中部大学教育研究2022
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講している国際関係学部の3年生などがおり、こちらも多言語に開かれた雰囲気があった。使用テキストは、両方のクラスとも、会話練習を重視しながら、週一回の第二外国語授業でこなせる範囲の文法事項の習得を目指したものが選ばれている。下の図1は、その一つで、生活に密着した単語の確認、例えば色の名前を言わせたり、フランス語で自己紹介をさせたりするところから始まる。筆者が今学期両授業を担当するにあたっては、中部大の学生が第二外国語を選択する動機、学習に際してのニーズや興味を考えて、1)できるだけフランス語を学んだ経験が楽しい記憶になるような授業にすること、そのために、例えば学部が異なる者同士でペアを組んで会話練習を行うなどの工夫をすること、2)多言語に触れることの重要性や、英語圏ではない文化に触れることの面白さができるだけ伝わる授業にすること、この二点を目指した。そのため、あいさつや自己紹介の仕方を学ぶことを中心に取り上げ、他方文法事項の解説や単語の暗記は必要最低限にするよう心がけた。3フランス人TAによって可能になったこと初回授業(4月半ば)においてルカさんに自己紹介をしてもらったところ、母語のフランス語以外に、地域言語のカタルーニャ語、英語、スペイン語が話せるとのことであった。彼にとってはこの時が学生との初めての顔合わせで、多少緊張しているように見えた。初回は、黒板の字も小さかったが、注意しなくても数回後の授業では大きく読みやすい字で板書してくれるようになった。右上の図2は、フランス映画では何を観たら良いかという質問を学生がした際に、すぐにいくつもの映画タイトルを板書してくれている様子である。ルカさんは常にさまざまな授業アイデアを提案してくれた。特に臨機応変にスマートフォンやインターネット資料を授業中に活用することが上手であり、早くも初回からスマートフォン画面に色を表示するといった方法を用いていた。それにより図1に示すテキストの色の名前の学習が容易となった。そのため、ルカさんとの授業では、終始それらのツールを積極的に用いることにした。(彼によれば、フランスでは、公立高校入学時に全員がノートパソコンを所持し授業に臨むとのことである。購入には補助金が出る。)また、授業中積極的に質問などをしていた学生には、授業後自分から英語で話しかけ雑談していた。個々の学生をよく見て丁寧に対応しており、また大変フレンドリーで親しみやすい人柄であったため、学生にはとても身近に感じられ信頼できるTAだったと思われる。3.2フランスに関するプレゼンテーション学期中パワーポイントを用いながらフランス文化についてのプレゼンテーションをするよう依頼したところ、5、6月末に行ってくれた。発表に際してはルカさんがフランス語で話し、筆者が逐語訳をした。まず5月末に、フランスの学生生活について発表があった。特に学生が聞き入っていたのは日本との違いであった。例えば、フランスには大学入試がないが(バカロレアという全国統一の高校卒業資格試験を通過できれば基本的に全国どこの大学にも入学できる)、入学後の進級の厳しさは有名で、ルカさん自身も失敗体験があるということを話してくれた。最初に入学したのはモンペリエ大学という南仏でも有数の有名大学の理系学部だったが、残念なことに2年次に進級できなかった。進路変更を余儀なくされ、改めてよく自分の適性を考え直し、語学が好きで能力も高いことに気づいて、ペルピニャン大学という実家に近い大学の英文学部に入り直したところ、その後は大変うまくいっているとのことだった。「自分はモンペリエ大学で失敗した後、実はパリのソルボンヌ大の文学部に行こうとしたのですが、こちらはコロナの影響でパリに足を運ぶことが許されず、エントリーできませんでした。中部大学教育研究No.22(2022)―40―図1「実践外国語A」テキスト図2お薦めフランス映画を板書
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