中部大学教育研究24
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で最も関心が湧いたもの」と表現する学生もおり、大学におけるリベラルアーツ教育の重要性を学生自身が指摘している点も印象的だった。一方、課題も残った。最も大きな懸念は、言語と教育に関する「知識」が学生にどれだけ身についたかという点にあった。上述の学生の声にも反映されているように技能や態度の育成という面では授業としてある程度の手応えを得たものの、「自分で『問い』を設定し、自分なりに深掘りをしていくうちに、自分の知識不足を痛感させられた。」という学生のコメントがあり、思考を支える知識の獲得をどのように促すべきかという点がおもな課題として残った。3.2授業2年目(2022年度春学期)表2に授業2年目(2022年度春学期)の授業計画を示す。基本的には1年目の授業展開を踏襲しながらも、言語と教育に関する知識の獲得を促すため、授業計画におもに2点の変更を加えた。1点目は、1,2週目に行った教員からの話題提供である。どちらかというと「演習」という側面が強くなっていた1年目の反省から、授業の序盤において「講義」の要素を取り入れ、学生が言語と教育に関する諸問題を考える下地作りができればと考えた。具体的には、寺井が「なぜ小・中・高の国語の授業で『話す・聞く』教育があまり扱われないか」という問いについて、加藤が「なぜ日本人は『完璧な英語』を目指すのか/日本人は『完璧な英語』を目指すべきか」という問いについてそれぞれ簡単な講義を行い、言語と教育について考えるうえでのポイントを示した。2点目の変更は、言語と教育に関する新書を各自が持ち寄り、グループ内で読書内容を発表するという活動の導入である。そもそも「新書」を知らない、あるいは読んだことがないという学生が大半であったなか、それぞれの関心に沿って1冊の新書を選び、その概要と考えたことを共有する活動を行った。このように教員による簡易講義と学生自身での読書という2つの活動を授業に組み込むことで、思考を支える知識面の強化を目指した。2年目の授業の成果としては、初年度と同様に、問いの探究やその発表・執筆において必要な基礎的な技能の習得を促したという点が挙げられる。ある学生が「卒業論文の事前練習みたいだと思いました」というコメントを残したように、問いの設定から始まり、質問紙や面接、文献による調査、そしてプレゼンテーションの仕方や文章の書き方の習得は、学生生活やその後の生活において汎用性の高い技能であったと言える。また、2年目から新たに導入した新書の読者内容の共有についても、読んだことを伝える、あるいは伝える中部大学教育研究No.24(2024)―50―14/12124/191234/265/345/10155/17265/24375/31186/7296/143106/211116/282127/53137/12147/19157/26表2授業2年目(2022年度春学期)の授業計画

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