中部大学教育研究2022
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ムリを選ぶのが良い、なぜならよく熟れているからということだった。3)「フランス人が外国に旅行する際にはどこが人気ですか?」EU圏内であれば、自由に往来できるということで、フランス人にとってはEU圏内の旅行が手軽で人気だということであった。そしてペルピニャン在住のルカさんにとっては、フランス・パリよりもスペイン・バルセロナの方が距離的にも心理的にもずっと近く(バルセロナはカタルーニャ州の州都)、例え国内であってもパリにはこれまで2回しか行ったことがないが、国外でもバルセロナには数えきれないほど行っているということだった。ペルピニャンに住んでいて都会で遊ぼうと思うならまずバルセロナに行くとのことであった。これも学生たちにとって国境の意味を問い直すきっかけを与えてくれるエピソードだったのではないか。これらの他にも、「ルカさんの発表を聞いて、フランス人全体の性格は集団主義より個人主義的な考えなのではないかと思いました。日本では集団主義の性格の人が多いので真逆の考え方の国同士だなと思いました」のような感想もあった。4TAがいることで可能となった取り組みルカさんには、学期中、宿題などの提出物や小テストの採点添削を依頼した。彼はフランス流に、テストは20点満点でつけ、また、正解にマークをつけていたので、学生たちは返却された答案の見方に慣れるまで少し時間がかかったようだったが、大きな問題はなかった。おかげで筆者の授業後の負担はかなり軽くなった。そのため、生じた時間で様々な新しい試みができた。例えば、学生に2人1組で会話を作って演じてもらう、という取り組みを行った(2回目の小テストと期末テスト時)。会話の創作時のアドバイス、発音や演技の指導もルカさんと二人で行った。想像以上に、学生らも楽しみながら工夫を凝らしてやってくれたように思う。どのペアも完璧に会話を暗記してきていた。これもルカさんがいてくれたため、二人で手分けをして発音をチェックしたり、些細な質問にも答えたりするなどのきめ細やかな対応・指導ができたからである。ピアレビュー(図4)の試みも初めて可能になった。学生同士が上記の会話演技を採点し合い、それを筆者やルカさんの採点に加えて実際の成績に加えるというものである。採点要素は、「暗記度」「表現力」「発音の正確さ」の三項目で、それぞれ5点満点でつけてもらった。教員だけが採点を行うよりも、相互採点の方が、採点者になっているときには熱心に聞くことになる。また採点される側になっているときにも、仲間に採点されるということで練習時のモティベーションが上がり、適度の緊張感が保たれる。相互採点は総合的に、大変良いように見受けられた。確かに、「自分でも正しく発音できているかどうか自信がないのに、人を採点できない」という意見もあった。そのため、「ネイティブのように発音できているとか、絶対的に正しい発音である、ということではなく、適度なスピードで聞き取りやすかったか否か、言っていることが伝わったか否かで考えてほしい」と説明した。また、普段なかなか板書する余裕のない、最新のフランス語の言い回しや、流行りの単語などもルカさんは適度に板書してくれ、学生には好評だった。映画鑑賞の時間も取ることができた。ルカさんが映画好きな様子だったので相談したところ、いくつか候補を挙げてくれ、最終的に、ディズニー系のアニメーション映画「レミーのおいしいレストラン」(2007年、原題は「ラタトゥイユRatatouille」。南フランスの家庭料理名)に決まった。これをフランス語版日本語字幕で鑑賞した。パリのレストランを舞台にしたコメディである。学生には大好評だった。ルカさんが授業中の教材提示や検索にスマートフォンをツールとしてよく使っていることから、学生にも授業ツールとして大いに使ってもらうことにした。下記の図5は、ルカさんが提供したSNS画面である(ルカさんの飼い犬が迷子になったが、運よく見つかったことを報告する投稿)。ルカさんにならい、自分の飼っているペットの写真をスマートフォン画面に出し、2人1組の会話で用いることにした。それぞれが自分の飼っている動物(飼っていない人は架空、インターネット上の写真で可)をスマートフォンで提示しながら「かわいいね」といった感情表現を入れつつ会話を作るようにした。例えばペットの名前を紹介させた時のことであるが、飼い猫の名前が「ムー」だと言う学生に、ルカさんがその意味を聞いたところ「ムーはムーミンからとった」という説明であった。それに対しルカさんは、ムーミン(Moomine,Moomintroll)について小説として中部大学教育研究No.22(2022)―42―図4ピアレビューのための採点表

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