中部大学教育研究23
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3結果分析の結果、28の概念、10のサブカテゴリー、4のカテゴリーに集約された(Table1)。以下【】はカテゴリー、《》はサブカテゴリー、〔〕を概念とする。3.1データから生成された概念およびカテゴリーまず、【受講に至る個人的背景】は、《身近な体験からの心理職への興味》と《様々な受講理由》から構成されていた。これまで身近なところに発達障害を抱える友達がいたり、小中学校で関わったスクールカウンセラーにあこがれ、自分もそうなりたいと思うようになったという《身近な体験からの心理職への興味》の高まりから受講に至ったことが示された。また、〔公認心理師資格を取得するための積極的受講〕をしている語りだけでなく、公認心理師の適性が自分にあるのかどうかを見極めるために〔迷いながらの受講〕をしているという語りも得られ、《様々な受講理由》によって受講していることが明らかになった。次に、【特定の対象者に対して待つイメージ】は、《単科精神病院への異質感と抵抗感》と《子どもへの抵抗感の低さ》で構成されていた。保健医療領域の中でも〔単科精神病院に対する異質感とわからなさ〕が示され、「結構異質な感じ。訳の分からないって感じの抵抗感に近い」という語りが得られた。その一方で、利用者が子どもに限定される教育領域や福祉領域の施設の利用者に対しては「発達障害のお子さんが多分いっぱいいるので、明るい雰囲気なんじゃないか。子ども相手だったら、すごく明るくていいというイメージ」「一緒に遊んだりするのが、ちょっと楽しみだなって・・・」などのポジティブな語りが得られ、〔子どもを支援する実習施設に対する抵抗感の低さ〕や〔実習施設での子どもと遊ぶことへの期待〕として概念化した。【心理職や実習施設に対するアンバランスな理解】は、《心理職の基本的役割に対する理解度の高さ》《連携に対する断片的な理解》《各実習施設に対する具体性に欠ける理解》で構成された。〔心理職の基本的役割に対するイメージ〕〔心理職として活動することの難しさ〕という概念が生成され、《心理職の基本的役割に対する理解度の高さ》が示された。それに対して、多職種連携やチームアプローチに関しては、「心理士だけで考えちゃできない支援とか、その人にとって一番有効な支援を見つけるために、いろんな職種で話し合って。その人を多角的に見て、いい支援を探していくっていう・・・」という内容の語りがあり、〔連携による相補的・総合的支援のメリットの認識〕はある程度なされていたものの、連携についての具体例を問うと「子どもの障害とか問題を全員が共有して話し合いをして、とにかく解決すること」などのような内容の語りしか得られず、〔具体例においては情報共有に限定された連携のイメージ〕しか持てていないことが示された。また、漠然と〔多職種連携を実行することは難しそうというイメージ〕が形成されていた。連携に対しては断片的な理解(《連携に対する断片的な理解》)に留まっていることが明らかになった。各実習施設に対しては、〔医療機関に関する受講生独自の漠然としたイメージ〕〔総合病院に対するポジティブなイメージ〕〔福祉施設に対する受講生独自の漠然としたイメージ〕しか持てておらず、また、各領域で働く心理職についても〔領域による心理職の個別性に対する表層的なイメージ・理解〕に留まっていたり、〔メンタルクリニックでは具体的な援助が実施されているというイメージ〕など実状にはそぐわないイメージを持っていることが示され、《各実習施設に対する具体性に欠ける理解》に留まっていることがうかがわれた。【学びへの期待と不安】は、《現場体験への期待》とともに《実習先での関わりの不安》《実習指導に対する不安》で構成されていた。「(児童自立支援施設では)児童の年齢の幅があると思うのでそこでの対応の違いというのは気になる」「(児童福祉と教育領域の)関連性とか、どこが違うのかということを知りたい」というように〔実習先ごとの自らの関心と学習意欲〕を示す積極的な語りも聞かれた。また、「そこの空気感とか、もちろん仕事の内容とか、患者さん自身のことを全部目で見て学べる、感じ取るっていうのはすごく期待というか、絶対に勉強になるので、そこはきちんと吸収して帰ろうというのはある」という語りに見られるように、〔授業では学べない現場体験への期待〕の大きさも示された。〔実習という経験を通じて専門的な技能を実践的に知る〕〔様々な臨床領域での実習経験を通じて視野の拡大〕〔多職種連携を学ぶことへの期待〕という概念も生成され、実習を通して成長したいという期待や意欲が伝わってくる語りも多く聞かれた。その反面、《実習先での関わりの不安》は高く、〔実習先での子どもとの距離感のわからなさ〕〔実習先の利用者に対して不適切な言動をとってしまうかもしれない不安〕が語られ、直接利用者と関わる際の自信のなさや戸惑いが示された。さらに、異質感や抵抗感をもつ〔単科精神病院の利用者との関わり方を学ぶ必要性の認識〕はしているもののそれを克服できるか、また〔福祉施設における利用者のデリケートさへの配慮〕をしなければならないと思っているもののそうできるかどうかについては不安も感じているようであった。多くの学びを得たいものの〔多忙な実習指導者がどれだけ指導してくれるのかについての不安〕についての語りも聞かれた。公認心理師科目「心理実習」受講生の学びと成長に関する研究―33―

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