中部大学教育研究23
20/137

して積極的な授業参加がなされることで、十分な教育効果が得られているとも考えられる。そもそもキャリアに対して心理的抵抗感が高い学生は、キャリア教育科目を回避するため、検証することは困難であるが、主体性の低い学生やキャリアに対する心理的抵抗感が高い学生においても、「自己開拓」の新プログラムによって本研究と同様の教育効果が得られるかについて、検討の余地があるといえるだろう。4.4今後の課題本研究では、2021年度に新たに開発されたライフキャリア教育科目「自己開拓」の教育効果が、単年度に限定されるものではなく、十分な効果を有していることが示された。また、「自己開拓」の新プログラムが、従来の「自己開拓」と同様の教育効果を有していることも確認されたが、従来の「自己開拓」と比較して同等以上の教育効果を有しているかについては検討の余地がある。教育効果の大きさについても、今後比較検討することが求められる。また、本授業はライフキャリアを強く意識した教育内容となっているが、従来の「自己開拓」との比較を行うべく、従来の教育効果検証で用いられた変数から検証しており、ライフキャリア教育としての効果については十分に検証することができていない。依然として学生が従来の産業構造や単線型キャリアパスに関する思い込みを有しているとするならば、こうした思い込みに気づかせることは、学生の進路意思決定に対する幅を拡げ、今後の柔軟な生き方・働き方に関する資質・能力を育むことにつながるであろう。そのため、新プログラムの「自己開拓」がライフキャリア教育として有用であるかについて、別指標を参照して検討する必要があるだろう。ところで、初等・中等教育段階では、総則にキャリア教育が位置付けられた新しい学習指導要領が、周知・徹底、先行実施を終え、年次進行で実施されている。高等学校においては2022年度より本格実施となり、今後大学には、中等教育段階までにキャリア教育や市民性教育、金融教育を受けた生徒が入学してくることが予想される。そのため、大学においてはそうした中等教育段階までの教育を踏まえたうえで、教育内容をより発展させていく必要があるだろう。「自己開拓」におけるライフキャリア教育においても、学生の理解度を踏まえ、より拡充していくことが求められる。文献Baumgardner,S.R.(1976).Theimpactofcollegeexperiencesonconventionalcareerlogic.JournalofCounselingPsychology,23,40-45.中央教育審議会(2018).2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)文部科学省<https://www.mext.go.jp/content/20200312-mxt_koutou01-100006282_1.pdf>(2023年8月25日閲覧)藤本学・大坊郁夫(2007).コミュニケーション・スキルに関する諸因子の階層構造への統合の試みパーソナリティ研究,15,347-361.濱秋純哉・堀雅博・前田佐恵子・村田啓子(2011).低成長と日本的雇用慣行日本労働研究雑誌,611,26-36.ハラデレック裕子・林芳孝・間宮基文・小塩真司(2011).新たなキャリア教育科目の効果(1)-「自己開拓」の概要と学生の成長-中部大学教育研究,11,43-47.Ladany,N.,Melincoff,D.S.,Constantine,M.G.,&Love,R.(1997).At‐riskurbanhighschoolstudents'commitmenttocareerchoices.JournalofCounseling&Development,76,45-52.Leal-Muniz,V.,&Constantine,M.G.(2005).PredictorsofthecareercommitmentprocessinMexicanAmericancollegestudents.JournalofCareerAssessment,13,204-215.前田信彦(2022).キャリア教育と社会正義-ライフキャリア教育の探求-勁草書房.丸山実子・河﨑智恵(2016).ライフキャリア教育における授業プログラムの枠組構築-日米家庭科教科書分析を手がかりとして-奈良教育大学教職大学院研究紀要「学校教育実践研究」,8,59-66.O'Connor,L.A.M.(2016).TheeffectivenessoftheRisingSTARRsophomoreprogramonsophomoreslump.EducationDoctoral.Paper267.小塩真司・阿部晋吾・カトローニピノ(2012).日本語版TenItemPersonalityInventory(TIPI-J)作成の試みパーソナリティ研究,21,40-52.小塩真司・ハラデレック裕子・林芳孝・間宮基文(2011).新たなキャリア教育科目の効果(2)-「自己開拓」による学生の心理的変化-中部大学教育研究,11,49-54.桜井茂男(2000).ローゼンバーグ自尊感情尺度日本語版の検討筑波大学発達臨床心理学研究,12,65-71.佐藤友美・小塩真司・ハラデレック裕子・林芳孝・間宮基文(2013).キャリア教育科目「自己開拓」の効果-2012年度の授業について-中部大学教育研究,13,43-49.佐藤友美・小塩真司・ハラデレック裕子・林芳孝・ライフキャリア教育科目「自己開拓」における教育効果の検証―11―

元のページ  ../index.html#20

このブックを見る