中部大学教育研究24
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で実習を終了していた。6考察本研究の結果から明らかになった、ポジティブな感情に影響する要因を実習開始前と実習中の時期に着目して考察する。6.1実習開始前の要因本研究では、実習開始前のポジティブな感情は、学生の元来の個性や、実習前の学内実習や授業などを通して育まれる小児看護学実習への期待と実感が影響していることが明らかとなった。学生の自己効力感は、コミュニケーション技術や援助技術をとおして高くなる9)と言われている。臨地実習前の学内実習において、子どもや遊びへの興味を持ってもらうため、子どもについて具体的にイメージできるよう説明することや、実習への意欲を育むため、臨床に近い体験ができるような実習を準備することが重要である。学内実習や授業での体験は、実習に対する内発的動機付けにつながる可能性があるため、学生個々の小児看護学実習への期待、不安を把握することが大切であると考える。6.2実習中の要因学生は実習しやすい病棟や、看護師の尊敬できる価値観にふれ、ポジティブな感情を抱いていた。学生は看護師の語りに対し、実習施設の看護に興味をもち、それぞれの学習進度に合わせた受けとり10)をする。また、学生と同じ方向を注視し、看護観を共鳴させる指導を効果的と感じている11)ため、これらの先行研究と同様に、学生が安心した学びをできる環境を整えることがポジティブな感情に至ったといえる。そのため、小児看護学実習においては病棟環境などのハード面だけではなく、病棟で働く看護師の看護観にふれる機会を設けるなどのソフト面も調整していく必要がある。また、患児との親密性の実感や家族との信頼関係という、患児や家族との良好な関わりをとおしてポジティブな感情が育まれていた。小児看護学実習中の感動体験として「患児との関わり」が最も多い12)とあるが、今回の調査においても患児や家族との日々の関わりは、学生にとって大きな意味をもつことが推察される。指導者や教員は、学生の患児との関わりを深めるために、学生の考えを支持するだけでなく、看護援助や遊びがイメージできるよう具体的な指導やモデリングの役割を果たすこと、子どもの反応を肯定的に捉えられるように助けることが必要である13)。学生の関わる姿を観察し、その関わりが良好になるよう導き、支援することが重要である。実習におけるメンバーは、知識の共有だけでなく、学生にとって患児と関わるきっかけとなる重要な存在であった。そのため、教員には、グループダイナミクスを調整する力が必要であると考える。グループの力を最大限に発揮し、メンバーで意見交換できるよう学生同士をつなげるなど学生間の関係性をサポートすることや、学生に役割を与え、チームで動いていることを意識させることなどによって、学生の持っている力を引き出していく必要性が示唆された。学生は教員による学びの支えを受けながら、小児看護学としての学びを実感していた。特に「良かった点」、「もっと良くするには」という学習者の主体的な学びを支援するプラスデルタ法14)をポジティブな感情に至る要因と認識しており、指導方法も影響要因の一つであることが示唆された。また、学生自身が考えた看護計画の立案・実施の機会は、学びを実感する重要な機会であると考えられるため、看護実践に解釈や理解を意味づける指導が求められる。そのためには、学生が気持ちを表出しやすい雰囲気を作るとともに、学生が考えを言語化することを促し、支持することが重要であると考える。7結論小児看護学実習を終了した学生11名へのインタビューにより、小児看護学実習の中で、学生が認識している実習開始前の感情に影響する要因、および実習終了時のポジティブな感情に至るまでに影響する要因について、以下の点が明らかにされた。実習開始前の要因には、【学生の個性】、【育まれる小児実習への期待と実感】の2カテゴリーおよび9サブカテゴリーが抽出された。実習中の要因には、【実習しやすい病棟】、【看護師の尊敬できる価値観】、【患児との親密性の実感】、【家族との信頼関係】、【良好な実習メンバーとの関わり】、【教員による学びの支え】、【学びの実感】の7カテゴリーおよび26サブカテゴリーが抽出された。実習開始前のポジティブな感情は実習に対する内発的動機付けとなりうるため、学生個々の小児看護学実習への期待、不安を把握することが大切であると示唆された。実習中のポジティブな感情は、患児や家族との良好な関わりをとおして育まれていた。また、指導者や教員においては、学生自身が学びを実感できるような意味づけを行う指導が求められることが再認識された。そのためには、学生が気持ちを表出しやすい雰囲気を作るとともに、学生が考えを言語化することを促し、支持することが重要であると考える。看護学生が小児看護学実習の中でポジティブな感情に至る要因の検討―17―

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