中部大学教育研究2022
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とめると以下のようになる。なお、否定的な意見はなかった。1)ネイティブの発音に毎回触れられたことがよかった(同意見13名)2)発音、文法、単語知識などについて質問した際の対応が丁寧で優しく、質問がしやすかった(同意見12名)3)フランス文化、フランス内地域文化を知ることができた(同意見8名)詳しくは、Tora-netPortal→リンク「授業評価・授業改善アンケート」→「魅力ある授業づくりのために」→ログイン(学内者限定)→「鈴木順子2022年春学期」をご覧いただきたい。こうした留学生TAへの学生の満足度の高さが、授業運営全般に対する肯定的評価にもつながったことは明らかである。筆者に余裕が与えられ、新しい試みも行えたため、「実践外国語A」については、「この授業に取り組む教員の熱意ある態度を感じましたか」「授業を理解させるためのいろいろな手段・工夫は適切でしたか」「教員は学生の反応を確かめながら授業を運営していましたか」「この授業は総合的に魅力的な授業でしたか」に対して全員が最高点の5点をつけており、「フランス語入門Ⅱ」については、それぞれ平均獲得ポイントが4.78,4.67,4.73,4.63点となった。(図6は最終授業で撮影したルカさんと学生たちの様子である。)5おわりにネイティブのTAとのペアで行う授業は筆者にとって初めてであったが、これほど学生から好意的な反応が得られるとは思っていなかったし、また筆者にとっても大いに助けられ、かつ学びが多い学期になり嬉しい驚きであった。ネイティブTAと複数で受け持つ授業は学生にも日本人教員にも大変実りの多いものであることがわかった。このように教員に余裕を与え、それによって学生一人一人を大事にできる授業は大変貴重であると思う。最後に、第二外国語教育について、2022年7月2日に中部大学創造的リベラルアーツセンターが行ったシンポジウム『リベラルアーツと自然科学』のパネリストによる対談の中で、次のような発言があったので紹介したい。パネリストの一人である長谷川眞理子氏(総合研究大学院大学学長)が次のように述べている。「語学というのは、言語の体系が違うと人間の自分自身や世界に対する見方や考え方がどれほど違うのかを学ぶものであり、単にフランス語がぺらぺらになるとかいうことではない。(略)広く深い物の考え方ができる人間になると、一市民として、これからの社会において直面する諸問題に対し、何ものにも惑わされることなく自分自身の判断を下すことができるようになる。そういう人間になることが最終目的」であると。それを受けて司会者の石井洋二郎氏(創造的リベラルアーツセンター長)が「他者への想像力が不可欠です。だからこそ『人間知=ヒューマニティーズ(Humanities)』を涵養するリベラルアーツ教育が重要」と述べていた。(詳細は『リベラルアーツと自然科学』水声社、2022年冬刊行予定を参照のこと。)たった半年の第二外国語学習で何が得られるのかと思われる向きもあるかもしれないが、短い期間ではあっても、世界にはこれほど自分とは違うものの見方をしている人がいるということを知る大事な経験を、第二外国語の授業では積むことができる。そしてそれは他者への想像力を持つ人間を育てる貴重な一歩になると思う次第である。今回の留学生TAとの授業は、こうした異なる他者と出会う人間知(ヒューマニティーズ)としての第二外国語授業に多少なりとも近づけたのではないかと感じている。次はいつになるかはわからないが、こうした留学生TAを迎える機会が今後も続くことを心より願いつつ、本学における全学共通教育科目のフランス語授業については、上のような理念のもとで今後も引き続き取り組んでいきたい。最後になったが、中部大学における交換留学生制度を支え、コロナ禍でも力を尽くされている国際関係学部国際学科の先生方、国際センター・国際・地域推進部国際連携課の胡桃澤様、岡島様他の皆様に心から敬意を表したい。ルカさんは中部大学では熱心に日本語の勉強も並行して行っていて、教員免許を取得したら再度日本に来てフランス語を教えることを願うと言っていた。これは彼と日本で出会った人皆の願いでもあるかと思う。中部大学教育研究No.22(2022)―44―図6ルカさんと学生たち

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