中部大学教育研究24
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巻頭言学修者本位の教育の実現に向けて世界最古の大学は、イタリアのボローニャ大学だと言われています。近代大学の原点とされ、「母なる大学(AlmaMasterStudiorum)とも呼ばれています。欧州中から学生が集まったボローニャ大学は、厳冬のアルプス山脈を超えるのが大変だったため、夏の時期に始まったという説もあるほど、当時から人々の学問への探究心は計り知れないものでした。日本最古の総合大学は、栃木県足利市にある足利学校とされています。平安時代もしくは鎌倉時代の創設とされ、およそ3,000名を超える学生が集まった時期もあり、フランシスコ・ザビエルによって、欧州にも紹介されました。時を経て、1964年に開学した中部工業大学は、1984年に中部大学へ名称を変更し、2024年に60周年を迎え、「豊かな教養、自立心と公益心、国際的視野、専門的能力と実行力を備えた、信頼される人間を世に送り出す」という基本理念のもと、総合大学へと発展し続けています。その基本理念の具現化に一役買う『中部大学教育研究(JournalofChubuUniversityEducation)』の第24号を発刊いたしました。1979年の『教育資料』創刊から始まり、2001年には現在の名称に変更し、脈々とその意思を受け継いできた本誌の最新号では、ライフキャリア教育科目「自己開拓」の教育効果と看護学生の小児看護実習中の感情にかかる計2編の研究論文、大学共同利用機関との教育研究、英語教育、持続学を題材とした協働型授業など8編の実践研究・実践報告、1編の日本語教員養成講座に関する教育資料を編纂しました。これらの研究論文や報告には、学生教育における取り組みの実例や、学びの成果、さらには、教育の現場での実践例が数多く含まれています。文部科学省が公表した2022年度の大学教育の改革状況に関する調査報告によると、4年間の学生生活を通じ、学生が身につける「学修者本位の教育」を達成するためには、3つのポリシー(アドミッション・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、ディプロマ・ポリシー)に基づき、大学教育全体としてカリキュラム・マネジメントの確立が必要不可欠であるとされています。その3つのポリシーの達成状況を点検・評価している大学は92%まで達しているものの、学修状況の分析や教育改善を支援する体制を構築している大学は66%、カリキュラムの整合性を検証する全学的な委員会を設置している大学は49%に留まっていることなどを踏まえ、大学教育の質の向上のために具体的な取組の更なる進展が求められました。我が国の2023年の出生数は全国で約72万人となり、過去最少を記録し「少子超高齢化社会」が眼前に迫ってきました。2024年度に定員未充足となった私立大学は354校で、全体の59.2%となり、過去最高となりました。18歳人口の減少が大きな要因ではあるものの、地方大学のみならず、大都市圏にある大学ですら、学生募集の厳しさに直面しています。本学が持続的な大学として存在し続けるためにも、学修者本位の教育を決して蔑ろにするわけにはいきません。今日、社会は急速な変化と多様な課題に直面しています。こうした時代において、大学の役割はますます重要となり、教育と研究を通じて社会的課題に挑戦する責務を負っています。本誌は単に実績を示すだけでなく、議論を深めていくための貴重な一助となることでしょう。2024年12月中部大学学長竹内芳美

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