中部大学教育研究24
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1背景-本学での語学環境の流れ-「今後、エンジニアにこそ、英語でのコミュニケーション力が必要となる」1)という三浦幸平初代学長のビジョンのもと、本学の語学環境整備は始まった。その歴史は、1977年に遡る。初代学長の思いは山田和夫第2代学長へと受け継がれ、1977年から数々の語学の取り組みが研究され実現され始めた。まず、その年、中部工業大学(当時)に外国語研修センターが設立され、LL教室2)2部屋(各54席)が20号館5階に設置された。愛知県下では南山大学、名古屋学院大学に次ぐ取り組みであった。1984年、総合大学中部大学としてのスタートと共に、外国語研修センターは語学センターと名称が変更され、文系学部の語学充実を目標に、LL教室(64席)が20号館4階に増設された。1987年には、LL教室4部屋(各36席)が19号館2階へと移転された。1994年、語学センター3)は東海大学との連携により、国内の他大学に先がけて語学教育へのインターネット活用を開始した。これを受けて1996年には、語学メディア教室(41席)・語学メディアラボ(20席)が20号館4階に設置されたと共に、19号館2階のLL教室4部屋の機器も更新された。インターネットを活用した英語教育としては、全学共通選択科目「情報英語」4)をはじめとしたタスクやプロジェクトベースの教授法が研究・実践され、第3代飯吉厚夫学長も、語学メディア教室での「英語を使う」授業内容に注目されていた。現在では馴染み深くなった自律的学習、学習の個別化が、本学の英語教育ではすでに1990年代末から展開されていたといえる。一般社会のデジタル化に伴い、カセットテープを使用していたLL装置もアナログからデジタル化、あるいはCALL教室5)へと変化した。本学でも2001年度には機器のマイナー更新が行われたが、その更新を除き、語学メディア教室・語学メディアラボとLL教室(19号館2階)は、最後の環境整備から16年が経過していた。機器部品の生産やメーカーのメンテナンス対応等も終了し始めた流れの中、いよいよ教室規模での更新の必要性に迫られていた2012年1月、後藤俊夫副学長(当時)を長として「LL設備更新後の授業利用検討ワーキンググループ(以下LL更新WG)」6)が組織された。語学に関わる教師が、所属学科を超えて議論を展開できる場を設け、語学教室の設備更新と合わせて、全学レベルで語学教育の質的向上について議論することが目的だった。LL更新WGメンバーが、複数の設備・教材会社からデモンストレーションを受けたり、管財―35―英語オンライン教材ATRCALLBRIXの特徴とその効果-10年の活用例をふりかえって-小栗成子*1・アレンデイビッドP.*2要旨本学に英語オンライン教材ATRCALLBRIX(以下BRIX)が導入されて、10年が過ぎた。この間には、新型コロナウイルスの襲来があり、予期せず教育形態も見直しを迫られた。コロナ禍の副産物としては、オンライン会議やオンラインラーニング機会の増加、手軽に学習できるスマホアプリの競争化などが見受けられる。そのような状況の中で、大学が提供するオンライン学習機会は、どのようなものが適切なのであろうか。著者は『中部大学教育研究No.18』(2018)の「ATRCALLBRIXがもたらすもの-英語音声に対する抵抗感の軽減をめざした試み-」において、ロボット理工学科(現在のAIロボティクス学科)でのBRIXを組み込んだブレンディドラーニング実践例(2014年度-2017年度)を報告した。本稿では、改めて2013年度のBRIX導入の経緯からふりかえり、現在までの推移、今後の展望についてまとめておきたい。キーワード外国語としての英語習得、発音習得、教材選定、ブレンディドラーニング、学習教師の役割*1人間力創成教育院語学教育プログラム(英語)教授*2人間力創成教育院語学教育プログラム(英語)講師

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