中部大学教育研究24
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また、大学共同利用機関との包括的な連携スキームによって中部大学の研究者がより大学共同利用機関を活用しやすくなり、研究ネットワークが充実する効果が表れ始めている。生命健康科学部の教員が生理研のトレーニングコースに大学院生とともに参加し、研究能力を向上したり、習得した技術を活用し科研費申請・獲得に繋げたりする例が見られる。4.3教育活動の充実教育面の交流では、2023年度に中部大学学部生を対象とする全学共通教育科目「科学技術と社会」に基生研・生理研の研究者が非常勤講師として、大学院生を対象とする「持続社会創成教育プログラム『微生物・植物・動物の理解』」に基生研の研究者が非常勤講師として参画した。授業指導に関して学生からの評価も高い。これは2024年度も継続されている。また、博士人材支援のためのJST「SPRING」事業に2021年に採択された「中部大学SPRING」において「地球規模の社会課題へ創発的分野融合で挑戦し、地域から新産業創出に貢献する博士人材の養成」を目指して、キャリア開発育成コンテンツ、分野融合研究、海外留学、インターンシップ等を推進しているが、その有力な連携先として基生研・生理研が協力している。大学院生への研究指導や英語の大学院講義・ゼミ等における大学共同利用機関(総合研究大学院大学)との連携についても検討されている。4.4他大学を巻き込んだ合同マッチングワークショップの開催基生研が中心となって、生命科学とAI・データサイエンスとの融合領域でのワークショップが構想され、基生研、生理研、中部大学及び東京工業大学が、2023年度の自然科学研究機構OpenMixLab公募研究プログラム「スタートアップ支援」に企画を共同申請し、採択された。2024年2月21-22日に「生命と情報の新たなる融和:超階層生物学とAI・数理」をテーマとしたワークショップが岡崎コンファレンスセンターで開催された(主催基生研、東工大;共催生理研、中部大学)。東京医科歯科大、分子研の研究者も含め74名(うち学生15名)が参加し、中部大学からは学生3名を含む21名が参加した。この機会では中部大学と生理研の研究者の新たな共同研究のきっかけとなった。4.5教育・研究支援機能の充実連携セミナー開催を通じて三機関のURAの連携協力が進み、日常的な情報交換に加え4.4のワークショップ共同申請や運営においてもURAが積極的に貢献した。また、4.3で述べた岡崎の二機関の研究者が非常勤講師として参加したケースでは、中部大学事務局及びURAが学内調整を経て、科目主担当教員と岡崎の二機関の窓口を繋ぐなど組織的かつ円滑な対応が行われた。更に協定に基づいた技術職員の交流や施設設備の共同利用等も検討されている。5考察中部大学は、学部・研究科に加えて、創発学術院(京都大学高等研究院と連携)、中部高等学術研究所(国際GISセンター:「共同利用・共同研究拠点」認定)、先端研究センター(ペプチド研究センター、ミュオン理工学研究センター等)、領域研究センター群(AI数理データサイエンスセンター等)の研究組織を整備し、学校法人中部大学の「学園ビジョン2021-25」の中に「戦略的な研究力の強化」を掲げている。今回の中部大学と基生研、生理研との連携交流に関する包括協定の締結及びそれに至る過程を通じて、研究者同士の創発的なコミュニケーション機会が提供され、共同研究の推進、研究者交流の活性化、大学院・学部教育の充実、教育・研究支援機能の充実が図られ、互恵的関係が築かれつつある。また、中部大学が多額の資金を投下することなく、基生研、生理研の研究者との連携協力による外部資金の獲得や教育研究の成果が見られ、いわゆる「レバレッジ」効果も表れている。そして中部大学にとって、国内外の優れた機関と交流する可能性など更なる「研究力の強化」への道が開かれた。中部大学が実践した「私立大学と大学共同利用機関との包括協定」という新しい試みによって、機関間や研究者間の互恵的関係の下で、研究活動や人材育成が推進され、新たな学術領域の振興と人類社会の発展に貢献することが期待される。謝辞今回の三機関の互恵的関係の構築に、特にご尽力頂いた基礎生物学研究所阿形清和所長生理学研究所鍋倉淳一所長、中部大学前島正義副学長、AI数理データサイエンスセンター津田一郎顧問、応用生物学部大場裕一教授、理工学部平田豊教授、藤吉弘亘教授、創発学術院桑畑裕子准教授、研究支援部小野幸嗣参与、研究支援部関係者の皆様に感謝申し上げます。注1)因みに、2016年「オートファジー」の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典博士は基生研の名誉教授である。2)連携セミナーには分子研の教職員がオブザーバー中部大学教育研究No.24(2024)―24―

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