中部大学教育研究2022
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本尺度は30項目で構成されており、自分にどれくらい自信があるかを「全く自信がない(1点)」から「非常に自信がある(4点)」までの4段階で回答を求めた。時間的展望より遠くの将来や過去の事象が現在の行動に影響するという時間的展望の広がりを測定するために、時間的展望尺度(白井,1991)を使用した。本尺度は19項目で構成されており、今の自分にどれくらい当てはまるかを「当てはまらない(1点)」から「当てはまる(5点)」までの5段階で回答を求めた。また、時間的展望の内容を詳しく検討するため、白井(1994)の時間的展望体験尺度も加えて使用した。本尺度は、過去受容・現在の充実感・目標指向性・希望の4つの側面からなる18項目で構成されており、自分自身にどれくらい当てはまるかについて「当てはまらない(1点)」から「当てはまる(5点)」までの5段階で回答を求めた。キャリア・アダプタビリティキャリア・アダプタビリティ(Savickas,1997,2011)とは、「変化できる資質、大きな困難なくして新しいあるいは変化した環境に適応できる資質」であり、関心・コントロール・好奇心・自信の4次元から構成されている。杉本(2014)によるキャリア・アダプタビリティ尺度は15項目で構成されており、キャリアを構築する強みとして現在の自分がどれくらい発達させ、できるようになっているかについて、「全くできない(1点)」から「非常によくできる(5点)」までの5段階で回答を求めた。コミュニケーション・スキル藤本・大坊(2007)で作成されたENDCORE尺度を使用した。6つのメインスキルを測定するものであり、それぞれ「自己統制」「表現力」「解読力」「自己主張」「他者受容」「関係調整」について1項目、計6項目で構成されている。各項目は、「かなり得意」「得意」「やや得意」「ふつう」「やや苦手」「苦手」「かなり苦手」の7段階で回答を求めた。この尺度によって測定された得点が高得点であるほど、コミュニケーション・スキルが高くなるように得点化した。授業における学びへの期待授業を受講する理由について、自由記述による回答を求めた。授業における学びの意味づけ授業を受講し、学んだことはあるか、あるとしたら具体的に何かについて自由記述による回答を求めた。2.3調査手続き・倫理的配慮授業各回の教育効果を測定するために、授業での学びに関する調査内容を含んだ質問紙調査を作成し、毎回の授業で受講群の調査協力者に回答を求めた。具体的には、授業の最後に振り返りの時間を設け、その場で質問紙調査が実施された。さらに、授業全体の教育効果を検証するために調査内容を含んだ質問紙を作成し、「自己開拓」の授業前後、および別の全学共通教育科目の授業前後で、受講群および統制群の調査協力者に回答を求めた。具体的には、初回の授業で事前テストとして調査内容の各尺度および授業における学びへの期待に関する質問紙調査が実施され、最終回の授業で事後テストとして同様の調査内容の各尺度および授業における学びの意味づけに関する質問紙調査が実施された。なお、調査は匿名で行うこと、調査結果は統計的に処理され個人が特定されることはないこと、調査への回答は任意であり、途中で中断することも可能であること、授業評価に影響を及ぼさないことを伝えたうえで、調査協力に同意を求め、同意が得られた学生にのみ調査を行った。本手続きは、中部大学倫理審査委員会の審査を受け承認された(承認番号20210059)。3結果と考察3.1授業各回の教育効果3.1.1授業での学びの尺度構成新たに作成した授業での学び尺度について、因子分析(最尤法・プロマックス回転)を行った結果、固有値の減衰状況と解釈可能性から2因子が抽出された(Table2)。第Ⅰ因子は「自分の人生や将来の生き方にひきつけて考えることができた」「自分の人生や将来の生き方への関心が高まった」など、授業を受講することで、自分自身のキャリア意識の深まりを認識する項目から構成されていたため、「キャリア意識の深まり」と命名した。第Ⅱ因子は、「授業に積極的に参加することができた」「授業で学んだ内容について理解できた」など、授業を積極的に受講し授業内容の理解・関心を深めたと捉えている項目から構成されていたため「学びへのコミットメント」と命名した。想定通り、「学びへのコミットメント」と「キャリア意識の深まり」の下位尺度が得られたため、内容的妥当性を有すると考えられた。そこで、これらの信頼性を確認すべく、第1回から第15回について、各下位尺度の信頼性係数(α係数)を算出したところ、非常に高い値が得られた(学びへのコミットメント:α=.92~.96;キャリア意識の深まり:α=.93~.97)。以上より、授業での学び尺度は一定の妥当性・信頼性を有すると考えられる。中部大学教育研究No.22(2022)―16―
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