中部大学教育研究25
23/89
た。このような配慮により学生は慣れない環境で行う実習ではあるが多くの学びを得ることができていると考える。一連のケアの流れを見学できたり、「呼吸リハで歌を歌う時、歌詞を見せてくれ、一緒にやらせてくれた気遣いがすごくうれしかった」というように訪問看護の場に一緒にいさせてもらうことから【間近で体験した訪問看護師の看護実践能力への驚き】という感情に繋がっていたと考える。学生は、未熟ながらも安楽と思えないケア、不適切と感じた発言、不十分な感染対策などについて違和感や疑問を感じていたが、同行訪問中の違和感や疑問について看護師に確認をすることによって【間近で体験した訪問看護師の看護実践能力への驚き】という肯定的な思いになっていたと考える。納得できないままの強引な自己完結的な対処ではなく、看護師に確認することで「そんなところ見てるのか、と驚いた」など思いもよらなかった意図を知り驚きの感情とともに学びにしていた。また、今回のFGIで得られた結果では「認知症の方への訪問で、傾聴法とか回想法とかやったところ、『どこで習ったの?ちゃんとできててえらい』と、ちゃんと見ていて気付いてくれ嬉しかった」という語りにあるように、訪問看護師が学生の看護実践を温かく見守り、学生の知識や技術を認めそれをフィードバックしてくれていたことが伺えた。他にも未熟な学生は自分が同行することが邪魔になっているのではないかと思っていたが「普段、看護師には話さないようなことを看護学生には話してくれるだろうから、コミュニケーション取っておいで、と言われ、学生に期待してくれているみたいで邪魔になっていないと思えた」と学生に対し期待してくれていることを感じ、【学生の看護実践を看護師が認め見守ってくれていることへの安心感】をもって実習をしていたことが明らかになった。学生が臨地実習指導者や同行看護師との関係に安心感をもって実習ができることは効果的な学びにつながることから(山田,2011)、臨地実習指導者や同行看護師からの何気ない一言に学生は安心感を持ちエンパワーされていることを実習連絡会議等の機会に臨地実習指導者に伝えていきたい。今回のFGIから学生の困難と感じた事柄も臨地実習指導者や同行看護師から助言を得たり配慮を実感したことで肯定的な感情に変わっていることが示唆された。6.3本実習の課題本研究では在宅看護論臨地実習中に学生が抱く思いを明らかにした。学生は悩み、藤、戸惑い、感謝、驚き、安心感など様々な思いを持ちながら実習をしていたことが分かった。田村(2014)は、看護実践における状況は看護者と患者(ひと)・環境の中で生じる複雑、不確実、不安定で個別性、独自性があり、価値藤を起こしやすい、と述べ、リフレクションという感情をきっかけに経験を振り返る思考過程は看護実践能力を高めるのに有用であると述べている。訪問看護に同行し療養者と家族の多様な暮らしぶりや自宅で展開される看護実践の体験は学生にとって自分の想定を超え驚いたり、イメージと異なることへの疑問など、多様な感情を抱く機会が多く、学びが深まりやすい状況にあることが示唆された。しかし、学生は1度の同行訪問において複数事例の訪問看護を体験する。そのため受持ち事例以外の複数事例の情報収集や、受持ち事例の看護計画の立案などに時間を要し、各同行訪問から生じた疑問や驚きが感情のままで留まり看護への関心や学びにつながらないことも考えられる。本研究での「聞いた情報だけで想像しながら行って、(居室環境に)最初びっくりして、しゃべることが出来なかった」、「看護師が記録中でも利用者さんは話しつづけていて、記録中の看護師は、ちょっと返事が雑だった。利用者さんは看護師さんの方に向かってしゃべっており、看護師さんに聞きたいことがあるだろうと思い胸が苦しかった」や「不条理(エプロン無いと汚れる)と感じても、これが現状かと思い受け入れた」という感情も、情報や感情の整理ができないと学生独自の解釈による体験に留まってしまうことが考えられる。訪問後の車内で直ぐに同行看護師に質問に答えてもらうことで理解できることも多いが、初学者である学生が場面を振り返り感情を表現しながらリフレクションをするには時間とサポートが必要である。野口ら(2012)はリフレクション促進に向けた指導として、学生が自身の感情に気づき関心の所在を明らかにできるような発問や、毎日1時間程度のカンファレンスでリフレクションをする機会を設けたことによる効果を明らかにし、学生が感情を意味づけられるようなサポートが教員に求められる役割であると述べている。しかし、教員の指導体制として、学生との対話が十分にできる時間を持つことが難しい現状であることから、学生へのオリエンテーションの方法、カンファレンスの方法や実習記録の工夫、臨地実習指導者や同行訪問看護師に委託する内容の検討と調整が今後の本実習の課題であると考える。なお、2024年度からは保健師助産師看護師養成所指定規則の変更により地域・在宅看護論に位置づけ「在宅看護学臨地実習」がスタートしている。学修目標に大きな変更はないが、居住地域のアセスメントや訪問看護ステーションの役割を捉える視点を強化している。学生にとって、居住地域のアセスメントなど在宅看護学臨地実習特有の新しい学修課題に対する戸惑いなど中部大学教育研究No.25(2025)―16―
元のページ
../index.html#23