中部大学教育研究2022
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の交代によってプログラムは持続性を失うこともある。また、担当者が同じ孤独さや負担を感じる繰り返しになることもあり得る。授業担当者が1人だとしても、教員が数人でチームを作り、進捗状況を話したり、情報・意見交換をしたりしていくことができれば、担当者が孤独に陥ることはなく、客観性を保ちながらプログラムを進めていけるし、1つのプログラムが「使い捨て」になることも、方向性を誤ることもないのではないだろうか、というのが(f)の理由である。本授業の実践が開始されるまでに、(a)-(e)は実現したが、(f)は実現しなかった。1.3授業目標本授業では、ER学科英語プログラムが軸としている次の目標を、高大連携英語授業に前倒して実践することができないかを模索した。①心理的バリアの軽減②未開発能力の育成③学習基盤の形成④自己調整能力の育成⑤異文化受容力・適応力の育成⑥言語観の育成⑦自律的学習者の育成本授業は、ことばとしての英語への関心や多様な人々や異文化への関心を広げることをめざし、同時に高校と大学との橋渡しという役割を担い、大学入学後、そして大学卒業後にも持続できる学習力をつけるためのスタート地点に立つことに重点を置いている。自分の力を形成しようとする学習姿勢、大学やその後の環境で出逢う人々と学び合おうとする力、定期試験や入試を目標にした高校までの学習習慣から一歩踏み出し、自分に必要な学習力を形成・維持していけることを、本授業は長期的な目標としている。1.4授業コンセプト週1回、90分の授業において、単にリスニングやスピーキングをするだけでは、前述の目標を達成することは難しい。図1は、インテイク(定着)はインプット→練習→アウトプットをスパイラル型(循環的)に行うことで叶うというコンセプトを表すものである。インプットから定着までの段階は直線的に達成できるものではなく、インプットしたことは行ったり来たりを何度も繰り返しながらようやく少しずつインテイクされていくという考え方であり、これを2014年度からER学科の英語プログラムのコンセプトとしている。本授業では、図1のコンセプトを高校生用に応用してみることとなった。2授業方法2.1学習環境本授業の拠点は、192D(CALL教室)である。CALLとはComputerAssistedLanguageLearningの略で、コンピュータを介して語学学習を支援するシステムが備わった教室のことである1)。外観はパソコンが並ぶマルチメディア教室のようであるが、CALLの特徴はそれだけではない。語学を支えるCALLシステムの特徴には次のようなものがある。①教卓コンソールから受講者画面・音声をモニターすることができる。これにより、教員は教卓にいながら全体を観察しつつ、ヘッドセット・マイクを介し、インカムで個別指導をすることができる。②受講者同士をペアやグループ(10人まで)にすることができ、その学習の様子もモニターしたり介入したりすることができる。また受講者側からは、そのやりとりを録音し、教員へ提出することもできる。③受講者側からの質問を「Callボタン」で受けることができる。これにより挙手をしづらい受講者でも、周りに気兼ねすることなく質問したりすることができる。「CALLを活用する」ことは、e-Learning教材の利用手順を説明するためだけではない。全員の様子を瞬時に把握するとともに、個々の状態も理解し、指導していけることで、限られた授業時間を充実させるのに役立てられるのがCALL環境である。2.2自主学習環境2019年度のスタート時は、まだ高校でのタブレット端末活用は導入されていなかった。自律的学習者の育成を目標に含めている本授業では、家庭学習は不可欠中部大学教育研究No.22(2022)―62―図1スパイラル型ブレンド教育のコンセプト(Oguriet.al.2018)

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