中部大学教育研究23
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て頑張らなくてはいけないと自覚し、目指してはいないという学生も「身近な存在と感じ」、関心を向けるようになったという感想もあった。資格取得は「簡単ではない」ということも述べられていた。4考察本研究では、心理支援専門職関連組織のホームページを見た大学生276名の感想を分類整理した。ホームページの閲覧は、心理学を学ぶ大学生にとって有益な知識提供かつ関心の増強を図るものとなることが示された。1年生対象の心理学科入門講義「スタートアップ・セミナー」と3年生対象の「公認心理師の職責」において2年間調査を実施したところ、学年による感想内容の違いは見られず、年度の違いが見られた。新型コロナウイルス感染症対策として遠隔授業が実施された2020年度は、1年生の授業における「心理支援専門職の役割」に関する感想が多く、対面授業が可能となった2021年度では「組織の活動」に関する感想が両授業ともに多いという結果だった。授業形態の違いがこの結果にどのように影響したのかは確認できないが、双方向的な授業において、それまで心理支援の仕事については様々な授業で学んでいても、心理支援専門職の「組織」についての予備知識は乏しかったことから新鮮な情報となったことも考えられる。新型コロナウイルス感染症の蔓延している時期にあたり、そのための相談支援等の活動紹介に注目し、すばらしいと述べた感想は多かった。また、各組織による心理支援専門職の研修が行われていることは、将来の進路として心理支援専門職を視野に入れている大学生にとっての安心材料になったようである。これらのことから、大学生たちは自分や周りの人たちに心理支援専門職やその関連組織が何を提供してくれるのかという点を重視していると言える。大学生がホームページ閲覧を通して学んだことは、次のように集約できる。1)心理支援専門職関連組織の存在と、それらの組織が人々の心の健康維持増進を目標として社会への貢献活動をしていること、心理支援専門職に対する資質向上のための活動も熱心に行われていることを知ったこと。2)心理支援専門職の職域の多様性を知り、あらためてその重要性を認識し、関心が高まったこと。関連して、心理支援専門職になることは簡単ではないが、重要な役割を担っていることを再認識できたこと。心理学科の講義や演習において、既存のホームページを教材として活用することの効果も確認できたと考える。引用文献森田美弥子(1997)学生相談室イメージと来談の関係.心理臨床学研究15.406-415緒賀郷志(2004)カウンセリング・イメージに関する研究(1)-学部講義による変化-.岐阜大学教育学部研究報告(人文学部)52.1-4坂本憲治・千島雄太(2018)カウンセリング・イメージの経年変化-教職課程の大学生を対象として-.カウンセリング研究51.27-38中部大学教育研究No.23(2023)―28―カテゴリ記述例「どのホームページも地域と繋がりながら支援を行うことを重要視しているように感じた。」(3年)「助言や援助だけでなく心の健康に関する教育や情報提供を行っている点が、現代社会にとって、とても必要なことだ。」(1年)「あらゆる年代のクライエントのこころの健康を向上させるために必要な存在だと再認識した。」(1年)「先人の功績や、授業をしてくださっている先生方のおかげで成り立っている。心理師への期待に応えられるような支援ができるように勉学に励もうと思う。」(3年)「ほかの職業と比べて、やはりコミュニケーション能力が求められると感じた。」(3年)「なることがゴールではなく、信頼されている分役割をしっかり果たす必要があるなと感じた。」(3年)「公認心理師になりたいと考えているため、試験について知らなかったこともたくさん知ることができてよかった。」(3年)

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