中部大学教育研究2022
21/89
3.1.2授業での学びの推移授業各回の教育効果を検討すべく、授業での学び尺度のそれぞれの下位尺度得点の加算平均点を算出し、各下位尺度得点とした。授業各回の各下位尺度得点の平均値をFigure1に示す。第1回のオリエンテーションを経て、第2回以降、学びへのコミットメントについては4.00点(4:とてもそう思う)以上と、学生の授業での学びに対するコミットメントが非常に高いと評価されていた。また、同様に第2回以降、キャリア意識の深まりについては、3.50点(3:そう思う、4:とてもそう思う)以上、とりわけ他者を通してキャリアを理解すること、そして基礎的な自己理解を他者や自身のライフキャリアを通して理解することを教育内容とした第10回以降は4.00点(4:とてもそう思う)以上となり、キャリア意識の深まりが非常に強く認識されたことが示された。3.2授業全体の教育効果3.2.1各変数の尺度構成TIPI-J、自尊感情尺度、進路選択に対する自己効力尺度、時間的展望尺度、キャリア・アダプタビリティ尺度の信頼性を確認すべく、先行研究に倣い、TIPI-Jについては下位尺度ごとの項目間相関および事前テストと事後テスト間の相関を、TIPI-J以外の尺度については信頼性係数(α係数)を算出した。TIPI-Jについて、下位尺度ごとの項目間相関は、外向性でr=-.58(事前)とr=-.62(事後)、協調性でr=-.14(事前)とr=-.06(事後)、勤勉性でr=-.36(事前)とr=-.32(事後)、神経症傾向でr=-.19(事前)とr=-.25(事後)、開放性でr=-.29(事前)とr=-.28(事後)であった。また、事前テストと事後テスト間の相関は外向性でr=.82、協調性でr=.55、勤勉性でr=.62、神経症傾向でr=.51、開放性でr=.69であった。先行研究同様、内的整合性は高くならず、再検査信頼性が高かったため、一定の信頼性を有すると考えられる。自尊感情尺度については、α=.82(事前)とα=.85(事後)の信頼性係数が得られた。進路選択に対する自己効力尺度については、α=.90(事前)とα=.91(事後)の信頼性係数が得られた。時間的展望尺度については、α=.85(事前)とα=.87(事後)の信頼性係数が得られた。また、下位尺度ごとに信頼性係数を算出したところ、過去受容でα=.62(事前)とα=.70(事後)、現在の充実感でα=.78(事前)とα=.78(事後)、目標指向性でα=.61(事前)とα=.54(事後)、希望でα=.73(事前)とα=.77(事後)と一定水準の値が得られた。キャリア・アダプタビリティ尺度については、関心でα=.75(事前)とα=.80(事後)、コントロールでα=.65(事前)とα=.78(事後)、好奇心でα=.80(事前)とα=.78(事後)、自信でα=.70(事前)とα=.69(事後)と一定水準の値が得られた。すなわちこれらの尺度についても、十分な信頼性を有することが確認された。3.2.2各変数の授業を通した変化尺度が十分な信頼性を有することが確認されたことから、変数ごとに加算平均点を算出し各尺度得点とした。そのうえで、各尺度得点を従属変数とし、群(受講群・統制群)×調査時期(事前・事後)の2要因混合計画の分散分析を行った。各平均値(標準偏差)とF値および有意水準について、Table3に示した。3.2.2.1パーソナリティの違いと変化分析の結果、外向性は群と時期の交互作用が有意傾向であり、開放性は群と時期の交互作用が有意であった。そこで、単純主効果の検定を行ったところ、外向性は受講群において授業前より後で得点が有意に高かったが(p<.01)、開放性は受講群において授業前より後で得点が有意に高いだけでなく(p<.001)、授業後において受講群が統制群より得点が有意に高かった(p<.05)。また、神経症傾向については時期の主効ライフキャリア教育科目「自己開拓」の開発および教育効果の検証―17―Table2授業での学び尺度の因子分析結果1.001.502.002.503.003.504.004.505.00123456789101112131415Figure1.授業各回の教育効果授業での学び尺度得点
元のページ
../index.html#21