中部大学教育研究2022
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巻頭言VUCA(ブーカ)時代における高等教育本誌の礎となっている『教育資料』は中部大学の前身である中部工業大学時代の1979年に創刊されました。2001年に装いも新たに『中部大学教育研究(JournalofChubuUniversityEducation)』として発刊され、第22号を数えることとなりました。今号はSTEAM教育、ライフキャリア教育科目に関する2編の研究論文、語学教育の観点から6編の実践研究・実践報告、1編の海外連携に関する教育スケッチを編纂しました。現代はVUCA(ブーカ)の時代と言われています。ブーカとはVolatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった、現代社会において未来予測が困難な時代を表す造語です。4つの言葉が表す通り、現代はありとあらゆることが複雑に絡み合い、干渉し合い、容易に結論を出すことができない時代に突入しています。新型コロナウイルスの出現は、21世紀における予測困難な出来事の最たるものといえます。全世界の感染者数は2022年11月までに累計6.5億人を超え、600万人以上の人々が命を落としています。しかしながら、このウイルスによる感染症の拡大は社会全体のデジタル化を促進させると同時に、セキュリティリスクへの危機感を高めるという皮肉な結果を招きました。大学教育も大きなパラダイムシフトを迎えることになり、オンラインでの授業など、ニューノーマルな教育が急速に拡大しました。大学を取り巻く環境は、平成3年の大学設置基準の大綱化、平成14年の大学設置認可の準則主義化を経て、令和4年における大学設置基準の一部改正により、大きく変わろうとしています。中央教育審議会大学分科会質保証システム部会における審議のまとめでは、「学修者本位の大学教育の実現」という考えを質保証システムに基づいて機能させること、「社会に開かれた質保証の実現」の観点から情報を公開することという方向性が示されました。いずれもそれぞれの大学が定めている教育理念を踏まえた3つのポリシーを基礎とする「学位プログラムの編成」が求められ、「内部質保証」を通じた教育研究活動の不断の見直しが提言されました。基幹教員制度の導入、単位計算方法の簡素化、教育課程の特例制度など、今回の改定は近年稀に見る大幅な改定であると言っても過言ではありません。予測不可能な時代であるからこそ、大学に求められる社会に対する役割が以前にも増して重要になっています。本学の建学の精神「不言実行、あてになる人間」の育成に根ざした教育こそが、新しい社会の担い手を育むことができると思います。そして、その重責を担い、よりよい教育を行うためにこの『中部大学教育研究』が一助となることを期待しています。2022年12月中部大学学長竹内芳美
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