中部大学教育研究2022
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1はじめに1.1背景2018年春学期のある日、高校との接続教育に力を注いでおられた山田公夫理事(当時)が語学教育センター(当時)を来訪された。当時副センター長を務めていた筆者は「少しでも英語を聞ける・話せるようにする授業を提供したい」という思いを伺った。2014年度の学科設置から実践してきたロボット理工(以下ER)学科での英語教育プログラムでの様子を踏まえ、それに類似した授業方法を高大連携英語に活かすことはできないかという相談でもあった。1.2提案「少しでも変化を」という授業を目指すのであれば、次の要素が必要であろうと提案をまとめてみた。(a)人数制限(20-30名程度)(b)高校教員との授業時間内、授業前後における連携(c)CALL教室の活用(d)Web学習プラットフォーム(Glexa)やe-Learning教材(ATRCALLBRIX等)を活用したブレンド型授業の実施(e)外部客観テストの導入(f)教員のチーム化90分授業に15週着席しているだけでは、英語力をつけていくことは難しい。また、例えば英検3級から英検準1級を目標とするような英語レベル格差がある場合、1つの教材で一斉指導をしたとしても、何に照準を定めて指導をしてよいのか分からないまま15週が過ぎていくこともある。授業の質を高め、学習者1人ずつと向かい合えるように、というのが(a)の理由である。高校とは異なるタイプのアクティビティを通して動機づけに努めながら、e-Learning教材への橋渡しを対面授業で行い、自分の英語レベルに適した学習を、各自のペースで進めていけるように導こうとする場合には、(a)(b)(c)(d)が必要である。また、それぞれが「学校の成績」ではなく、自分の英語力の現状を知った上で、学習目標を立てていくために、(e)が必要である。1つの授業を1人が永遠に担当することはできない。高大連携授業というプログラムの1つとしての英語授業は、個人のものではないはずである。そのようなプログラムを1人で担当するのは負担でもあるし、担当―61―*1人間力創成教育院語学教育プログラム教授中部大学春日丘高校との高大連携協定にもとづく授業(英語)-2019年度からの試み-小栗成子*1要旨本学では併設校との間で、長年にわたって様々な教育を連携して実施してきている。そのうち春日丘高校との2017年度連携協定にもとづいた授業では、大学での英語科目を先取りして履修することができる実践が開始された。本稿は、筆者が担当を引き継いだ2019年度から2022年度春学期に至るまでの変遷について記録するものである。2019年度に37名を対象に始まった本授業は、2020年度春学期には新型コロナ禍に直面し一旦閉講となった。2020年度秋学期は、タブレット端末活用が高校側に導入されたことを受け、44名の受講者と遠隔授業を実施した。52名が受講した2021年度は、新型コロナ感染拡大予防の観点から一教室の集合人数を半分にできるようにし、対面・オンライン学習のブレンド型授業を実施した。2022年度には62名が対象となったことから教員が2名に増員され、2パターンの授業のブレンドを工夫した授業を行っている。本稿ではこの3年半の授業方法の変遷に焦点を当てながら、どのように授業が実践されてきたかを報告する。キーワード高大接続授業、英語教授法、英語力定着、教材活用、教師の役割
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