中部大学教育研究25
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術を実施したい思いはあるが、実施する上で困難を感じた思いであった。どちらのカテゴリーからも学生は看護ケアの実施について積極性が伺えた。【主体的に看護実践へ参加することへの躊躇】では、看護技術を実施する意欲はあるものの、自分の能力でその場に適した対応ができるかどうかを考え、結果的にケアには参加しない、という判断をしていたことが分かる。特に「時間内に看護を終わらせなければならないので、学生がどのタイミングで入ってよいか悩んだ」という語りからは、学生は、訪問看護は制度上決められた訪問時間内で活動を終えなければならないことを既習しているため、看護学生としてケアに参加したいという思いはあるものの、終了時間を守り、療養者や看護師に迷惑をかけないことを優先した判断をしていたことが伺える。このような【主体的に看護実践へ参加することへの躊躇】は在宅看護の臨地実習特有の思いであると考える。同時に、時間の制約がある中で実施する訪問看護の特徴を学ぶきっかけになるため、このような思いを顕在化させることができれば学びに繋げられると考える。【看護ケアの実施制限による学修の不全感】では、看護ケアが実施できない要因を科目の方針や訪問看護師の判断の差という自身の努力の範疇外と捉え、不全感として表現していたと考える。「訪問時に同じケアを5回以上見たので、やってみたいなと思った(が、できなかった)」という<自信のあるケアができなかったことに不満を感じた>から見える学生の積極的な姿勢は評価に値する。しかし、看護ケアの実践は単に看護師が実施していた動きと同じ工程の作業を行うのではなく、その場で適切な方法を判断し実施しなければならないこと、看護実践の場に医療者は同行する看護師しかおらず事故への対応がしづらい環境であるという訪問看護の特徴を踏まえ、学びと事故リスクのバランスを検討した教育方針であることや、看護ケアの実施の有無が成績に直接影響をするわけではないことを学生には繰り返し説明していく必要がある。また、実施可能な看護ケアや実施させていただきたい看護ケアについて臨地実習指導者と同行看護師が把握しやすいよう提示していく必要もある。【訪問先でのマナーに関する戸惑い】では、牛久保ら(2012)の在宅看護学実習における学生の体験の中においても、マナーに対する不安やお茶が出されて戸惑ったことが述べられており、「訪問」という学修スタイル特有のものであると言える。本学では、訪問マナーは、療養者や家族を尊重した態度であり良い関係を築くために必要であること(石田,2024)を在宅看護における倫理とともに臨地実習前に開講される授業の中で伝えている。学生は、マナーの重要性を頭で理解しても、それがどのような行動なのかその場で動けない(西村,2015)ため、学生の実習中の体験や、実習中に起こり得る状況を予測し講義をしているが、場面の予測には限界があり、学生にはマナーで困った際には同行している看護師に確認したり真似るように、と説明している。これらのことから、臨地実習指導者には実習連絡会議等で、学生がマナーで戸惑った場面を具体的にお伝えし、世代間ギャップに対する対応を引き続き依頼していく必要がある。6.2学生の肯定的な思いと臨地との実習調整への示唆学生は困難な思いだけでなく肯定的な思いも持っていた。学生は【対象者の情報が不足したまま訪問することへの困惑】や、【質問や指導を受けるタイミングへの躊躇】という情報収集や指導を受けにくいことへの困難な思いを持っていた。しかし、在宅看護の実習では10分程度ではあるが訪問先への移動中の車内で学生は看護師とコミュニケーションをとる時間が持てる。学生は「車の中で、次に行く利用者の情報を教えてくださったのは、訪問中にどんなことを見たらよいか分かるので、ありがたかった」と語っていることからも、この移動時間を同行看護師は学生指導の時間にあててくれていることが伺える。限られた訪問機会の中で学修効果をあげる学修に繋がっていることから【移動中の車内での情報提供や質問対応に感謝】していることが分かる。<車内では個人情報を人目を気にせず看護師に聞きやすい>や<移動時間は看護師に質問できる時間として確保されているので質問しやすい>など車内や移動中という環境は質問しやすく学修を進める上でも効果的であることが示唆された。そのため、今後も移動時間を有効活用した指導をお願いしていきたいと考える。しかし、その一方、看護師と上手く話ができず車中で看護師と気まずい雰囲気になるという困難になる場合もあり(牛久保,2012)、ストレスを感じた場合は距離を取ることが難しいリスクが高い環境になることも踏まえておく必要がある。学生は自宅で展開される看護実践について、悩みや不全感を感じていたが、「『家族と話ができる機会だから、しゃべっておいで』と促してもらいありがたかった」や「ケアが見えやすいところに学生を置いてくれることが多く、対応が嬉しかった」などと語っているように、同行看護師は学生の悩みや不全感を察知しているかのように学生が困難に感じている場面に対しサポートをしていることが伺える。また、学生も看護師が配慮をしてくれていることを理解し【学修目標を達成できるような訪問看護師の配慮への感謝】をしてい在宅看護論臨地実習において看護大学生が訪問看護同行中に抱く思い―15―

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