と時期の交互作用が有意であった。そこで、単純主効果の検定を行ったところ、キャリア・アダプタビリティのすべての側面で、授業前に群間の有意差はなかったが、自己開拓(15回構成)受講群および自己開拓(8回構成)受講群において授業前より後で得点が高く(自己開拓(15回構成)受講群:関心・コントロール・好奇心・自信:ps<.001,自己開拓(8回構成)受講群:関心:p<.05;コントロール:p<.01;好奇心:p<.10;自信:p<.01)、授業後において統制群より自己開拓(15回構成)受講群のみ得点が高い傾向がみられた(関心・コントロール:ps<.01;好奇心:p<.05;自信:p<.10)。なお、効果量dDについては、自己開拓(15回構成)受講群では関心、コントロール、好奇心、自信においてdD=.48-56を示し、自己開拓(8回構成)受講群では関心、コントロール、好奇心、自信においてdD=.46-79を示した。すなわち、自己開拓(15回構成)、自己開拓(15回構成)ともに、授業前から授業後にかけてキャリア・アダプタビリティの得点が全体的に高まる中程度の効果が確認された。これらのことから、2023年度の自己開拓(15回構成)の受講によって、キャリア・アダプタビリティを全体的に有意に高めることが明らかとなった。この教育効果は、2021年度および2022年度で同様に確認されており(杉本他,2022;2023)、自己開拓(15回構成)の有する頑健な教育効果であると考えられる。また、授業後に統制群との有意な差は確認されなかったが、従来の自己開拓(8回構成)においても、受講によってキャリア・アダプタビリティを全体的に高める傾向が示された。効果量においても、中程度以上の効果を有していることから、自己開拓(8回構成)もキャリア・アダプタビリティを全体的に高める効果を有していると考えられる。ただし、効果量の大きさを勘案すると、自己開拓(15回構成)は、好奇心により大きな効果を、自己開拓(8回構成)は、コントロールや自信により大きな効果を有していると考えられる。自己開拓(8回構成)では、2コマ続きの授業構成であることから、自己開拓(15回構成)と比べてグループメンバーとの交流をより多く体験することとなる。他者を自由にコントロールすることは難しく、グループワークをするうえでセルフ・コントロールの機会をより多く経験するだろう。これまでも自己開拓(8回構成)は改良型セルフ・コントロールや調整型セルフ・コントロールなどセルフ・コントロールを高める効果を有していることが示されていることからも(小塩他,2011;小塩他,2012;佐藤他,2013;2014)、自己開拓(8回構成)はセルフ・コントロールを高めそれが自信につながるより高い効果を有していると考えられる。一方、自己開拓(15回構成)は自己開拓(8回構成)と比べてライフキャリア教育の視点を強調しており、ワーク・ライフ・バラ中部大学教育研究No.24(2024)―8―
元のページ
../index.html#17