中部大学教育研究24
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自動評価が含まれるe-Learning教材では、著者は「最初からオール満点を目指さない」ことを推奨している。先に進んでふりかえり、強化が必要なことには時間や日数を置いて戻る方が学習がはかどり、長期メモリへの記憶も期待できるためである。BRIXの学習者ページには、学習結果から学習者の英語力を解析した結果を表す「今の英語力」の表示機能がある(図13)。このようなデータ表示があると、学習者は自分の英語習得の目標も描きやすくなるし、学習を計画する時に参考にしていくこともできる。図14は学習者が実際に記録した「ふりかえり」画面を示している。この機能を利用するためには、教師が「ふりかえり記入」を選択しておく必要がある。またどのタイミングで何を記入するかなどは授業でのルールをあらかじめ指示しておくと良い。記録した「ふりかえり」は学習者が書いたり編集したり削除したりと自己管理するものである。教師側LMSには「ふりかえりの表示」機能があり、記入されたふりかえりを一覧することが容易にできる。こうしたふりかえりは自己調整学習管理の重要な要素で、メタ認知能力を向上させていくのに役立つものである。「課題をやって終わり」ではなく、自分の学習をふりかえり、次の学習へ反映させようとする力が高まることも、学習者が生涯生かせる力になるであろう。もちろんここに記入しようとしない学習者もいる。その場合でも自己の中ではメタ認知が生じているであろうと考えられるし、こうした記入自体を強制してもメタ認知が進まない実例も少なくない。それぞれに適性がある。学習者の「ふりかえり」を読むことは、教師にとっても有益である。学習者の英語力向上とメタ認知能力を把握するのにも役立ち、記入されていることをもとに、個別・全体指導に反映していくきっかけにもできる。6音声面強化の必要性本学への入学者が体験してくる英語教育の中では、英語音声が存在していなかったり、あったとしてもカタカナに変換されて記憶されていることが少なくない。あるいは、音声を聴く経験はあったとしても、自分の口から英語を発したことはない、というケースもいまだに少なくない。2024年度春学期末、英語の音声学習に関する調査15)を行った。(回答数177人)その結果は次のとおりであった。「発音やアクセントの指導を受けたことがない」という学習者は半数を占め、プロソディに関しては8割以上が全く指導を受けたことがないと答えていた。発音のトレーニングを取り入れていくと、「英語ネイティブに近づけたい」「ペラペラになりたい」と考えてしまう学習者が多いことにも教師は気づくことがある。英語の正しい音=英語ネイティブの音、という固定概念がこの誤解を生じさせるのだが、これからの世界で「英語話者」として英語を使っていこうとするのに必要な発音指導は、「アメリカ英語」「イギリス英語」などに偏ったターゲットに近づくことはない。まず「英語ネイティブ」「本物(や生)の英語」とは誰なのか、彼らが想定する英語でのコミュニケーションの相手は誰なのか、ということを教師は考えなければならない。「英語でコミュニケーションしたい」と願う学習者の多くがコミュニケーションする相手は、もはや英語を母語とする人々だけではなく、そこには機械音声すら含まれるのが現状である。どのような英語使用者にも(機械にも)最低限伝わるように発話することを長期的な目標として発音トレーニングを行うことで、これからの日本で、そして世界で通用する英語を培っておくことが求められている。先の調査では「英語の発音・アクセント・プロソディの学習を加えることは、英語を使えるようになる自信につながるか」という質問に対して、171人(96%)が肯定的に回答していた。発音・アクセント・プロソディの学習を総合的な英語力の向上のきっかけに、と教師は願っている。しかし、これをすることで「さらに英語が嫌いになってしまわないか」という心配も、実は教師はしているが、この調査の結果は、今後の指英語オンライン教材ATRCALLBRIXの特徴とその効果―43―図13「今の英語力」を示す画面例図14「ふりかえり」記録の画面例

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