中部大学教育研究2022
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分であるとして(ハラデレック他,2011)、ライフキャリアの視点を踏まえた教育内容が採用されている。ただし、昨今のライフキャリア教育では、将来を見通すことが困難で流動的な社会であることを前提として、ワーク・ライフ・バランスを踏まえたライフ・プランニングや多様な働き方・生き方の理解、シティズンシップ教育、金銭・金融教育など、ライフキャリアの視点をより強調したキャリア教育を行うことの重要性が指摘されている。こうした指摘を踏まえ、従来の「自己開拓」の教育内容を流動的な社会を前提としたライフキャリア教育の視点から捉え直し、教育内容を拡充することが強く求められる。1.2ライフキャリア教育「自己開拓」の開発こうした経緯から、ライフキャリア教育科目「自己開拓」の教育プログラムが新たに開発された。これまでの「自己開拓」プログラム、および、Amundon&Poenell(2004)や河﨑(2011)、丸山・河﨑(2016)などのライフキャリア教育プログラムを参照しつつ、ライフキャリア教育科目「自己開拓」として独自の教育内容を設定した(Table1)。なお、本授業が低年次向けのキャリア教育として位置付けられることを勘案すると、学生が授業内容を体系的に理解しやすいフレームワークを設定し、学生に提示することで、学生の授業理解が進み、キャリア発達が促されると考えられる。教育目標および教育内容と照らし合わせた結果、自分自身の特徴を知ること、生活の中で自身が優先することを理解すること、自分なりの人間関係を築くコミュニケーション・スタイルを獲得すること、すなわち、性格、価値観、コミュニケーションを主軸に据え、これらを徐々に深化していくというフレームワークを採用した。また、ライフキャリア教育を行う際には、ワーク・ライフ・バランスや将来に必要な資金など、学生が体験したことのない未来の事象を取りあげることとなる。ただし、学生がそうした事象を自分に引き寄せて考えることは非常に難しい。そのため、こうした事象を取りあげる際には、知識提供にとどめた授業設計がなされる場合も少なくない。本授業では、このような課題を乗り越えるべく、自己の視点を通した自己理解から他者の視点を通した自己理解、さらには他者と比較した自己理解を経て、自身のライフキャリアに位置づける形での統合的な自己理解を促すように授業計画を設計した。このように、本授業では、さまざまなライフキャリア教育の内容を取り上げる際、必ず当事者意識をもって考えられるように授業設計を行った。中部大学教育研究No.22(2022)―14―Table1ライフキャリア教育科目「自己開拓」の授業プログラム
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