中部大学教育研究24
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部の協力により教室内のレイアウト案をシミュレーションする簡易モデルルームで配置を確認したりというプロセスを経て、語学環境改善が慎重に検討された。LL更新WGでの議論の成果として、2013年4月、LL教室1部屋(40席+バリアフリー席1席)、多目的演習室2部屋(最大42席)、CALL教室1部屋(46席+バリアフリー席1席)がオープンした。後に必要となればLLやCALLへも改修ができるよう、2部屋が多目的演習室という形でデザインされた。ペアやグループワークを重視した語学実習を実現しやすい場とするため、そこにはフリーレイアウトが可能なテーブル・座席が選ばれた。こうした教室改修と共に導入されたe-Learning教材の1つが、ATRCALLBRIX(以下、BRIX)である。本学の全学的な語学教育にとっては、CALL教室が設置されたことも、英語e-Learning教材が導入されたことも、これが初めてのことであった。2ATRCALLBRIXの導入と活用推移2.1e-Learning教材選定の視点LL更新WGにおいて語学教室ハード面の計画が先行する中、e-Learning教材に特化した議論を深めるため、2012年6月、「語学e-Learning活用プロジェクトチーム(以下活用PT)」7)が組織された。活用PTでは、次のような視点から6種類ほどのe-Learning教材を候補にあげ、国内での導入例の把握やデモンストレーションを通して教材を選定した。①幅広い英語力格差に対する適用性②語彙学習に留まらないトレーニング内容や将来性③教師主導型の授業での活用と学習者のみでも自主学習教材として利用できる併用性④学習履歴の可視化と教師との共有性⑤インターフェースの操作性やサポート体制の充実費用面での妥当性はもちろんのこと、授業のメイン教材・副教材いずれにも活用できるだけでなく、多様なレベルの学習者8)に自主学習教材としても提供することができ、学部生から大学院生・教職員まで、本学構成員全てが利用できること、さらには入学前教育での利用の可能性も含めBRIXが選定された。授業でのメイン教材・副教材としての活用だけでなく、希望者が自由に自習教材としても活用できる点、そしてその希望者には教職員も含まれるといった柔軟性が特に重んじられた。BRIXはWebベースの英語e-Learning教材である。ATR9)は人の音声情報処理の精緻なしくみを明らかにしようと、日本母語話者が英語を学習するときの聞きとりや発音の学習メカニズムを、多角的に研究してきた。言語習得のこうした基礎研究をもとに、音声関連技術と独自の学習メソッドによって、英語学習支援システム「ATRCALL(エィティアールコール)」を開発した。BRIXは、このATRCALLのコンセプトを最大限にとりいれたe-Learningである。BRIXには英語の「音」にフォーカスする段階的な学習をとおして、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を鍛える膨大なコンテンツが備えられている。また、その学習管理システム(LMS)には、英語力分析機能、学習解析機能、問題のアレンジによる新規コースの作成機能なども備わっている。2.2コース選定の推移BRIXのコースには、総合的なBasicSkillTrainingコース(以下ベーシックコース)と資格試験対策コースがある。本学での導入は、次のように推移している。第1フェーズ:2013/06/01-2015/05/31・ベーシックコース[中級C~D、上級A~B、Pre-College1~4]・TOEICテスト学習コース(ETS公式問題)第2フェーズ:2015/06/01-2019/05/31・ベーシックコース[入門A~上級B]・TOEICコース:スコアアップ達成講座2[実力判定テスト、Level1(390点達成)・Level2(460点達成)・Level4(600点達成)]第3フェーズ:2019/06/01-2023/05/31・ベーシックコース[入門A~上級B]・TOEICコース:スコアアップ達成講座2[実力判定テスト、Level1・Level2・Level4]・新英検対策コース:テスト練習・試験対策コースならびに語彙コース[準1級・2級・準2級]第4フェーズ:2023/04/01-2025/03/31・ベーシックコース[入門A~中級C]・TOEIC:テストトレーニング[TOEICL&R実力判定テスト、TOEICL&Rトレーニング中級1~2]・新英検対策コース:テスト練習・試験対策コースならびに語彙コース[準1級・2級・準2級]・TOEFLコース:実践問題演習コース[TOEFLITPTEST実践問題・文法問題項目別コース・文法問題実力養成コース]導入するコースの変更は、本学の学習目的の変化や予算的な問題により生じてきた。第1フェーズは、音声面での抵抗感を軽減することが最重要視された。ベーシックコースを入門から上級まで導入することで、リメディアル教育も含め幅広い英語力層に対応することがめざされた。また、職員にも推進されていたTOEICのスコアアップのニーズに応えるべく、TOEIC試験対策も取り入れて導入が開始された。「中部大学春日中部大学教育研究No.24(2024)―36―

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