中部大学教育研究24
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を変更することはできない。教師はこうして授業や学習目的に適するようにオリジナルのスリムな教材を用意していくことができるが、BRIXの機能はそればかりではない。BRIXでは一人の教師が行ったトリミング後のコースを、他の教師と共有することができる。たとえば代表者が作成した1つのスリムコース共通科目を、同科目を担当する複数の教員間で活用することができる。著者が、2024年春学期に担当した7つの授業実践例では、1学期間で設置した「クラス」数は41に至っていた。すなわち、1つの授業に対してオリジナルスリムコースを6程度ずつ用意し、段階的に公開していたことになる。2019年度からの4年半を見てみると、600あまりの「クラス」が作成されていた。2019年以降はコーストリミング機能を積極的に活用したため「クラス」数が増えている。トリミングの目的と濃度は、多種多様である。著者の場合は、足場かけを目的としたコースを予め作成してあるほか、対面授業における学習やタスクパフォーマンスをもとに、コース作りや公開のタイミング判断をしている。対面授業でのタスクを通して習熟度を観察しながら、強化が必要な点が見つかればそれに合わせてオリジナルコースを作成するという具合である。e-Learning教材は、メイン教材としても、補習的な教材として活用することも、そして統合型授業にも活用することができる。図11は、著者の授業での統合型活用例を示している。AIロボティクス学科1年生「英語スキル」では、BRIXや他のe-Learning教材(NationalGeographicSpark教材、Cengage)などを共存させ、対面授業でのインプット・アウトプットタスクと合わせて1つの授業を構築している。対面授業の内容とBRIXでの自己調整学習が互いに影響をし合っている形であり、発音だけ重点的にしていたり、各教材や学習が点在したりするものではない。これは、スパイラル(螺旋状)のブレンディッドラーニングのコンセプトに基づいている(小栗ほか,2018)。インプットから定着までには「使ってみる」実習・実践のプロセスが不可欠で、さらにその流れは常に循環を続ける必要があるという考えである13)。1つずつの学びに関連性を持たせ、インプット、学習・トレーニング、アウトプットをスパイラルに循環させていき、定着させていこうとすることである。その根底にある目標は、自己調整学習を通した自律的学習者の育成で、授業を受講し終えた後でも、ここでの学習体験を生かして、自分に必要な学習を持続していける力を形成させようとするものである。この自己調整学習の中の大きな存在が、BRIXである。5.2教師用補助ツール図12は、教師用の「フラッシュカード」14)作成機能を示している。これは、選んだコースの中から単語や文を集めフラッシュカードのセットを作成するという機能である。フラッシュカードを表示する際には、文字表示と音声のどちらを先にするかなどが設定できる。対面授業で発音のウォームアップに利用したり、時には小テストに利用したりすることも可能である。5.3学習者のLMS学習を進めていく中では、学習者は時に苦手なことや難題にもちろん直面する。学習者のLMSには、それをサポートする機能がある。1つ目は「MyBRIX」登録機能、2つ目は「ふりかえり」記録の機能である。教師が復習を制限していない限り、BRIXでは学習者はどれだけでも復習をすることができるが、その場合は、全体を最初から最後まで復習することになる。「復習しなければ」と選んだレッスンブロックを「MyBRIX」へ登録しておくと、復習したい語彙や文章に直行することができ、効率的に弱点強化できる。100項目まで登録できる「MyBRIX」項目を、学習者は自己管理し、登録したり削除したりしながら、効率的に復習をすることができる。中部大学教育研究No.24(2024)―42―図11授業におけるBRIX活用例図12補助ツール「フラッシュカード」
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