中部大学教育研究23
65/137

ン~地域に貢献し、地域に支持される高等教育へ~」の趣旨に沿った事例として、大学が地域の関係機関と連携して、地域在住のシニア(50歳以上)と小学生を対象にした2つの運動教室を地域で開催し、これらの運動教室を大学生が指導者として担当していること、および運動教室に参加した大学生が卒業後に地域づくりの担い手として活躍していることを報告する。なお、本稿で紹介する運動教室はCOC継続事業の活動の1つとして実施しているものである。2.地域住民を対象とした運動教室の事例2.1実施組織本運動教室が開始されたのは2018年の5月からである。開催場所は、愛知県春日井市にある高蔵寺ニュータウン藤山台の「グルッポふじとう(高蔵寺まなびと交流センター)」である。中部大学から直線距離で約3㎞の場所に位置する。グルッポふじとうは、2016年に策定された愛知県春日井市の「高蔵寺リ・ニュータウン計画」の一環で整備された第三セクターであり、旧藤山台東小学校施設をリノベーションし2018年の4月に開所している。「まなび」「交流」「居場所」をコンセプトとした多世代交流拠点施設である。本運動教室の開始に先立ち、中部大学生命健康科学部スポーツ保健医療学科の教員らが、春日井市の担当部局、グルッポふじとうの指定管理者である「高蔵寺まちづくり会社」、運営の一部を委託されたNPO法人「まちのエキスパネット」(現在の社会福祉法人まちスウィング)と協議を重ね、グルッポふじとうの開所から1か月後に運動教室を開始し、現在(2023年7月7日)に至るまで継続して開催している。本運動教室は「高蔵寺まちづくり会社」の主催事業に位置付けられている。社会福祉法人まちスウィングとは、教室参加費の徴収などの事務手続きにおいて協働しながら、運動教室を運営している。2.2教室の名称荒木と中村6)が指摘するように、教室の名称は広報手段の第一歩であり、これによって対象者や内容を想起させることになる。本運動教室は、“グルッポふじとう”の開所とほぼ同時期に開催したことから、開催場所を認知させる必要があった。そこで50歳以上の方を対象とする「グルッポシニア健康クラブ」と、小学生を対象とする「グルッポキッズ運動教室」という名称を用いた。2.3運動教室の教育上の目的大学生が運動指導を通じて地域社会に貢献できる人材として成長することが、本運動教室の教育的側面における目的である。特に、「グルッポシニア健康クラブ」(以下、シニア教室)と、「グルッポキッズ運動教室」(以下、キッズ教室)の2つの教室を担当することで、多世代に対応できる能力を身につけることを本運動教室の特色としている。2.4運動教室での指導担当者中部大学生命健康科学部スポーツ保健医療学科に所属する大学生が運動指導を担当した。指導者募集に際しては、複数の大学生が集まる機会に教員から運動教室の概要を伝えて、興味を持った大学生に対して教員が懇談を行った上で参加決定がなされる場合と、運動指導能力が高いと思われる大学生を教員が選定して直接声掛けをし、本人の参加意思がある場合のみに参加の決定がなされる場合があった。参加が強制にならないように十分な配慮を行った。2023年の4月1日現在で運動教室に参加した大学生の合計人数は17名であり、その全員が2年次後半期(2月以降)から3年次前半期(9月以前)の間のどこかで、運動教室に参加し始めた。引退時期は卒業後の準備などを考慮して4年次後半期の1月末頃としたが、この時期よりも長く担当する大学生もいた。引退時期まで参加を継続した大学生は、現在(2023年12月7日)活動中の1名を除いた16名のうち8名である。この8名の運動教室の継続期間は、1年6か月~2年間の範囲である。その他8名の大学生については、「嫌になった」「他の活動に注力したい」等の理由で参加を辞退する場合と、突然参加しなくなるという場合があった。本運動教室には、地域運動教室での指導経験が豊富な社会人1名がサポートに加わった。大学生による運動指導のチェックおよびフィードバックが主たる役割であるが、大学生が不在の場合に運動指導を代替した。2.5運動教室の内容運動教室の実施頻度は週1回(月4回)、年間で48回である。なお、愛知県における新型コロナウイルス感染症蔓延を理由とする緊急事態宣言の発令期間(2020年4月16日~5月14日、2021年1月14日~2月28日、2021年5月12日~6月20日)については、教室開催の中止を余儀なくされた。シニア教室とキッズ教室(図1)は同一日に実施している。各教室の運動時間は1時間である。シニア教室の終了15分後にキッズ教室を開始する。教室の延べ参加人数は、シニア教室が18名、キッズ教室が21名であった。時期によって参加人数の変動はあるが、シニア・キッズ教室ともに約10名であった。どちらの教室も、同じ大学生が運動指導を行っている。当日の具体的な運動メニューは事前に指導担当の大中部大学教育研究No.23(2023)―54―

元のページ  ../index.html#65

このブックを見る