中部大学教育研究23
32/137

1問題と目的2017年に公認心理師法が施行され、2018年には国家資格としての心理支援専門職が誕生した。同年、全国の多くの大学・大学院で公認心理師のためのカリキュラムが導入され、養成教育が開始されたが、当初は、臨床心理士をはじめとして、それまで心理支援の仕事に携わってきた多様な専門家が、現任研修を受けるなどして国家試験を受験した。初年度の資格取得者は、27,876名であった。数年経過した現在は、現任者の受験受け入れは終了し、公認心理師カリキュラムを学んだ者が主たる受験生となっている。2023年3月時点での公認心理師資格取得者は69,875名に及んでいる。その多くを占めているのは、臨床心理士であるが、学校心理士、発達臨床心理士、産業カウンセラー、その他、心理支援を行っていた教員、看護師、社会保健福祉士なども含まれる。公認心理師資格取得のためには、学部・大学院それぞれで演習・実習を含む所定の科目を履修する必要がある。学部卒業後、認定された支援機関で数年間勤務することでも受験資格は得られるが、現在認定されている機関は鑑別所等の国の矯正施設と数カ所の病院等の民間施設に限られる。また様々な支援領域で実践できる専門職となるための基礎を身につけるうえでは大学院での専門教育が必須と言える。中部大学人文学部心理学科では、大学院における養成課程を設置することはできなかったが、学部において公認心理師対応科目を2018年度より開講した。所定の科目をおさめた学生は、他大学の養成大学院に進学して、公認心理師に加えて多くは臨床心理士も合わせて資格取得を目指している。著者は担当授業の中で、心理支援専門職に関連するいくつかの組織のホームページを学生に提示したところ、“初めて知ったこともあり参考になった”、“わかりやすいページで一般向けの活動もある”、“資格の重みを感じた”等、多様な興味深い意見が得られた。感想の中には“(年次)大会って何を競い合うのだろう”等の誤解も含まれていた。現代の若者にとってインターネット利用に対する関心は高く、進学先など進路選択のための情報収集や入学後の学習における文献や資料検索等で欠かせないツールとなっている。活字離れが懸念される一方で、ネットならではの利便性もある。これまで、大学生を対象としたカウンセリングや相談機関についてのイメージ調査を行った研究は多数ある。たとえば、森田(1997)は、大学生約1,000名に学生相談室イメージの自由記述回答を求め、接近・敬遠・消極・保留に4分類し、その後の実際の来談との関連を報告した。また、緒賀(2004)は臨床心理学関連の授業において初期と終期の2回、坂本・千島―23―*1人文学部心理学科特任教授心理支援専門職とその関連組織に対する大学生の意識-学協会等のホームページ閲覧を通して-森田美弥子*1要旨大学生は、心理支援専門職に対してどのような認識をもっているのだろうか?筆者は、2020年および2021年に、大学1年生および3年生を対象として調査を実施した。公認心理師や臨床心理士の職能団体、養成機関の連合組織、関連学会等、8つの心理支援専門職関連組織のホームページの中から1つ以上を閲覧して、短い感想を自由記述することを求めた。2年間で計276名から得られた自由記述回答を内容別に分類したところ、ホームページの外観、組織の活動、心理支援専門職の役割、の3カテゴリに大別された。大学生にとって、各ホームページはわかりやすく、デザインも魅力的であること、資格取得は難しいが、心理支援の職域は多様で現代社会において重要であると認識されたことが示された。キーワード大学生、心理支援専門職、ホームページ

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る