中部大学教育研究23
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3.2ストーリーライン以上の分析から得られた概念とカテゴリーから、心理実習の受講に至る経緯から外部施設での実習を前にした時点での実習に関するイメージや気持ちの在り方について、以下のようなストーリーラインとプロセス図(Fig.1)を作成した。心理実習を受講する理由は受講生によって異なり、《身近な体験からの心理職への興味》やその他《様々な受講理由》によって受講しており、【受講に至る個人的背景】をもっている。実習を前にして実習施設の【特定の対象者に対して持つイメージ】は、保健医療領域の中でも《単科精神病院への異質感と抵抗感》を強く有している一方で、利用者が子どもに限定される教育領域や福祉領域の施設の利用者に対しては《子どもへの抵抗感の低さ》があり、ポジティブなイメージを有している。また、これまでの事前学習や公認心理師科目の授業により《心理職の基本的役割に対する理解度の高さ》は認められたが、その一方で多職種連携・チームアプローチや各実習施設に関する知識に関しては、《連携に対する断片的な理解》、《各実習施設に対する具体性に欠ける理解》に留まり、【心理職や実習施設に対するアンバランスな理解】をしている。実習を前にしての気持ちとしては、《現場体験への期待》《実習先での関わりの不安》《実習指導に対する不安》など実習における【学びへの期待と不安】の両面が示された。4考察4.1受講生の個別性心理実習の受講生は、《様々な受講理由》によって受講していることが明らかになった。〔公認心理師資格を取得するための積極的受講〕をしている者から、公認心理師になりたい気持ちはあるものの果たして自分に適性があるのかどうか自信がなくそれを見極めるために受講している者、また公認心理師取得を目指す者の中には今すぐ公認心理師になるわけではないが将来にその可能性を残しておくために受講している者など様々であった。心理職に関心をもつようになったきっかけは、身近にいた発達障害の友達や小中学校時代に出会ったスクールカウンセラーとの出会いというようなきわめて《身近な体験からの心理職への興味》によるものであった。そうした個人的体験こそが、心理臨床に対する原体験となっている可能性が高く、受講生の心理職や心理臨床に対するイメージに大きな影響を与えていることが推測される。受講生は【受講に至る個人的背景】や様々な受講目的をもち、受講意欲や思いも一様でないことを認識して、ひとり一人の受講生に合せた丁寧な指導を行っていく必要がある。4.2誤った思い込みへの気付き多くの受講生が、保健医療領域では《単科精神病院への異質感と抵抗感》といったネガティブなイメージを、それに対して教育領域や福祉領域においては〔子どもを支援する実習施設に対する抵抗感の低さ〕〔実習施設での子どもと遊ぶことへの期待〕といった明るくポジティブなイメージを持っていることが示された。松原(2004)は、実習施設に対する偏った予備知識が偏見に繋がることを指摘しているが、本研究においてもそれまでの公認心理師に関わる授業や事前学習において得た知識が十分とは言えず、個人的に見聞きした情報や一般に流布されているイメージの影響を受け特定の領域の施設や利用者に対して一部誤った思い込み公認心理師科目「心理実習」受講生の学びと成長に関する研究―35―Fig.1「心理実習」受講から学外実習までのプロセス

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