中部大学教育研究24
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る。モデル音声で発せられる内容を理解すると同時に、発声・発話上の特徴に気づき、自分も発音をしてみる。満足がいくまで改善していこうとするプロセスをとおして、聴くことにも発話することにも慣れていこうとするアプローチである。「英語を話せるようになりたい」という目標の裏には、「英語を聴けるようにならなければならない」という課題が存在する。豊富な音声インプットはもちろん必要であるが、インプットのプロセスの中でも「発音する」というアウトプット学習を少し加えてみると、英語を聴く力が徐々に変化していくのである。2024年度春学期、英語学習に発音練習を初めて取り入れた学習者が、学期末のふりかえりに次のようなコメントを残していた。「自分の能力にしたいのなら、何ごとも主体的に動かなければならないと感じた。リピートする時、最初は恥ずかしさが勝って大きな声で言えなかったが、それでは時間を無駄にしてしまうので、大きな声ではっきりリピートしていきたい」(高大連携授業受講者)例文リピーティングで注意すべきことが1点ある。リピーティングを、例文暗記だと勘違いすることを防ぐことである。リピーティングの目標は、例文暗記でも、モデル音声の完全コピーでもない。暗記目標にしてしまうと、聴くことに集中する力、情報を脳内で処理する力はかすみ、反射的に英語を発音して終わる、ということに陥りやすい。例文リピーティングの第1の目的は、聴いて文脈をつかみ、使われている語彙・文法に気づくことにある。つまり、語彙や文法の応用に発話力向上の素地養成である発音が加わっているわけである。第2の目的は、聴いた内容を脳内に一旦リテイン(保持)しておく力をつけることである。リテインできる情報量が多くなるほど、リスニング力が向上するばかりか、いずれリーディング力にも影響を与えていくため、このトレーニングは幅広い英語力の向上につながっている。「留学英語(TOEFL)」における事例では、「すべきことは全てしてみたがスコアが上がらない」と学習プラトー期(停滞期)に入ってしまった学習者がかつていた。問題集に取り組むのを一旦保留し、BRIXでの例文リピートを取り入れさせたところ英語力の幅が広がり、結果としてスコアが上昇し始めた。それまでの学習のままでは気づかなかった自分の弱点に、例文リピートをとおして気づくことができたという例であった。「留学英語(TOEFL)」2024年度春学期末に、次のようなコメントが記されていた。「従来の勉強法に加えて、スペリングや発音の学習もあるBRIXで学ぶことが良いと思った」(理系4年受講者)「今までで一番英語を勉強していると感じた。まだ得意とは言えないが、こうして英語を伸ばしていける可能性を感じている」(文系4年受講者)時には苦しみしか感じられない試験対策学習の中にも、学ぶことの楽しさや充実感、力をつけられる可能性を実感した例である。4教材の受容力4.1自習教材としての役割前述のLL更新WGでは「授業での活用のみならず、自主学習者のニーズにも応えられるシステム」に注目した。BRIXでは教師が学習者を登録して「クラス」を構成することができるため、履修登録のリストには拘束されない。そこで扱う教材も教師が選択することができ、学習期間も設定しておくことができる。教師は学習の進捗状況や成績などを把握することができ、それを授業の成績評価に組み込むことが可能である。一方、BRIXが活用されている授業を受講していない場合でも、自主学習者として活用することができる。自主学習者は、いずれのコースのフルコンテンツにもアクセスできるが、だからといって全レッスンを並んでいる順に学習しなくてはならないわけではない。自分のニーズに応じてコース、セクションを選び、自分に適した自習教材を自由に用意し、学習したい順序、濃度で学習を進めていくことが可能である。4.2クラス管理の自由度教材の自由度は、授業で活用する場合にも重要である。図8は教師用LMSの中の「クラス情報設定」メニューである。ここでいう「クラス」とは、BRIXを使用する対象グループのことで、一般にいう授業のことではない。授業と「クラス」は1対1でなくとも良いので、1つの授業においてBRIX「クラス」を複数用意することも自由にできる。教師はまず教師用管理画面にある「メンバー管理」で学習者を登録し「クラス」を構成する。この時、誰を「クラス」に登録するかは教師に委ねられているため、特定の授業の構成メンバーだけでなく、自主学習希望者を束ねて登録するということも可能である。中部大学教育研究No.24(2024)―40―図8教師用設定メニュー
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