中部大学教育研究24
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する事項として、1)学生(学部生・院生)の教育、2)学術交流及び共同研究、3)教職員の交流、4)施設の共用、5)その他必要な事項を掲げており、幅広い内容となっている。三機関の協力により「AIと生命システム」をテーマとする連携セミナーが開催され、これを通じて三機関が「包括協定」に至った背景要因としては以下の5点が挙げられる(磯谷2022②及び磯谷2023を基に一部修正して1)~5)を作成)。1)異なる研究分野に対する高い関心・需要近年、生命科学とAI・データサイエンスの接近が著しく、三機関の研究者の間に両分野の知見や融合研究への関心があった。また、中部大学は2021年度AI数理データサイエンスセンターを開設するなど、一定規模のAI・データサイエンスの優れた研究者群を擁していた。一方で、基生研は2022年度「AI解析室」を整備するなど、基生研・生理研がライフサイエンス研究におけるAI・データサイエンス活用のための組織や機能を強化しつつあった。2)人材育成面での相補的関係人材育成に関して、大学共同利用機関は大学院生の育成機能は有するが、学部生への教育機会が乏しい。一方で、中部大学は学部教育が中心で学部生が多数所属するとともに小規模大学院を設置しているが、大学院のより多様な教育研究機会の確保への需要がある。即ち、教育や研究者育成において両者の相補的関係が成立しやすい。特に、大学共同利用機関の研究者にとって学部学生への指導経験は自身のキャリアパスを広げる上でプラスになる。3)組織間連携への低い抵抗感大学共同利用機関は、国公私立大学の研究者の共同利用・共同研究を行う機関であり、私立大学にとって水平的な連携協力関係を結びやすい。4)研究者間の親和性中部大学は応用生物学部と生命健康科学部の2つの生命科学分野に関連する学部があり、名古屋大学、京都大学、名古屋市立大学の出身教員も所属しており、前任大学では基生研・生理研と交流があった研究者も一定数いることから、教育も含めた包括連携について研究者間にある程度の関心があった。5)地理的な利便性三機関は同一県内に所在しており、距離が比較的近い(岡崎市所在の二機関から中部大学までの所要時間:公共交通機関を使用し約1時間)ため、対面での交流機会を設けやすい。4連携協力による教育研究活動の進展-互恵的な関係構築へ-連携セミナーの開催と包括協定締結をきっかけとして、三機関の相補的な連携協力により教育研究活動が進展し、互恵的関係が構築されつつある。なお、以下の諸活動を推進するために多額の経費は措置されていない。持ち回りによる連携セミナー開催など連携交流の機会整備の結果として外部資金獲得に繋がる例や人材育成の進展が見られた。4.1共同研究の推進連携セミナー開催を通じて、中部大学工学部教授、基生研准教授が他大学、企業と協力して共同研究を開始するなど、生命システムとAI・データサイエンスの融合分野の研究交流が進み始めた。中部大学の研究者が代表者となって2022年度採択されたJST/CRESTプログラムには基生研の研究者が参画している。また、中部大学のAI分野研究者が生理研からの要請により日本顕微鏡学会で講演するなどの動きも見られた。中部大学はこうした動きを促進するため、包括協定を締結した機関の研究者と中部大学の研究者が共同して探索的な研究を行う場合に研究費を支援する制度を2023年度から整備した。2023年度採択テーマ6件中、基生研または生理研との共同研究は2件である。2021年度からこれまでに中部大学と生理研または基生研の研究者と開始された共同研究は、JST・CREST(平田豊教授2022度採択)、AMED(塚田啓道准教授2024年度採択)を始め7件以上にのぼる。4.2研究者交流の活性化先に述べたように、中部大学が工作機器メーカー6社の技術者を対象としてAI・データサイエンスをテーマに2022年度に行った技術講座(4-7月「CUSynergyProgram-AI基礎と応用-」及び10-翌1月「同アドバンスコース」講師:工学部藤吉弘亘教授・山下隆義教授、AIデータサイエンスセンター平川翼講師)に基生研・生理研研究者各2名及び中部大学の生命科学・工学分野の研究者複数名がオブザーバー参加した。これにより研究者同士の交流が深まった。その後、基生研から技術講座に参加した研究者2名が基生研所内で講師となり「生物学×深層学習スタートアップ講座」を開催し中部大学研究者も参加した。2023年度及び2024年度中部大学「CUSynergyProgram」においてもオブザーバー参加の仕組みは継続し新たな若手研究者等が参加している。基生研所内でのフォローも行われている。本プログラムが異分野連携・交流のプラットフォーム的な機能も果たしている。大学共同利用機関との包括的連携協力による教育研究活動の進展―23―

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